【QUICK Market Eyes 根岸てるみ】2020年の「スマートワーク経営調査」が発表された。有効回答社数は上場・非上場合をわせた710社で、このうちトヨタ自動車など22社が最高評価を獲得した。ただ、新型コロナウイルスの影響が大きく、非財務の分野で高い評価を得た銘柄が買われる動きは限定的だった。
■「スマートワーク経営調査」とは
同調査は日本経済新聞社が毎年実施しており、今年で4回目となる。国内企業に対するアンケートの結果を基に各社を格付け評価するというもの。得点を偏差値化し、その偏差値をレンジで切り分けして「★」の数で階級ごとに分ける。
総合評価で最高評価の5つ星(偏差値70以上)を獲得した企業は下記の22社。なかでもキリンホールディングス(2503)や富士フイルムホールディングス(4901)、コニカミノルタ(4902)、ダイキン工業(6367)、イオン(8267)の5銘柄は毎年5つ星を得ている常連組だ。
一方、新顔としてはトヨタ自動車(7203)、伊藤忠商事(8001)、KDDI(9433)など6銘柄が高い評価を得た。
■コロナが「5つ星企業」の足を引っ張る
5つ星企業のうち、非上場のサントリーホールディングスを除いた21銘柄を合成指数化した「5つ星企業」の過去約1年間の上昇率は0.4%下落と、東証株価指数(TOPIX)の2%上昇や日経平均株価の11%の上昇に見劣りする結果となった。特に3月以降の相場の回復局面で戻りが鈍かった。
コロナ禍でオフィス向けコピー機などの需要減による業績悪化見通しからコニカミノルタ(4902)やリコー(7752)の株価が低迷し、合成指数全体の足を引っ張った。
半面、空気清浄機の需要が好調なダイキンが50%上昇、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の国内販売が好調なソニー(6758)は39%、イオン(8267)が36%上昇して下支えた。
この期間は新型コロナウイルスの動向で株価が左右される展開だった。それでも過去4回の調査で毎年5つ星の「常連」銘柄の上昇率は1%超となるなど、非財務情報が評価されている面はある。
ちなみに、1つ星企業の合成指数の騰落率は7%上昇で日経平均には及ばなかったものの、TOPIXは上回った。新型コロナの感染拡大で恩恵を受けると思惑から買いが膨らんだITサービスのチェンジ(3962)の株価が約8倍と急騰したほか、コロナでテレワークやマスクなどの分野のリリースが増加して業績拡大期待が広がったPR TIMES(3922)株が3倍近く上昇したことが寄与した。
もっとも世界的に脱炭素が課題とななっているほか、米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の当選が確実になったことで化石燃料からクリーンエネルギーへの転換が各国で加速する可能性がある。コロナ禍が終息して経済正常化の動きになれば、働き方改革で生産性向上につなげるスマートワークに再び投資家の目が向くかもしれない。
<金融用語>
スマートワーク経営とは
スマートワーク経営とは、多様で柔軟な働き方の実現による「人材活用力」、新規事業を創出する「イノベーション力」、市場を新たに拡大する「市場開拓力」によって組織のパフォーマンスの最大化を目指す経営戦略のこと。日経グループが定義し、これら3つの観点から上場企業等を総合的に評価するため「日経スマート・ワーク経営調査」を実施。働き方改革を通じて従業員の生産性を高め、企業の競争力強化を支援する。