【QUICK Market Eyes 川口究】日本経済新聞社が2020年の日経「スマートワーク経営調査」の結果を発表した。有効回答社数は上場・非上場を合わせ710社で、22社が最高評価となった。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークの実施率が急速に高まった点が大きな要因。新たな生活様式の下での働き方の環境整備に積極的な企業に対する市場からの評価は高い。働き方を通じて生産性向上につなげるスマートワークは重要な投資テーマになりつつある。
■「人材活用力」に注目
テレワークの整備など人材活用のために環境整備に余念のない企業は市場からの評価が高まっているといえる。20年の「スマートワーク経営調査」で「人材活用力」が昨年から今年にかけて上昇した企業のバスケットは、低下した企業のバスケットをアウトパフォームした。比較期間は19年の「スマートワーク経営調査」発表前日を起点として2020年11月24日まで。今年に入り新たに評価を取得、または評価なしとなった企業を除き、1年間で評価の増減が比較可能な上場530社を対象とした。
同調査は今年で4回目だ。スマートワーク経営調査は「人材活用力」「イノベーション力」「市場開拓力」の3分野で構成される。企業向けアンケート調査や消費者調査、公開データなどから18の評価指標を作成し、総合評価を作成する。得点を偏差値化し、「★」の数で階級評価する。結果はインターネット上でも公開されている。
人材活用力で最高評価を獲得した企業は以下の9社。なかでもITサービス大手のSCSK(9719)やサントリーホールディングスは調査開始以降、毎年最も高い評価を獲得している常連組だ。新たに最高評価を得た企業はいずれも今年の調査で階級を一つ上げた。
■テレワーク導入により利益率に格差?
コロナ禍でテレワークの実施率は一気に高まった。同調査によれば、新型コロナの感染拡大以降に在宅勤務制度を新たに導入・拡大したと回答した企業は72%にのぼった。緊急事態宣言前の2~3月時点で全社員に占める適用対象は平均36%だったが、緊急事態宣言後の4月には62%まで高まった。
野村証券は9月7日付リポートでテレワークの定着が企業利益と雇用に及ぼす影響について考察しており、結論の1つとして「人手不足産業は利益率も低いという傾向が緩やかだが存在し、また、テレワーク 導入により利益率が向上する傾向もあるため、テレワーク導入の可否によって利益率の格差が拡大する可能性」があると指摘していた。
<金融用語>
スマートワーク経営とは
スマートワーク経営とは、多様で柔軟な働き方の実現による「人材活用力」、新規事業を創出する「イノベーション力」、市場を新たに拡大する「市場開拓力」によって組織のパフォーマンスの最大化を目指す経営戦略のこと。日経グループが定義し、これら3つの観点から上場企業等を総合的に評価するため「日経スマート・ワーク経営調査」を実施。働き方改革を通じて従業員の生産性を高め、企業の競争力強化を支援する。