【日経QUICKニュース(NQN) 川上純平】個人マネーの運用先が世界に向かっている。11月は日本株の急伸を受け日本株投信(上場投資信託=ETFを除く)の解約が相次ぎ、資金流出額は4000億円超と2016年12月以来3年11カ月ぶりの大きさとなった。資金は世界株で運用する投信にシフトしており、個人投資家の海外志向が鮮明だ。一部のマネーは中国株の投信にも向かっている。
■海外の成長企業に個人の目
日興リサーチセンターによれば、11月は日本株投信から4230億円の資金が流出した。11月の日経平均株価は3456円(15%)高と、月間の上げ幅としてはバブル崩壊後に反発した1990年10月以来、30年1カ月ぶりという記録的な大きさとなった。株高が進むなか、個人は利益の確保を急いだ。
ところが、海外株投信に目を転じると景色は大きく異なる。先進国株の値動きを示すMSCIワールドの11月の上昇率は13%と日本株に近いが、世界株投信には約2000億円の資金が流入した。
個人の資産運用に詳しいファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「日本株はバブル崩壊後の長期低迷のイメージが根強く、上昇局面でも先高観が盛り上がらない」と指摘する。「米国のGAFAM(グーグル親会社のアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)を中心に海外の成長企業に個人の目が向いており、日本株投信には資金が流入しにくくなっている」と話す。
11月の売れ筋上位には、高い成長が期待できる企業に選別投資する「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」(アセットマネジメントOne)や、社会のデジタル化進展につながる事業を手掛ける企業に投資する「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」(日興アセットマネジメント)などが並んだ。流出額上位には日経平均連動型の「日経225ノーロードオープン」(アセットマネジメントOne)や、日本株が中心の「ひふみプラス」(レオス・キャピタルワークス)などが顔を出した。
■中国株投信への資金流入が目立つ
海外株投信の中でも資金流入額の伸びが目立ったのが中国株で運用する投信だ。中国株投信への資金流入額は11月に200億円を超えて2018年6月以来の大きさとなり、20年10月との比較では4倍弱となった。中国は新型コロナウイルスの感染をいち早く抑え、経済は日米欧に比べ安定的に改善している。日本の個人の間でも有力な投資先として意識され始めているようだ。
日本の個人投資家は自国偏重の資産配分をする「ホームカントリーバイアス」が強いとされてきた。最近ではむしろ「保有投信の国際化が進んでいる」(国内シンクタンクのアナリスト)といえる。海外企業の高い成長力を取り込もうとする投資行動は今後も継続しそうだ。