【日経QUICKニュース(NQN) 大沢一将】2日の東京株式市場で、携帯電話株がさえない。KDDI(9433)が反落し、ソフトバンク(9434)と楽天(4755)は下げる場面があった。1日の日本経済新聞朝刊が「NTTドコモ(9437)が携帯電話の料金を引き下げる方向で最終調整に入った」と報じ、携帯料金の引き下げ競争が激しくなるとの警戒が重荷となっている。ドコモ値下げ報道を受けたアナリストの見方をまとめた。
■SBI証券の森行真司氏:「値下げは一時的に減益要因。中長期的な成長続く」
報道どおりならば、主力ブランドと廉価なセカンドブランドを分けるやり方は競合他社でも成果を上げており理解できる。値下げで一時的にはNTTドコモは減益となりそうだが、次世代通信規格「5G」の普及に伴い年々データ通信量は増加していく見込みで、中長期的には成長基調は続く。
ソフトバンクやKDDIの株価は携帯料金の値下げに関する報道が出る前の8月の高値からそれぞれ約16%、約12%安く、ある程度の値下げを織り込んだ水準だ。NTT側の正式発表や他社の値下げ幅などが明らかになるまでは不透明から上値が重いだろうが、その後は「5G」でのデータ通信量増加による成長期待が優勢となりそうだ。
NTTドコモの純利益は20年3月期も、21年3月期の会社予想も6000億円前後だ。仮に、値下げで約33%減の4000億円となっても、先のTOB(株式公開買い付け)によりNTTの持ち分は66%から100%に増えるため、NTTの業績に与える影響は変わらない。値下げ幅がこうした論理で決まるとすれば、この場合、NTTドコモのデータ売り上げは約17%減少する。ソフトバンクやKDDIに置き換えれば、営業利益で約2割の減益となる計算だ。
■UBS証券の高橋圭氏(1日付のリポート):「20ギガで3000円前後は安い印象 約2000億円で値下げ設計か」
仮に報道が事実の場合、大容量プラン20ギガ(ギガは10億)バイトで3000円前後というのは予想された方向感という印象。ただし、ベースケースとして想定していた「Y!mobile」、「UQmobile」(それぞれ、ソフトバンク、KDDIのセカンドブランド)対比で月500円安い水準よりもさらに500円安く、ソフトバンクとKDDIへの値下げ影響の拡大懸念が強まる可能性はある。
報道では、小~中容量プランの値下げへの言及はなかった。NTTドコモが計画する値下げの全貌が読み難いうえ、業績影響を占う上で重要な家族割引や光セット割引の取り扱いも不明だ。競合他社への影響を考えるにはNTTドコモの正式発表を待たざるを得ない。
ただ、NTTドコモも無尽蔵に値下げができるわけではない。完全子会社化により増加するNTTドコモの当期利益取り込み分約2000億円の範囲内で値下げが設計される可能性が高く、KDDIやソフトバンクの業績に大きな影響が生じる可能性は低いという見方に変更はない。
■野村証券の増野大作氏(1日付のリポート):「情報乏しく、料金体系などの確認が必要」
報道は料金体系の内容に関する情報が乏しく、プラン概要を確認する必要がある。主力ブランドの値下げについて、現在は上限月7ギガバイトのデータ従量制と月30ギガバイトのデータ定額制の料金体系だが、報道では「これらを刷新し、使ったデータの量に応じて課金する方向」という。
報道が正しければ、データ従量制の上限容量を月30ギガバイトまで大幅に引き上げるとみられ、現在の業界の料金体系とは全く異なり単純な比較は難しい。なお、データ従量制の上限容量の大幅引き上げは、中期的にはデータトラフィック拡大で導入当初の減収影響を相殺できる可能性がある。
セカンドブランドについて、報道では手続きやアプリ導入を利用者自らがネット経由で行うセルフサービスとし、コストを抑制するとしている。実店舗で新ブランドサービスを提供するかは不明。オンラインでの割安サービスであれば、既にソフトバンクがLINEモバイルで提供しているほか、KDDIはオンライン専用の新ブランドを今後設立すると発表している。