新型コロナウイルスの世界的な蔓延で日常生活は一変。資産運用ビジネスも新たなフェーズに入ってきたようです。こうした中、QUICKは12月8日、「アフターコロナの資産運用ビジネス」をテーマに据えて、9回目となる「QUICK資産運用討論会」を開催。コロナ下で初のリモート形態を採った討論会には、約500人の資産運用業界関係者に視聴参加いただきました。
■新プログレスレポートの公表は2021年夏までに
第1部の基調講演は、金融庁 総合政策局 政策立案総括審議官の井藤英樹氏をお招きし、「令和2事務年度金融行政方針」に関する網羅的な解説に加え、「資産運用業の高度化」を巡る金融庁の取り組み内容を紹介いただきました。
金融庁がデータ分析力を磨き、データ活用を推進する方針が示されたうえで、資産運用業の高度化については、更なる調査・データ分析や資産運用会社との対話を進め、21年夏までに「資産運用業高度化プログレスレポート2020」の続編を公表する見通しが明らかになりました。
資産運用業高度化に向けた取り組み・調査事項として、私募投信などの運用パフォーマンスの見える化や、「アクティブもどき」とも呼ばれる「クローゼット・トラッカー(疑似アクティブファンド)」の実態調査など、8つの課題についても概説いただきました。
■対面アドバイスとデジタルの融合で新フェーズへ
第2部のパネルディスカッションには、運用会社と証券会社を代表する3名にご登壇いただきました。投信市場の運用資産残高が伸び悩んでいる背景、投信販売形態のあり方、投資教育、金融業界の変化などについて、Q&A形式でそれぞれの考えを述べられ、次の点がクローズアップされました。
【討論のポイント】
▼ネット証券の台頭で若年層を中心に口座数は増えたが、投信購入額は対面営業経由が依然として圧倒
▼米国でも資産運用ビジネスは1970年代まで停滞していた。その後、401kやIRA(個人退職勘定)、マネージド・アカウント(投資一任運用サービス)がスタートしたのに伴い、資産運用残高が急拡大局面へ
▼米国では金融資産額の大半を全体の10%に満たない富裕層が保有している。日本でも、富裕層へのアプローチがカギ
▼対面のアドバイスやヒューマンタッチなアフターフォローと、ネットやテクノロジー、デジタルによる分析力とのハイブリッド化(融合)が肝心
▼証券会社提供のプラットフォームを全国の金融機関が活用する「金融インフラ仲介」を推進
▼個々人のライフスタイルの多様化に沿ったアドバイス・商品提案力が一層求められる
▼アドバイスでは、資産運用の目標や期間を明確に定めるのが最重要。投資家を伴走するゴールベースのアドバイスには行動ファイナンスの知見が有効
▼投資家とゴールを共有し、リスクとコストに応じたポートフォリオを構築していくという考え方を顧客に伝えていく必要がある。そうした適切なアドバイスをできるようにする投資教育も不可欠
資産運用ビジネスの今後を見据えるうえで、示唆に富む様々な視点がパネルディスカッションで浮き彫りになりました。
【開催概要】
◆「第9回QUICK資産運用討論会」
テーマ:アフターコロナの資産運用ビジネス
日 時:2020年12月8日(火)15~17時
<基調講演(事前録画収録)>
井藤英樹氏(金融庁総合政策局政策立案総括審議官)
アジェンダ:
1.令和2事務年度金融行政方針
(1)コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く
(2)高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く
2.資産運用業の高度化
(1)『資産運用業高度化プログレスレポート2020』
(2)資産運用業高度化へ向けた当庁の取組み・調査事項
<パネルディスカッション>
パネリスト(50音順):
上原秀信氏(ニッセイアセットマネジメント・常務取締役執行役員)
千田聡氏(野村アセットマネジメント・執行役員)
浜田直之氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・取締役副社長執行役員)
モデレーター:
清家武(QUICK資産運用研究所長)
(QUICK資産運用研究所)