【日経QUICKニュース(NQN) 寺沢維洋】12月11日の東京株式市場で任天堂(7974)株が前日比1760円(3.0%)高の6万770円まで買われ、約2カ月半ぶりの高値を回復した。米国でゲーム機「ニンテンドースイッチ」の販売台数が11月に大きく伸びたのが手がかりとなった。新型コロナウイルスのワクチンが普及すると、巣ごもりのゲーム需要が減ると警戒されていたが、心配は無用かもしれない。
■ライバルはコロナワクチン?
米調査会社のNPDグループによると、11月の米国でのニンテンドースイッチ(ライト含む)販売台数は135万台を超えた。10月(73万6000台)から大幅に伸び、24カ月連続で米国のゲーム機販売トップを記録。11月はライバルのソニーが「プレイステーション5(PS5)」を発売したが、スイッチの優位は変わらなかった。
任天堂にとって心配の種は、ライバルのゲーム機ではなく、コロナワクチンかもしれない。世界的にワクチンが普及すれば、生活スタイルが元に戻り、家にこもってテレビゲーム機に興じる時間も減るからだ。たとえば、11月9日にファイザーが開発中のスワクチンが良好な試験結果を出したと伝わると、翌10日に任天堂株は4.5%下落。その後、6万円を下回る日々が続いた。
■「需要減は緩やか」
来期以降の巣ごもり需要の反動減が気がかりだが、UBS証券の担当アナリスト、福山健司氏は10日付のリポートで「値下げなどの施策により需要減は緩やかになる」と指摘。製品のデジタルシフトによる利益率の改善なども寄与するとみる。
21年3月期の営業利益について、任天堂は4500億円を計画している。QUICKがまとめたアナリスト予想によると、市場は5272億円と今期の営業益をはじき、来期(22年3月期)も5200億円程度を確保できるとみている。
福山氏は、足元の任天堂の株価は短期的な業績の明るさとその後の業績ピークアウト(下り坂)への警戒を織り込んでいるが、「ピークアウトの速度が緩やかになった場合の適正バリュエーションについて、市場ではコンセンサスが形成できていない印象」と指摘している。
■ソフト販売も追い風
スイッチのライフサイクルについて、岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは「ソフト販売は利益率の高いダウンロードの比率が高く、旧作タイトルも売れやすい。このため従来のゲーム機に比べると息の長い製品になりそうだ」と指摘する。これまで手薄だった中国やオセアニアでも徐々に販売を伸ばしていることも追い風となっている。
中長期的には、中国のインターネットサービスの巨人、騰訊控股(テンセント)と共同で開発を進めているゲーム「ポケモンユナイト」にも関心が集まりそうだ。これはスイッチとスマートフォンで遊べるゲーム。「任天堂のモバイルゲームはスイッチなどに比べると規模は小さかったが、強力なコンテンツ力を活用した相乗効果が期待できる」(川崎氏)とみられている。