娘の友人が新型コロナウイルスに感染した。9日の夜に発症。呼吸困難になり、ロサンゼルス郊外にある彼女の自宅近くのER(緊急外来)に駆け込んだ。ERの待合室は咳き込む患者で溢れ、ERのスタッフから集中治療室(ICU)が満床で人工呼吸器の空きもないと言われた。処方された薬で症状が軽くなったそうだが、友人の話を聞き、「コロナの恐ろしさを痛感した」と娘が不安げに話した。
米CBSニュースによると、ロサンゼルスを含む南カリフォルニアのICUの空き率は5.3%。使用率が100%に達した医療機関も少なくない。カリフォルニア州では、ICUの空き率が15%を切った地域にロックダウン(都市封鎖)措置を導入することが決まっている。ロサンゼルスでは現在、カリフォルニア州に加え、ロサンゼルス郡とロサンゼルス市の規制も導入されている。規制内容が微妙に異なり一部で混乱を招いているが、不要不急の外出を禁止することは共通している。
「アンジェリーノ」と呼ばれるロサンゼルスの住民は外出禁止令を無視しているようにみえる。スーパーマーケットや一部の小売店では行列ができていた。運動のため散歩したビーチも人出が多かった。米アトランティック誌は「ハワイ州を除く全米で自宅待機命令が実行されていない」と報じた。渡航者に対する14日間の外出禁止令の違反者に罰金や禁固刑を科したハワイ州と比べ、米国本土では違反者が罰せられることはほとんどないとしている。ロサンゼルスで違反者が逮捕されたと聞いたことは一度もない。
米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめでは米国内の感染者が13日時点で1600万人を超え、死者が30万人に迫った。1日の感染者、死者、入院患者数が記録的なペースで増加している。感謝祭の前後に疾病対策センター(CDC)の勧告を無視して米国内で900万人以上が移動した影響が出ていることは間違いない。南カリフォルニアに続き全米の幅広い自治体が外出禁止令の導入や規制強化に動いたが、規制が順守されるとの見通しはない。効果が限定的になる可能性が高そうだ。
米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンが、米連邦食品医薬品局(FDA)に続いてCDCのお墨付きを得た。14日から全米で接種が始まる。FDAは17日にモデルナのワクチンの承認をめぐる諮問委員会を開く。米ジョンソン&ジョンソンは治験中のワクチンの緊急使用を2月に申請予定と伝えられた。
英医療調査会社のエアフィニティーは先週、ワクチン普及により米国が2021年4月に世界で最も早く日常に戻ると予想する調査結果をまとめた。一方、米シンクタンクのピュー・リサーチの最新の調査では、39%の米国人がワクチンを「絶対に接種しない」もしくは「接種しない予定」と答えた。9月時点の調査と比べ減少したが、依然として4割近い人がワクチンの安全性や有効性を疑問視していることを示唆している。
トンネルの向こうに灯りがみえるものの暗闇で足元が見えない。米国はいま、異常な環境の中でクリスマスを迎えようとしている。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信