全国の上場企業に経営環境や経済の見方を聞く月次アンケート調査「QUICK短期経済観測調査(通称:QUICK短観)」は18日発表の2023年7月調査で第200回を迎える。QUICKは5日、第100回調査を実施した15年3月以降、23年6月までの約8年分の調査から注目の内容をまとめた「第200回記念号」を発行した。米中対立や新型コロナウイルスなどに翻弄された激動の8年間を、QUICK短観の調査結果とともに振り返る。
QUICK短観では、企業の景況感を表す「業況判断DI」をはじめ、物価見通しや雇用人員の状況、円相場や自社の株価への見方などを調査する。速報性が高いため、日銀が四半期ごとに公表する全国企業短期経済観測調査(日銀短観)の先行指標として評価されている。毎月旬の話題を尋ねる「特別質問」からは、企業の生の声を把握できる。
コロナ影響や企業統治改革の実態明らかに
記念号では8年分の特別質問の回答結果を「経営を揺るがした5つのテーマ」に沿ってまとめた。5つのテーマは以下の通り。
1.新型コロナが変えた企業経営
2.米中貿易摩擦と中国経済の動揺
3.グローバルインフレとウクライナ侵攻
4.異次元緩和の長期化と32年ぶり円安
5.緒に就いた企業統治改革
新型コロナウイルスの世界的な流行は記憶に新しい。感染拡大による経営への影響を問う設問では、感染終息が見通せないなかで企業の活動が制限され、時とともに業績を圧迫していった様子が浮かび上がった。流行初期の20年2月調査では「中国や世界の景気悪化を受けたマイナス影響」(27%)、「中国の工場・店舗の休業やサプライチェーンの混乱によるマイナス影響」(25%)といった回答が上位に。ただ当時はまだ「海の向こうの感染症」といった認識も国内企業の間にあり、「特に影響なし」(21%)との回答も目立った。
数度の緊急事態宣言を経た21年5月調査では「消費減退や営業・移動規制でマイナス影響」(43%)といったネガティブな回答が急速に増えた。緊急事態宣言解除後の21年12月調査では「事業環境の回復は想定より遅れている」と「事業環境は回復しコロナ前に戻りつつある」の回答率が拮抗した。
国内の企業統治にも変化が起きた8年間だった。QUICK短観ではコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が導入された15年以降、企業統治改革に関する質問を重ねてきた。
15年4月調査ではコーポレートガバナンス・コードの原則の一つである「株主との対話」について、半数以上の企業が「必要に応じて対応する」とやや消極的ともとれる姿勢を示していた。
その後、企業や資本市場の意識は着実に変わってきた。23年3月、東京証券取引所は上場企業に「資本コストを意識した経営」への取り組みを要請した。これを受けた23年5月調査では、強化する取り組み(複数回答可)として「人的資本への投資を推進する」(47%)、「ROEやPBR、時価総額など、資本収益性・株価に関する指標を経営目標に取り入れる」(44%)、「投資家との対話やガバナンスを向上させる」(38%)を挙げる企業が多かった。「特段の対応強化は考えていない」は1%にとどまった。
記念号ではこのほか、米中貿易摩擦や世界的なインフレ、日銀の異次元緩和に関する特別質問の結果も紹介した。「業況判断DI」など、定例質問に基づく各指標の8年間の推移が一目で分かるチャートも掲載している。長期的な視点から日本経済を振り返ることで、今後の企業経営や投資活動の見通しを立てる際の参考材料になりそうだ。
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https://quickmk.smktg.jp/public/application/add/17709
◆記念号の注目点を紹介した動画Meet!QUICKはこちらから
https://corporate.quick.co.jp/meet/quicktankan_report_200th/
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