電気自動車の開発・販売を手掛ける米テスラ(TSLA)の株価は今年に入って約7倍に急騰し、上場来の高値圏で推移している。空前の株高を受け、テスラ株を上位に組み入れている投資信託も運用成績を伸ばした。
■「イノベーティブ・フューチャー」、1年騰落率が100%超
テスラ株を組み入れ上位10位までに含む国内公募追加型投資信託(ETF、DC・SMA・ラップ専用除く)のうち、純資産総額(残高)が大きい3本の運用成績(分配金再投資ベース)を調べたところ、いずれも11月だけで10%超の好成績を収めた(図表1)
残高1位は日興アセットマネジメントが運用する「グローバル・プロスペクティブ・ファンド<愛称:イノベーティブ・フューチャー>」。最新の月次レポート(10月末時点)によると、テスラ株の組み入れ比率は8.6%で、組み入れている49銘柄の中で最も多い。
このファンドは世界の株式のうち、劇的な生産性向上や急激なコスト低下などの「破壊的イノベーション」を起こしうる企業に投資する。11月末時点の1年騰落率は100%超と、海外株式に投資するアクティブ型(積極運用型)ファンド全体の中で最も高い。好成績を背景に過去1年の資金流入額(QUICK推計値)は829億円と投資家からの人気を集めた。
■「グローバルAI」「キャピタル世界株式」もテスラ株に投資
次に残高が大きい「グローバルAIファンド」は、10月末時点の組み入れ銘柄65のうち、テスラ株の比率が2番目に大きい5.7%だった。過去1年間で資金流出超過となったものの、運用成績は堅調だった。
世界各国の株式に分散投資する「キャピタル世界株式ファンド」は、10月末の組み入れ銘柄317のうち、テスラ株の組み入れ比率は1位の4.9%。今年の1月末に組み入れ上位の5番目に入って以降、徐々に順位を上げてきた。7月末以降は1位を維持している。
■分類平均と比べ好成績、値動きの大きさにも注意
テスラ株を組み入れた3ファンドの運用成績がどれくらいいいのか、「MSCI全世界株指数(ACWI、除く日本、為替ヘッジなしの円ベース)」に連動するインデックス型投信の分類平均と比べたのが図表2だ。2019年6月末から20年11月末までの推移をみると、3ファンドとも分類平均を上回る成績を収めている。
特に快走が際立つのは、3ファンドの中で残高が最も大きく、テスラ株の組み入れ比率も高い「イノベーティブ・フューチャー」。どれもテスラ株高騰の恩恵を受け、コロナショック以降に成績を大きく伸ばした。裏を返せば、特定銘柄の株価に今年の運用成績を左右されがちだったともいえる。組み入れ銘柄数が多い「キャピタル世界株式」を除く2本は相対的に値動きが大きいという特徴もあり、投資する際にはリスク管理にも注意が必要だ。
(QUICK資産運用研究所=望月瑞希、西田玲子)