今回は11月19日(木)に開催されたマレットオークションをレポートする。
■落札予想価格の19.2倍に会場が沸く
近現代絵画・陶芸(Paintings and Pottery Works)から65点、近現代美術(Modern and Contemporary Art)から214点、合計279点の作品がセールにかけられた。絵画だけでなく、書や陶芸品、石像の出品もあり、バラエティ豊かで見ごたえのある構成であった。出来高は、落札総額1億8059万5000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は87.8%。落札された作品の半数近くが落札予想価格上限を超える価格で落札されており、活発な競りが展開された。
最高額で落札されたのは、アンディ・ウォーホルのポートレート作品LOT.86《ミック・ジャガー》(111.5×73.7㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格500~700万円のところ、落札予想価格上限を超える760万円で落札された。ウォーホルは、他にもポートレート作品を含む3点のシルクスクリーン作品の出品があったが、いずれも落札予想価格内で落札されている。
次いで高額落札となったのは、幻想的な作風が特徴的な日本画家・高山辰雄のLOT.31《日輪》(61.4×81.1cm<25号>、絹本・彩色)。落札予想価格150~250万円のところ、落札予想価格上限の2.24倍、560万円の高値がついた。オリジナル作品がセールにかけられることは珍しく、注目を集めた。
高額かつ落札予想価格を大幅に上回った作品がLOT.43 《ガンダーラ仏坐像》(H86.5×W49.5×D16.0cm)。波型の頭髪や両肩に袈裟をかけて覆う(通肩)姿など、ギリシャ彫刻の影響を多く受けたといわれているガンダーラの仏像彫刻の流れを汲んだ坐像は、落札予想価格15~25万のところ、落札予想価格上限の19.2倍となる480万円の高値がつき、会場を沸かせた。
■「位相絵画」― 関根伸夫
「もの派」を代表する作家として活躍した現代美術家、彫刻家である関根伸夫(せきね・のぶお、1942-2019)にスポットを当てる。
関根は、1968年に開催された野外彫刻展に出品した《位相-大地》が、国内外で高い評価を受け、その名が知られるようになった作家で、以降も「位相」の概念をテーマに平面や立体、インスタレーションなど様々なスタイルで作品を発表している。中でも、1978年から発表された「位相絵画」という絵画シリーズは、関根の画業を象徴する代表的な作品シリーズとなっている。
「位相絵画」は、和紙などを重ね合わせた支持体にキズや切れ目、しわなどをつけて、その上に金箔や黒銀箔でコーティングする手法で制作され、「位相」の概念を空間としての絵画に表現した作品である。
本セールでは、6、15、25、30号とサイズが異なる5点の「位相絵画」の出品があった。
落札予想価格内で落札された作品が3点、落札予想価格上限を超えて落札された作品が2点だった。その中から、落札予想価格35~45万円のところ、54万円で落札された6号サイズの「位相絵画」、LOT.128《G6-91 One Page》に焦点を当て、分析する。
関根の位相絵画6号サイズの最近の5年間のパフォーマンス指標をみてみると、2016~2019年までの落札価格平均は、多少の上下動がありつつも、落札予想価格内で推移していることがわかる。2020年に顕著な上昇があり高騰しているようにも見受けられるが、これは、多色使いの珍しい作品の出品があった為と推察される。
今回の出品でも、色を使った作品LOT.124《G15-313四つの場所》(15号)が、落札予想価格60~80万円のところ、115万円で落札という好結果を残している。作品の特異性により、大きな上昇をみせることを考慮しても、落札予想価格内で順当に推移しており、安定した銘柄であることがわかる。
(月1回配信します)
※アート・コンサルティング・ファーム提供 ⇒リポート全文はこちら
※次回のマレットオークション開催予定は1月28日