【日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希】外国為替市場でトルコの通貨リラが戻りを試している。トルコ中央銀行が24日に市場予想を超える幅の利上げに踏み切り、買いに弾みが付いてリラの対ドル相場は1カ月ぶりの高値を付けた。中銀はインフレ抑制へ金融引き締めを「断固として維持する」との姿勢を示しており、今後もリラ相場の支えとなりそうだ。
■想定内ではあるものの・・・
中銀の発表前に1ドル=7.6リラ台前半だったリラは一時、7.5リラ台半ばまで短時間で1%程度上昇した。日本時間25日昼は7.5リラ台後半で取引されている。投資家が注目したのは利上げ幅だ。中銀は政策金利である1週間物レポ金利を2.0%引き上げ年17.00%とした。ロイター通信がまとめた市場予想の中心は1.5%の引き上げだった。(トルコリラの対円レートはコチラ)
2会合連続の利上げで、中銀は声明で「インフレ率の恒常的な低下がみられるまで引き締めのスタンスを断固として維持する」と強調した。11月に就任したばかりのアーバル総裁も今月の記者会見で「物価安定を最重視する」と述べていた。今回の利上げそのものは投資家の想定内だったが、幅の大きさに中銀の意欲がうかがわれる。
インフレ沈静化はまだみえない。11月の同国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比14.0%上昇と、10月の11.9%上昇から加速した。中銀のインフレ目標は5%で、依然開きがある。今後も追加利上げに動く可能性は高い。
■インフレ抑制効果も
トルコでは国民が外貨預金を積み上げるなど通貨の信認が揺らぎ、11月上旬に8.5リラ台後半と過去最安値まで売られていた。直近のインフレ率を上回るほどの水準まで政策金利が上昇したことで今後は「インフレ抑制の効果が期待できる」(楽天証券の荒地潤氏)との見方が増えている。荒地氏は「米国の低金利の長期化観測や新型コロナウイルスのワクチン普及は、(トルコリラなど)新興国通貨を押し上げる材料」とも話す。
トルコは外交面では厳しい状況だ。米国は今月14日、ロシア製地対空ミサイル「S400」を導入したトルコへの経済制裁を発動した。欧州連合(EU)もトルコへの制裁拡大の方針を示す。市場では「対外関係悪化のリスクがあるうえ、経常赤字や外貨準備高不足など不安要素は多い。リラの上昇は長続きしないだろう」(英バークレイズ銀行のラムスレン・シャラブデムベレル氏)との声もあった。