【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】2021年の幕が開いた。前年は米連邦準備理事会(FRB)のゼロ金利政策と量的緩和の再開を受けたドル売りが続き、円の対ドル相場は年後半にじり高の展開となった。今年の円相場見通しを市場関係者2人に聞いたところ、円高・ドル安の基調は当面続くとの見方で一致したが、「春以降はドル買いが優勢」「年間を通じて円高方向」と期間については見方が分かれた。円やドル以外では欧州通貨への注目度が高かった。
■上野剛志・ニッセイ基礎研究所上席エコノミスト
「ワクチン普及でドル持ち直し、円の下値メドは109円」
21年1~3月は1ドル=100円割れとまではいかないが、円高・ドル安の流れが続くだろう。新型コロナウイルスの感染拡大が続くうちは、FRBの量的緩和でドルの余剰感が意識される状況は変わらないからだ。
ドル安の基調が反転するのは春以降ではないか。米国で先行する新型コロナのワクチン接種が本格化して感染が抑えられると、米景気の回復を見込んで米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大からドル買いが優勢になるだろう。円相場は1ドル=109円まで下落余地があるとみている。
円やドル以外では英ポンドに注目している。欧州連合(EU)と通商協定で合意し、「合意なき離脱」が避けられるとの見方から20年末にかけてポンド高が進んだ。ただ英国がEUから離脱したことの経済への影響は、やはり大きい。21年からマイナスの影響が広がるにつれ、ポンドが売られる展開となるだろう。
■橋本光正・ワカバヤシエフエックスアソシエイツ営業管理部長
「根強い円の現金化需要、95円まで上昇も」
21年は年間を通じて円高基調で推移するとみている。新型コロナの感染が各国で少しずつ収束に向かい、各国中銀の金融緩和姿勢が変わって株式相場が下落基調に転じれば、資金の現金化が加速するだろう。日本は世界有数の対外純資産国で、円の買い需要は根強い。円の一段高を促し、1ドル=95円までは上昇余地があると考える。
他の通貨ではユーロに注目している。20年は欧州復興基金の創設や、英国とEUの通商交渉の合意から、10年超続いてきたユーロ安のトレンドが変わった。21年もユーロ買いの流れが続く可能性がある。