【日経QUICKニュース(NQN) 川上純平】金融市場で日銀の金融政策を巡る思惑が飛び交っている。日銀は4日、上場投資信託(ETF)の購入額を前回の約700億円から約500億円に減額した。1月の国債買い入れオペ(公開市場操作)における一部年限の買い入れ減額方針に続いて市場の驚きを誘う変化だ。3月をメドに日銀が予定する「政策点検」の結果公表を前に、市場では「資産購入をより弾力化する布石ではないか」との見方が増えている。
■政策点検への思惑
日銀の発表によれば、4日の株価指数連動型ETFの購入額は501億円と前回(2020年12月30日)の701億円から200億円減った。1回当たりの購入額としては16年8月以来、4年5カ月ぶりの少なさだ。不動産投資信託(REIT)の購入額も前回の12億円から9億円に減らした。
日銀は昨年12月17~18日の金融政策決定会合で、これまで進めてきた大規模金融緩和の現時点での成果を評価する「政策点検」を実施し、3月をメドに結果を公表すると決めた。点検は政策変更の地ならしになるとみられており、このタイミングでのETF購入額の変更は点検結果の内容を示唆するものではないかと市場参加者はとらえている
昨年末の12月28日には、日銀は1月の国債買い入れ方針について残存期間「1年超3年以下」の予定額を前月の1回あたり3500億~6500億円から3000億~6000億円に減らすと発表していた。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため金融緩和を縮小する可能性は低い。一方で、緩和が長期化していることで国債やETFの買い入れが市場機能をゆがめているとの批判が高まっている現状がある。これを踏まえ、「点検」では不要な場合は買い入れ額を抑えるなど「金融市場の動向に応じて資産買い入れ額により強弱を付けていく方針を検討する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美氏)と読み解く市場関係者が増えている。
■「市場に織り込ませようとしている」
12月の金融政策決定会合では、ある政策委員から資産買い入れについて「金融緩和策の効果と副作用を点検し、必要に応じて持続性や効果を高める改善を図るべきだ」との発言があったことが明らかになっている。点検の結果公表を前に「日銀は無用な思惑を呼びかねない動きは控える」と予想する向きが多かったが、ETFや国債買い入れの減額を通じ「緩和の長期化を見据えた方針変更を徐々に市場に織り込ませようとしている」(みずほ証券の上野泰也氏)との見方に変わってきている。
次回の金融政策決定会合は1月20~21日に予定されている。点検の内容を探る上で、会合後の黒田東彦総裁の発言内容にはいつも以上に注目が集まりそうだ。