【日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔】イタリアとドイツの長期金利の指標となる10年物国債利回りのスプレッド(利回り差)がおよそ1カ月ぶりの水準に拡大している。イタリアの連立与党内での対立で政権の指導力低下が意識され、イタリア債が売られた。米金利の上昇に伴い、イタリア国債から資金を引き揚げる動きが出たとの声もある。
金融仲介会社タレットプレボンによると、イタリアの長期金利は14日、前の日比0.0510%高い0.6380%、独長期金利は同0.0290%低いマイナス0.5500%をつけた。2国間のスプレッドは1.188%に拡大し、2020年12月11日(1.193%)以来の水準となった。
■伊の政治リスク
背景にはイタリアの政局に対する不安がある。レンツィ元首相率いる政党「イタリア・ビバ」が13日、コンテ首相の連立政権からの離脱を表明し、政権派が議会で過半数を維持することが難しくなった。
イタリア・ビバは、欧州復興基金を利用して新型コロナウイルスの感染拡大による経済打撃からの復興を目指す計画案で、環境対策やインフラ整備を重視する政権に対し、教育や福祉により多くの資金を振り向けるべきだと主張。欧州安定メカニズム(ESM)を通じた融資の活用をめぐっても意見の違いが目立っていた。終息の見通しが立たないコロナ禍での政治情勢の不透明感が、イタリア国債を売ってより安全な資産とされる独国債を買う動きにつながっている。
野村証券の岸田英樹氏は、コンテ政権が議会で不信任となれば「イ
■米金利上昇
米金利の上昇もイタリア国債の利回りを上昇させる一因のようだ。米バイデン次期政権は日本時間15日、1.9兆ドル規模の追加経済対策案を公表し、米長期金利は景気回復などへの期待から1%を超える水準で推移を続けている。利回り面で投資妙味が増していることから「投資家がわざわざ(米国債に比べて)リスクの高いイタリア国債に資金を入れる必要がなくなった」(SMBC日興証券の野地慎氏)とし、米国債に一部資金が流れているとの見方がある。
イタリア国債利回りの一方的な上昇がこのまま続くかどうかについては、当面、欧州中央銀行(ECB)のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)で抑えられる公算が大きい。ECBはプログラムの期限を22年3月末までとしており、イタリア国債などの買い入れ額は20年11月時点で全体の約18%を占める。それでも、PEPPというストッパーが外れたときにみえてくるリスクに目を向けておく必要がありそうだ。