【日経QUICKニュース(NQN) 川上純平】償還までの期間が10年を超える超長期債で金利の先高観が強まっている。日銀が次回3月の金融政策決定会合で公表する政策点検の結果を巡り、超長期債の一部が日銀の買い入れオペ(公開市場操作)の対象から外れるとの見方が出ているためだ。1月26日の40年物国債の入札は波乱なく通過したが、超長期債市場での需給の緩みに対する警戒感は当面くすぶりそうだ。
■買い入れ対象除外の可能性
財務省が26日に実施した40年債入札は、他の年限に比べ高めの利回りを求める生命保険会社などの需要を集め「無難」な結果となった。応札額を落札額で割った応札倍率は2.86倍と前回(2.67倍)を上回った。
それでも需給の緩みが懸念されるのは、市場で「日銀が点検結果を公表する3月会合で、残存期間30年超の国債を買い入れ対象から除外する可能性がある」(バークレイズ証券の海老原慎司氏)との見方が浮上しているためだ。40年債は政府の2021年度の国債発行計画で発行増額が打ち出された。日銀が超長期債を買わなくなるとすれば、需給不安から金利は上昇圧力にさらされる。26日の新発40年物国債の利回りは前日比0.005%高い(価格は安い)0.705%と、昨年12月以来の高水準を付けた。
■「緩やかなスティープ化は望ましい」
こうした見方が市場で出ているのは、日銀がイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化を嫌っているとみられているためだ。日銀の黒田東彦総裁は記者会見でたびたび超長期金利の過度な低下に懸念を示してきた。長引く低金利で償還期間に応じた利回り差も縮小し、金融機関が利ざやを稼ぎにくく、運用難に直面していることが背景にある。
日銀の政策点検では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大規模な金融緩和が今後も長期化すると見込まれるなか、政策の持続性をいかに保つかが議論の焦点になる。金融機関の収益悪化という副作用を軽減するため、超長期の金利を高めに誘導することが課題の解決手段の一つとされている。
日銀が26日に公表した20年12月17~18日開催分の金融政策決定会合の議事要旨によれば、ある委員が「イールドカーブの緩やかなペースでのスティープ(急勾配)化は、金融緩和の長期化と金融システムの安定の両立の観点から望ましい」と指摘していた。
もっとも、国債買い入れを減らすことは「金融緩和の縮小を市場に印象づけることになりかねない」(国内証券の債券ストラテジスト)との危険もはらむ。点検結果の公表まで、債券市場では日銀の真意を巡り思惑的な売買が繰り返されそうだ。
<金融用語>
金融政策決定会合とは
金融政策決定会合とは、日本銀行の政策委員会が、金融調節の基本方針、基準割引率、基準貸付利率および預金準備率の変更など、金融政策の運営に関わる事項を審議・決定する場をいう。年8回開催し、会合終了後、直ちに決定内容を公表する。政策委員会は、日銀総裁、副総裁2名と審議委員6名の計9名の委員で構成される。 会合での主な意見をまとめたものを「主な意見」として、原則会合の6営業日後に公表し、政策委員の経済・物価見通しを「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」として年4回の会合で審議・決定のうえ公表する。