【日経QUICKニュース(NQN) 大貫瞬治】経済産業省が28日発表した2020年の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年比3.3%減の146兆4380億円だった。下げ幅はリーマン・ショック後の09年(2.2%減)は超えたものの、過去最大だった金融危機時1998年の5.5%減ほどではなかった。コロナ禍で消費が縮む中で巣ごもり需要やそれを背景にしたネット販売の増加が下支えし、落ち込み幅を抑えたようだ。
■沈む百貨店・伸びる通販
20年の消費全体を構成する9業種で見ると、百貨店・スーパーを含む各種商品小売業が15.5%減と大きく落ち込んだ。一方、ネット通販などを含む無店舗小売業が3.5%増、洗濯機や冷蔵庫などの家電販売が好調だった機械器具小売業が2.7%増、巣ごもり需要による内食需要が伸びた飲食料品小売業が1.3%増だった。このほか医薬品・化粧品小売業も1.4%増だった。
98年は、前年4月の消費税率5%引き上げによる反動減が続いていたことに加え、大手金融機関の破綻などによる金融危機が重なり景気が悪化した時期だ。当時の経済情勢を経済企画庁(現・内閣府)は「家計や企業の心理を悪化させ、回復を頓挫させた」(経済白書)と分析しており、個人消費が全般に低調だったとしている。
みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏は20年の減少率が98年ほどではないことについて「代替消費が出た」と話す。巣ごもり消費の盛り上がりや、政府による10万円の特別給付金が家電などの消費に向かったと指摘し、「1度目の緊急事態宣言が発出されて経済活動の正常化が見通せなかった時期の想定に比べれば、コロナ禍での小売業の落ち込みは大きくはなかった」とみる。
■今年の落ち込みは?
市場では21年の落ち込みは限定的との見方が多い。今回の緊急事態宣言が前回のような経済活動の全面停止にはなっていないうえ、ワクチン普及期待もあるためだ。第一生命経済研究所副主任エコノミストの小池理人氏は「緊急事態宣言下の1~2月に消費は一定程度落ち込むが、その後は緩やかに戻すだろう」と予測する。
ただ、政府施策の縮小が消費マインドを下押す可能性には注意が必要だ。みずほ証の小林氏は「企業が給与を上げにくい中で雇用調整助成金など政府の補助金が今後縮小していけば、個人所得を下押すことになる」と警鐘を鳴らす。