【QUICK Market Eyes 根岸てるみ】決算発表が佳境を迎える中、中国向け需要の回復が業績を下支えるケースが増えている。2月4日に決算発表予定の伊藤忠商事(8001)は中国向けが復調していると伝わったほか、医療従事者向けサイト運営のエムスリー(2413)は中国での医師会員数が300万人超となった。インド自動車大手タタ自動車(ADR)の英子会社であるジャガー・ランドローバーの20年10~12月期の販売台数は、全世界では厳しい状況だが中国向けは約2割増と回復が鮮明となった。
■中国株も回復基調
1月の財新中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比1.5ポイント低下の51.5だったものの、好不況の境目となる50を9カ月連続で上回っており回復基調となっている。
中国株相場もじわじわ持ち直してきた。上海総合指数は1月25日に2015年12月以来5年1カ月ぶりの高値を付けた。米株式市場ではゲームストップ株(GME)に振り回されてダウ平均や、S&P500種株価指数の1月の月間騰落率は下落に転じたが、上海総合指数は0.3%上昇し、月間ベースでは4カ月連続の上昇となった。足元では5日移動平均線が25日移動平均線を上から下に抜けるデッドクロスとなってしまったが、米株式相場と比較すると出遅れ感もある。
※上海総合指数、日経平均株価、ダウ平均株価、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数の推移
実は世界の主要株式市場をみると、アジア諸国・地域が全体的に堅調だ。1月の月間騰落率を調べたところ、香港やシンガポールなどが上位に並んだ。韓国の総合株価指数(KOSPI)は1月に過去最高値を更新している。
■日本マネーは投信経由で
アジア株市場でもサムスン電子やアリババ、騰訊控股(テンセント)といった大型のハイテク株の上昇が目立つ。投資家のハイテク株選好は米国からアジア諸国・地域へと広がりをみせる。
さらにアジア株高を後押ししているのが日本の個人投資家マネー。1月の追加型株式投信(ETFを除く)で資金が最も流入したのは海外株に投資するタイプで約7000億円が流入した。この海外株ファンドのうち、例えば1月の資金流入額が500億円に迫った「デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド」(日興アセットマネジメント)は世界各国の株式市場に分散投資しているが、運用資産の16%(昨年末時点)を中国に投資しているほか、シンガポールや台湾にも投資している。
企業決算に再び話を戻すと、建機キャタピラーの2020年10~12月期の売上高は前年同期比15%減の112億で、主力の北米市場の売上高が2割減と足を引っ張ったものの、アジア・太平洋地域は1割弱の減少にとどまった。同社のジム・アンプレビー最高経営責任者(CEO)は「アジア・太平洋地域の市況は回復基調にある」と説明したという。アジア諸国・地域の景気回復期待も相場の支えになっている。