【NQNニューヨーク 横内理恵】今週(2月8~12日)の米株式相場は方向感を探る展開か。大型の追加経済対策への期待が投資家心理を支える。低金利や企業業績の底堅さなどファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も良好だ。半面、主要株価指数が過去最高値圏で推移しており、短期的な利益確定売りに押される場面がありそうだ。
■追加経済対策が3月上旬にも成立か
前週のダウ工業株30種平均は2週ぶりに上昇し、週間で1165ドル高と上げ幅が11月以来の大きさとなった。個人投資家の過熱投機を発端とした米株式市場の混乱が収束に向かったことが買い安心感につながった。バイデン政権の追加経済対策が前進したことも好感された。ナスダック総合株価指数と、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数はともに過去最高値で終えた。
経済対策を巡っては5日に米上下院が予算決議案を採択した。与党・民主党は予算関連法案に適用される「財政調整法」を活用すれば、共和党の支持がなくても単独で追加経済対策を成立させられる。民主党はバイデン米大統領の1.9兆ドル規模の対策をたたき台に2週間程度で法案をとりまとめるとみられ、3月上旬など早い段階で対策が成立するとの観測がある。
今週は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が10日に米労働市場について講演する。新型コロナウイルスの影響が大きい業界の雇用の回復の鈍さなどについて説明し、緩和的な金融政策を続ける方針を改めて強調する可能性がある。歴史的な低金利環境が長期にわたって続くとの見方が確認されれば、相場の支えとなる。
■好調な決算発表
主要企業の決算発表はスマートフォンのアップルやネット通販のアマゾン・ドット・コムなどを筆頭にハイテク企業の業績好調が鮮明だった。調査会社リフィニティブによると、これまでに2020年第4四半期決算を発表した主要企業で1株利益が市場予想を上回ったのは84%、売上高が予想以上だったのは79%に上る。今週は映画・娯楽のウォルト・ディズニーやネットワーク機器のシスコシステムズの決算発表がある。市場予想を上回る業績や見通しを発表した銘柄には買いが向かいそうだ。
新型コロナウイルスのワクチン普及本格化も市場にとって明るいニュースだ。米政府は薬局やスーパー、野球場なども活用して接種ペースを上げる計画だ。4日にはジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が1回の接種で済み、冷蔵保存が可能なコロナワクチンの緊急使用許可を米食品医薬品局(FDA)に申請した。
一方、利益確定売りは出やすく、相場の上値は重そうだ。ナスダック総合株価指数は年初来ですでに7%上げており、主要ハイテク株などの割高さを警戒する声が再び強まってきた。景気敏感株へ買いが広がり、相場をけん引できるかどうかが注目だ。