共同通信社が2月6~7日に行った世論調査では、菅義偉内閣の支持率は38.8%になり、1月よりも2.5ポイント低下した。NHKが5~7日に実施した調査でも内閣支持率は2ポイント低下の38%で、不支持率の44%と逆転している。この2社を含む大手5社の平均だと、菅内閣は昨年9月に67.8%と極めて高い支持率で滑り出したものの、1月は37.6%へと低下した。
警戒ゾーンは支持率40%
歴代の政権を振り返ると、発足当初は期待感から比較的高めの数字になる。例えば、日本経済新聞によると、小渕恵三首相の急逝で登板した森喜朗内閣の場合でも、最初の調査は36%だった。辞任表明前の2001年2月には15%まで落ち込んだが。麻生太郎内閣は53%で船出したが、退任直前は21%だった。
過去10代の内閣のうち、長期政権を維持した小泉純一郎内閣と第2次安倍晋三内閣は、当初12カ月は1度も40%を割り込んでいない。第2次安倍内閣が初めて50%を割ったのは、発足から19カ月目だった。これは、新政権にとって、いかにスタートダッシュが重要であるかを示している。菅首相の場合、既にこの点においてつまづいている。
■大手メディア世論調査による菅内閣の支持率
期間:2020年9月~2021年2月
出所:報道各社の調査よりピクテ投信投資顧問が作成
政界においては「首相プレミアム」が重視される。首相プレミアムとは、内閣支持率から自民党の支持率を引いた値だ。「内閣支持率」と言っても基本的には首相への支持率なので、この数字が高ければ、与党は首相人気の恩恵を受けていると言える。逆に首相プレミアムがマイナスになると、歴代の政権は末期を迎えた。第2次安倍内閣は、政権発足から5年5カ月後の2018年5月に初めて内閣支持率と自民党支持率が42%で並んだ。それでも日本経済新聞の調査では、1度も首相プレミアムがマイナスになることはなかった。それが長期政権を可能にした。
株価押し上げには力不足
今年1月における菅内閣の首相プレミアムをみると、すでにマイナス1ポイントだ。政権発足から4カ月目で早くもマイナスに沈んでしまった。今後の世論調査で首相プレミアムのマイナス幅が拡大するようだと「総選挙は菅首相では戦えない」との声が自民党内にくすぶる可能性は否定できない。それがすぐに「菅降ろし」につながるとは思わないが、菅首相にとっては極めて緊張感の高い日々が続きそうだ。
日経平均株価は2月8日に2万9000円の大台を超えた。金融緩和の継続により株式市場への資金流入が続いているのだろう。菅政権の先行きに不透明感が強まっているとはいえ、野党の支持率が上がってこないため、政権交代のリスクが極めて小さいことも株価上昇の背景にありそうだ。ただし、この政治状況が続けば菅首相は大胆な規制緩和など日本が抱える構造問題の改革に取り組む余裕はない。つまり首相プレミアムが株式市場を押し上げる効果はないと考えられる。
ピクテ投信投資顧問 シニア・フェロー 市川 眞一
クレディ・スイス証券でチーフ・ストラテジストとして活躍し、小泉内閣で構造改革特区初代評価委員、民主党政権で事業仕分け評価者などを歴任。政治、政策、外交からみたマーケット分析に定評がある。2019年にピクテ投信投資顧問に移籍し情報提供会社のストラテジック・アソシエイツ・ジャパンを立ち上げ。