(初回公開日2021年3月26日18:00)
【QUICK Money World 辰巳 華世】投資を始めたいけれど、何から始めたらいいかよく分からない・・・そんな投資初心者は多いと思います。投資信託は、専門家が運用し管理してくれる便利な投資商品です。今日は、投資信託の仕組みや種類、メリットやデメリットについて分かりやすく解説します。
■投資信託とは
投資信託とは、投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、資金運用の専門家が株式や債券などに投資を行い、得た利益を投資家それぞれの投資額に応じて分配する商品です。専門家が運用し管理してくれるので、初心者でも挑戦しやすいです。海外の株式や債券などに投資する投資信託もあり、自分では投資しにくい分野に投資できるなどの魅力があります。
証券取引所に上場している株式などはリアルタイムで株価が表示されますが、投資信託は組み入れている株式などの資産の時価評価を基に、1日1回だけ価格が算出され、公表されます。投資信託の一口当たりの値段を「基準価額」といいます。日々の基準価額は、ホームページや新聞などで確認できます。投資信託は、この基準価額に応じて運用成果を算出し利益を分配します。利益分配のタイミングはそれぞれの投資信託ごとに異なります。
投資信託はカタカナで「ファンド」と表現されることもあります。また略して「投信」と書かれることも多いです。
■投資信託の種類
投資信託には制度面からみた種類と、運用対象面からみた種類があります。
制度面では、購入できるタイミングが、投資信託が立ち上がる(運用を開始する)当初の募集期間のみ購入できる「単位型」や、投資信託の運用期間にいつでも購入できる「追加型」があります。また解約は、運用期間中であればいつでも解約に応じる「オープンエンド型」、払い戻しに応じない「クローズドエンド型」などがあります。また、税法や投信法上では、投資信託は債券に投資する「公社債投資信託」とそれ以外の投資信託(「株式投資信託」)とに区分されています。ただ、主に債券に投資し、実際には株式に全く投資していないファンドであっても、 設計の上でより自由度の高い株式投資信託として設定することが多いです。
実際の運用対象面の種類では、国内を対象にした投資信託、海外を対象にしたもの、国内外を対象にしたものがあります。また、組み込む資産は、株式、債券、コモディティ等の「その他資産」、不動産、それらをバランスよく組み入れたバランス型(資産複合)などがあります。ちなみに、不動産投信のことをREITと呼びます。また独立した区分として、資金の置き場所としてリスクの低い運用をする公社債投信のことをMMF(マネー・マネジメント・ファンド)やMRF(マネー・リザーブド・ファンド)と呼んだり、証券取引所に上場しているものをETFと呼んだりします。日経平均株価など株価指数に連動した動きをするインデックス型もあります。
▼投資信託の様々な分類
税法・投信法の分類 | 購入タイミング | 解約タイミング | 運用対象地域 | 運用対象資産 | 独立区分 | 補足 |
公社債投資信託 | 単位型 | オープンエンド型 | 国内 | 株式 | MMF | インデックス型 |
株式投資信託 | 追加型 | クローズドエンド型 | 海外 | 債券 | MRF | 特殊型 |
内外 | 不動産(REIT) | ETF | ||||
その他資産 | ||||||
資産複合 |
あるテーマをもって運用する投資信託などもあります。最近では、ESG(環境・社会・企業統治)に関連した銘柄を組み入れた投資信託の新規設定が増えています。
■投資信託の仕組み
投資信託の運用には、「販売会社」、「運用会社(アセットマネジメント)」、「受託銀行(信託銀行)」が必要です。3機関がそれぞれ役割を分担して運用しています。
販売会社は「小売店」、運用会社は「工場」「メーカー(製造会社)」、受託銀行(信託銀行)は「倉庫」と考えると分かりやすいと思います。
出所:投資信託協会
投資信託は、一日1回、基準価額が公表されます。この基準価額で、投資家の投資信託購入価格や売却価格が決まります。ただ、その日の基準価額の公表は、投資家からの投資信託の取引の申し込みを締め切った後になります。一般的に投資信託の取引申し込みは原則15時までとされており、その日の基準価額の公表は15時以降になります。投資家は当日の基準価額が分からない状況で投資信託の取引を行います。これを「ブラインド方式」と呼びます。
例えば、前営業日の基準価額で売買できるとなると、当日の相場動向をみて売買できてしまい、投資家の間で不平等が生じてしまいます。当日相場が上昇していた場合、前日の基準日で購入できれば、必ず得をしてしまいます。投資家の間に不公平が生じないように投資信託の取引は、「ブラインド方式」となっています。
■投資信託のメリット・デメリット
投資信託には多くのメリットがあります。一つずつ確認してみましょう。
少ない投資資金から始められる
個別の株式や債券の売買にはある程度まとまった資金が必要ですが、投資信託は100円程度の少ない資金から投資を始められます。自分の都合が良い金額から始められるので、負担が少なく続けやすいです。
初心者でも始めやすい
投資信託は、専門家に運用してもらえるので、初心者でも始めやすいです。個人で購入しにくい海外の株式などにも投資ができるのは魅力です。
分散投資でリスクを抑えられる
投資では分散投資が大切になります。株式への投資は、購入単価が100株以上でまとまった資金が必要です。そのため、個人投資家が多くの銘柄を購入するのは中々大変です。一方、投資信託であれば少額から購入でき、投資信託は、もともと複数の銘柄が組み入れられている商品なので分散投資が可能になり、リスクを抑えることができます。株式と債券のバランス型などもあるので分散投資になります。基準価額が一日1回、公表されており、透明性があります。
一方、投資信託にはデメリットもあります。デメリットも見てみましょう。
手数料がかかる
一番のデメリットは通常の株式取引などより手数料がかかることです。購入時には販売手数料がかかります。また、保有している間は、信託報酬(運用管理費)がかかります。解約する際に信託財産留保額が徴収されます。信託財産留保額は、他の投資家に迷惑がかからないようにするための費用です。解約した投資家への資金返却に伴い、投資信託の中の資産を売却しなければならず、その手数料を解約者に負担してもらう仕組みです。手数料は、投資信託によって異なります。販売手数料や信託財産留保額などがかからない投資信託もあります。
元本割れのリスクがある
投資信託は、元本保証ではありません。運用の成果が出ずに元本割れする場合があります。プロの運用であっても、損が出る場合がありますので注意が必要です。海外の資産を組み入れた投資信託の場合は、組み入れ資産の値動きだけでなく、為替変動のリスクがあります。
■投資信託の始め方――NISAやiDeCoで購入可能
投資信託は、証券会社や銀行など金融機関を通じて購入することができます。通常の株式や債券の購入するための口座から取引することができます。また、少額投資非課税制度(NISA)や、つみたてNISA、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)などの投資制度を使って投資信託を購入することもできます。その場合、どの制度を使うかを決め証券会社などでその制度用の口座開設が必要です。
口座開設が終わったら、投資信託を選びます。株式と債券などを組み入れたバランス型などを選ぶとより分散投資になります。日経平均株価など株価指数に連動するインデックス型は、基準価格の推移が指数に連動するので分かりやすいです。S&P500種株価指数など海外の株価指数に連動している投資信託などもあり海外投資をしたい人にはお薦めです。投資信託の商品には様々な種類があるので、購入商品に悩む場合は口座開設した銀行や証券会社に相談してみるのも良いでしょう。投資金額を口座に入金し投資信託を購入したら運用開始です。
つみたてNISAやiDeCoで毎月決まったタイミングで一定額を自動的に投資するようにすれば、毎回購入する手間がなく、購入のタイミングに悩むこともなく便利です。
■まとめ
投資信託は少額から投資ができ、分散投資ができるメリットがあります。また、自分では投資が難しい海外への投資ができる点も魅力です。プロが運用してくれる投資信託を活用してみましょう。
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