【QUICK Money World 辰巳 華世】
NISA制度のおさらい
新NISA(少額投資非課税制度)とは、個人の資産形成を支援する非課税投資制度です。「新」と付くので「旧」NISA制度もあります。2024年1月より新NISAが始まり今年で2年目になります。新NISAは旧NISAから内容が大幅に拡充され、より使いやすく、長期的な資産形成に適したものになりました。
新NISAの主な変更点と改善点のポイントは3つです。
新NISAでは、非課税保有期間が無期限になったり、年間投資枠と非課税保有限度額が大幅に拡大されてことで、より柔軟に長期的な視点で資産形成ができるようになりました。
新NISA制度についてはこちらの記事でも紹介しています。
新NISAで何が変わる? 現行制度との違い、メリットや注意点を分かりやすく解説
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2年目NISAで注意するべきポイントは?
新NISA制度で注意するべきポイントを確認しましょう。
<主なポイント>
年間投資枠の繰り越しはできず、毎年リセットされる!
新NISA制度では、前年使い切れなかった投資枠を翌年に持ち越すことができません。毎年リセットされるということを覚えておきましょう。新NISAでは、年間投資枠が定められています。つみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円、合計で年間360万円まで投資できます。2024年に使い切れなかった投資枠の残りを、2025年に繰り越すことはできません。その年の投資枠はその年で使い切るか、諦めるかという選択になります。
非課税保有限度額の復活は翌年以降
新NISAでは、非課税で保有できる限度額として1800万円(うち、つみたて投資枠の上限は1200万円)が設定されています。この枠内で何度でも売買が可能です。商品を売却することで、売却した商品の取得価額(簿価)分だけ非課税保有限度額が復活しますが、この復活は売却した年の翌年以降となります。例えば、2025年に商品を売却した場合、その売却によって空いた枠が復活するのは2026年以降です。売買のタイミングや、限度額の管理には注意が必要です。
金融機関の変更は年1回、手続き期間に注意
NISA口座の変更をしたい場合は注意が必要です。NISA口座を開設している金融機関は、年に1回変更することができますが、変更にはいくつかの条件があります。まず、その年に既にNISA口座で買い付けがあった場合は変更できません。また、まだ一度も取引がない場合でも、9月30日までに手続きを完了する必要があります。翌年分の金融機関変更は10月1日から受付が始まります。
新NISA1年目はどうだった?新NISA2年目の戦略は?
24年に新NISAが始まり、新しくNISAを始める人が増えています。日本証券業協会が11月に発表した証券会社10社(大手5社とネット5社)による24年1月から10月までの新NISAの累計口座開設件数は前年同期比1.7倍の317万件と急増しています。成長投資枠での買付額(累計)は、同4.2倍の8兆円、つみたて投資枠での買付額は同3.1倍の3兆円に増えています。
同期間のNISA買付額のうち72%が成長投資枠、28%がつみたて投資枠です。成長投資枠では株式(ETF=上場投資信託、REIT=不動産投資信託を含む)が58%、投資信託への投資が42%となり、投資家のニーズに合わせて柔軟に活用されていることが分かります。成長投資枠の株式への買付額のうち93%が国内株式でした。成長投資枠とつみたて投資枠のNISA全体で見ると、国内株が39%、外国株が3%、投資信託が58%になります。
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新NISAを利用している人は自分の24年のNISAでの投資を振り返り、2年目の戦略を練ってみると良いでしょう。大きく分けて3つの分類で振り返ってみるとわかりやすいです。
その1 年間投資額の振り返り
自分の年間投資額が適切だったか振り返ってみましょう。ポイントは、生活に無理のない範囲で投資ができたかどうかです。また、NISAの年間投資枠に余裕がある場合、自分の生活を振り返り投資額を増やせるか検討してみましょう。NISAは商品を売却することができるので、できるだけ多くの金額をNISAで運用し、お金が必要になったら売却するという使い方もできます。ただし、運用商品は元本保証されていません。売却のタイミングで損が出る可能性もあることは理解する必要があります。
投資した商品の値動きが許容できたかどうかも確認しましょう。1年の間でマーケットは上下に動きます。24年8月には米国景気不安や為替相場の急速な変動で世界的に株式相場が暴落する場面がありました。この先も予測できない出来事を発端にいつ相場が急落するかは分かりません。そういった相場の変動に耐えられる範囲で投資をすることも大切です。
その2 投資した商品の振り返り
投資した金融商品が適切だったか振り返りましょう。自分が買い付けた株式や投資信託の運用成績を確認してみましょう。また、自分の投資額のうち、株式、投資信託にどれくらい、国内・海外でどれくらいの割合の投資になっているか確認してみましょう。
24年の資金流入上位の投資信託では、米国株や全世界株など海外株の投資信託が人気を集めました。自分の投資信託の内訳が米国株に偏りすぎていないかなど確認してみると良いでしょう。
例えば、「オルカン」と呼ばれる三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」はとても人気を集めました。オルカンは、全世界の株式に分散投資ができます。ただ、オルカンのベンチマークであるACWIの国・地域別構成比率を見ると約6割は米国株となっています。オルカンと、同じく人気のあるeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の両方を買った場合、自分の資産配分の中で米国株の比率が思った以上に高くなっている可能性があります。自分の資産の中であまりに米国株比率が高いとなれば、一部見直しをするということも必要かもしれません。
その3 買付タイミングを振り返る
1年の投資枠のうち、いつ買付をするかを考えることも大切です。つみたて投資の場合、毎月一定額を一定のタイミングで買い付ける設定をすることができます。一方で、年初や、自分なりの相場観に基づくタイミングで、一括で買い付ける方法もあります。これはどちらが良いとも悪いとも言い切れません。それぞれにメリット、デメリットがあります。相場の動きを気にせず自動的に買い付けた方が楽だと思えば、自動設定をするのもありですし、自分のタイミングで買いたい場合は一括で買うのも良いでしょう。
新NISA1年目を振り返り、うまくいった人も今一つだった人もいることでしょう。一つ言えることはNISAは中長期的な視点で運用するのに役立つ制度です。1年目だけの結果に振り回されることなく、中長期的な視点で投資を継続することが大切です。
まとめ
新NISAとは、24年にスタートした個人の資産形成を支援する非課税投資制度です。非課税保有期間の無期限化や年間投資枠の拡大など投資家にとって利用しやすい制度となっています。新NISA2年目を迎え、1年目を振り返り今年はどうするか考えて投資を継続しましょう。
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