(初回公開日2021年4月30日17:00)
【QUICK Money World 辰巳 華世】2030年に向けたSDGs(持続可能な開発目標)への注目が高まるなか、 世界は脱炭素社会への動きを加速させています。株式市場でも二酸化炭素の排出量が少ない電気自動車(EV)関連銘柄に熱い視線が注がれています。今回はテーマ株として注目が高まるEV関連銘柄について解説します。
電気自動車(EV)とは?
電気自動車(Electric Vehicle)とは、リチウムイオン電池などに蓄えた電力によって走行する自動車のことです。エンジンがなく、ガソリンも消費しないため、環境に優しいエコな車として世界中で普及が進んでいます。脱炭素社会の潮流が世界的に加速する中、EVへの注目度はますます高まっています。
日本でも政府が2035年までに通常のガソリン車の新車販売をゼロにする目標を立ています。東京都や大阪府など各都道府県でも2030年を目処に新車販売をハイブリッド車(HV)やEVなどの電動車に切り替える方針を打ち出しています。EV購入時の補助金やエコカー減税の制度、充電スポットの普及の動きも、EV市場の拡大を後押ししています。
EVは、2009年に世界初の量産型EVとして三菱自動車の「アイ・ミーブ」が発売され、2010年には日産自動車(7201)の「リーフ」が発売されました。その頃に比べ、最近発売されるEV車は「第2世代EV」と呼ばれ、航続可能な距離(燃料を最大積載量まで積んで移動できる最大距離)を伸ばすなど利便性が高まっています。日産の「リーフ」は約10年で航続距離を2倍以上に増やしています。また、次世代EVには、電力による走行という自動車技術だけでなく、自動運転機能やソフトウェア自動アップデート機能などのIT(情報技術)やデジタル化も備えることも求められるようになっています。
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電気自動車(EV)関連のテーマとは?
EVの関連銘柄は車メーカー、電子部品開発、電池関連開発など多岐に渡ります。EVを作るためには、「車体」、「バッテリー・電池」、「充電器」、「モーター」などの部品が必要になります。EV関連の技術は、新技術が多く、世界中の企業が新しい技術の開発にしのぎを削っています。またエンジン開発技術が重要だったガソリン車に比べると、電池やモーターといった部品を組み合わせてつくるEVは参入障壁が低いと言われています。
電池はEVにとって基幹部品です。成長著しいEV向けの電池産業は競争が激化しており、中でも中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国のLGエネルギーソリューションなど中韓メーカーは大型投資で生産能力を急拡大しています。日本でもパナソニックホールディングス(6752)が米テスラやトヨタ自動車(7203)などに車載用リチウムイオン電池を供給しています。パナソニックHDではこの夏、米国にEV用の電池工場を設けると発表しました。建設費は約5500億円と車載電池向けで過去最高の投資をします。
EV向け電池を巡る投資競争は激しさを増しています。米テスラやトヨタなど自動車メーカーもリチウムイオン電池の内製化を始めています。テスラはこの春米国で電池の自社生産を始めています。トヨタも21年12月にグループの豊田通商(8015)と米ノースカロライナ州に電池工場を設立すると発表しました。
電池関連では、次世代EV向けに現在主流のリチウムイオン電池の電解液の代わりに固体の電解質を使う全固体電池やワイヤレス充電設備などが注目されています。バッテリー能力の向上のための開発が業界各社で進められています。EVの普及と発展のために新技術は求められており、この先も伸びしろがある分野といえます。
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電気自動車(EV)関連銘柄が注目される理由
世界的な脱炭素の流れの中、EVへの期待は高まっています。この流れを受け、米国の電気自動車メーカーであるテスラ株は2020年を通して物色が集中しました。テスラの時価総額はトヨタ自動車を超え、株価は2019年末比で約8倍に高騰するなど注目を集めました。2021年に入ってもテスラ株の勢いは続き、10月には時価総額が1兆ドルの大台を突破しました。
2022年に入りテスラの株価は踊り場を迎えています。ロシアのウクライナ侵攻以降、軟調に推移する世界の株式市場に加え、新型コロナウイルス感染症拡大による中国のロックダウン(都市封鎖)の影響などで当初の計画よりEV販売が減速しています。ただ、2022年後半には、米南部などで新工場が本格稼働することが見込まれており挽回が期待されています。テスラ株に投資している日本の個人投資家も少なくなく、人気の投資信託の組み入れ上位に顔を出すことも多いです。引き続きテスラ株への注目は高まっています。
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<テスラの株価推移:直近10年で100倍以上となった>
関連銘柄への注目度も高く、充電所を運営するチャージポイント・ホールディングスや、EV充電設備を手掛けるブリンク・チャージングといった銘柄も、2020年に上昇が目立ちました。
また、今後の市場拡大が期待されるため、EVに参入する企業が増えています。ガソリン車に比べると部品点数が少なく参入障壁は低いとされており、新規参入や異業種からの進出が相次いでいます。最近では米アップルがEV市場への参入を目指し複数の車メーカーと提携交渉を始めたことが明らかになりました。中国スマートフォン大手の小米(シャオミ)もEV事業への参入を検討していると発表しました。
国内では、ソニーグループ(6758)がEVに本格参入することを発表し、2022年3月にはホンダ(7267)との提携も発表しました。2025年に最初のモデルの販売を始めると報じられています。
日本株を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。世界的なインフレ、FRBの金融引き締めと米金利の上昇、ウクライナ問題やその他の地政学リスク。これらの影響を受ける日本企業の業績。国内では政治の動向も見逃せません。国内外に横たわる多くの売買材料はどう消化すべきなのか。運用の巧拙が分かれやすい状況で投資判断も迷いがちではないでしょうか。 QUICK Money Worldでは日々のマーケットの変化を専門記者・ライターが伝えています。以下のリンク先では日本株の投資戦略をまとめた「日本株ストラテジー」の記事を一覧にしています。マーケット情報の収集と知見の獲得にぜひご活用ください(一部は会員限定コンテンツとなっています) |
電気自動車(EV)の注目銘柄を紹介、本命は?
EVに関連する企業はたくさんあります。自動車メーカーの動向は気になります。トヨタ自動車(7203)は、2022年を目処に米国でもEVを2車種発売することを発表しています。ホンダ(7267)は、研究開発など資源をエンジンからEV分野に集中させるために2021年シーズンを最後に自動車レース最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)からの撤退を決めています。また、自動車メーカー以外からの本格的なEV進出として出光興産(5019)が超小型EVの事業に参入することが発表されました。
電池業界では、次世代EVに向け全固体リチウムイオン電池が期待されています。また、全固体電池は電解液の部分を固体材料に変えることで、発火リスクの解消や蓄電能力が高くなる特性があります。トヨタが2020年代前半に同電池搭載のEVを販売する方針で、三井金属(5706)なども関連素材の生産準備に動いています。村田製作所(6981)やTDK(6762)なども同分野で注目されています。
EV関連銘柄では半導体業界にも注目が集まっています。各社がEVの中核部品で電力を動力に効率的に変換する装置である「パワー半導体」の増産に踏み切っています。東芝(6502)は2023年度までに約800億円をかけ、生産能力を3割増やします。富士電機(6504)も23年度までに国内外で1200億円を投資。ローム(6963)は、今後5年で600億円を投じ、生産能力を5倍に引き上げ世界でのシェアを3割に引き上げる方針です。
<青字リンクを押して、各テーマ株の一覧を確認しよう!>
リチウムイオン電池関連 | パナソニック(6752) |
全固体電池関連 | トヨタ(7203)、三井金属(5706)、村田製作所(6981)、TDK(6762) |
パワー半導体関連 | 東芝(6502)、富士電機(6504)、ローム(6963) |
自動運転関連 | ホンダ、デンソー(6902)、京セラ(6971)、ゼンリン(9474)、アイサンテクノロジー(4667) |
電気自動車関連 | トヨタ、ソニーグループ、ホンダ、日産自(7201)、出光興産(5019)、テスラ |
EV関連では、個別銘柄だけでなく投資信託もあります。自分で個別銘柄の選別することが難しいようであれば、EV関連の投資信託を購入するのも一つの方法になります。
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まとめ
世界各国が脱炭素を成長戦略に掲げていることを背景に、EVへの注目は一段と高まっています。EV関連銘柄は多岐にわたり、今後、新規参入する企業もありそうです。EV関連のニュースをチェックし、投資をしてみましょう。
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