5月20日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
人気の高いバンクシー
国内作家68名、海外作家57名による作品がセールにかけられ、その内訳は、絵画作品67点、版画作品(写真含む)149点、その他、陶芸やブロンズなどによる立体作品18点、合計234点となっている。出来高は、落札総額1億5935万5000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は80.7%だった。
最高額での落札となったのは、花を投げる暴徒を描いたバンクシーの作品LOT.145《Love is in the Air》(46.8×67.0㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格1000~1500万円のところ、1800万円で落札された。本作は、パレスチナのベツレヘムにある建物に描かれたステンシル作品を版画にしたもので、バンクシーを代表する作品の1つである。
次いで、高額落札となったのもバンクシーの作品で、爆弾を抱きしめる少女が描かれたLOT.023《Bomb Love(Bomb Hugger)》(66.8×45.8㎝、シルクスクリーン)は、落札予想価格350~450万円のところ、落札予想価格上限の2.4倍となる1080万円での落札となった。
バンクシーの作品は他にも、防弾チョッキを着た子どもたちが笑顔でかけてくる様子を描いたLOT.018 《Jack and Jill》(45.0×65.0㎝、シルクスクリーン)が、落札予想価格350~450万円のところ820万円で落札されるなど、活気ある競りでの高額落札が目立ち、バンクシーの人気の高さを強く印象付けるセールとなった。
李禹煥、予想と落札価格がともに高騰
今回は、韓国で生まれ日本で活動する現代美術家、李禹煥(リ・ウーファン,1936-)にスポットを当てる。李禹煥は、1960年代後半に起こった芸術運動「もの派」の中心となり活躍した作家の一人で、日本国内はもとより海外からも高い評価を得ている。
本セールでは、6点の版画作品が出品された。5点が落札予想価格上限越えで落札され、1点は落札予想価格下限と同額での落札となった。中でも、好調な競りをみせたLOT.028~030《ある黙示録より》シリーズをピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注*で読み解く。
《ある黙示録より》シリーズは、エディション数50部のリトグラフによる8点1組の版画集で、太い刷毛を使いワンストロークで描かれたようなモノクロの線や点と、描かないことによって生み出された余白が表現されている。落札予想価格はいずれも1点あたり60~80万円だった。LOT.030 《ある黙示録より 3》が100万円、LOT.028 《ある黙示録より 8》とLOT.029《ある黙示録より 7》が95万円で落札された。いずれも落札予想価格上限を上回る価格で落札された。
ACFパフォーマンス指標をみると2016年と2017年では落札予想価格下限近く20万円前後で落札されている。2019年になると落札予想価格は若干下降をみせるが、落札価格平均は落札予想価格上限平均を上回り、2017年よりも落札価格平均が上昇していることがわかる。1年空けて2021年には、落札予想価格も落札価格平均も高騰している。今回のセールでも落札価格は95~100万円となっており、グラフと同等の価格となっている。
高騰をみせた現在の落札価格ベースで今後も推移することになるのか、これからも動向を注視していきたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2018年と2020年は国内で同作品の出品がなかった為、該当年を除いた2016~2021年4月までの4年間のデータからグラフ化している。
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※次回のマレットオークション開催予定は10月上旬