7月22日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
現代美術の絵画を中心に、国内作家55名、海外作家47名による作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額 1億8105万0000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は76.7%だった。
落札予想価格の3.96倍
落札予想価格を大幅に上回る落札で盛り上がりを見せたのは、細川真希の作品LOT.225《武者修行饂飩》(116.7×91.0㎝、キャンバス・アクリル)。落札予想価格70~100万円のところ、落札予想価格上限の4.2倍となる420万円で落札された。もう1点、LOT.223《相対建設の巻》(60.6×91.0㎝、キャンバス・アクリル)も競り上がり、落札予想価格上限の3.96倍で落札されている。細川は、最近のオークションで急激な人気の高まりを見せており、今後も活躍が期待される若手作家でのひとりである。
最高額での落札となったのは、今回のオークションカタログで表紙を飾った李禹煥のオリジナル作品LOT.103《Untitled》(57.0×76.5㎝、紙・グワッシュ)で、落札予想価格500~700万円のところ、950万円で落札された。他にも、紙・黒鉛作品1点、版画作品8点の出品があったが、全ての作品が落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えで落札されている。10点の落札総額は、2073万円で、本セール内の落札総額ランキングで2位を記録している。
次いで、高額落札となったのは奈良美智のオリジナル作品LOT.111《Look》(13.5×48.4㎝、封筒・色鉛筆・インク)は、落札予想価格500~700万円のところ、820万円で落札された。今回のセールでは、出品点数が3点だったにも関わらず、落札総額ランキングは4位となっている。国際的にも活躍する奈良の作品は常に注目度が高く、他のオークションにおいても高額落札が目立つ。
3年連続、落札価格が予想上限超え
今回は、ドイツ・ベルリンを拠点に国際的に活動している現代美術家、塩田千春(しおた・ちはる,1972-)にスポットを当てる。空間に黒や赤の細い毛糸を張り巡らしたインスタレーションが代表的な作品として知られている。2019年に森美術館(東京・六本木)で開催された大規模な個展「塩田千春展:魂がふるえる」では、66万人を超える来場者数を記録し、話題となった作家である。
本セールでは、水彩作品1点と版画作品6点が出品された。4点が落札予想価格上限越えで落札され、2点は落札予想価格下限、落札予想価格上限と同額での落札されている。
中でも、落札予想価格20~30万円のところ、34万円で落札されたLOT.141《Between two hands》(シート30×40㎝、リトグラフ、Ed.40)をピックアップし、動向を読み解く。
同サイズ、同技法を抽出したACFパフォーマンス指標注*をみると2019年から2021年まで落札価格上限を超えて落札されている。 2019年の落札データは、海外オークションの出品データで、落札予想価格平均は25万円前後となっている。2020年より国内オークションでの出品がみられるが、落札予想価格平均は10~15万円と低目の設定であった。しかしながら、落札予想価格上限平均の2倍以上の価格で落札される好結果を残している。2021年には、更なる上昇を見せ、右肩上がりの推移となり、時価指数も同様に上昇している。
現在、先に紹介した個展「塩田千春展:魂がふるえる」が台北市美術館(台湾)で開催されている。この後、アジア、太平洋地域を回る予定となっている。既にグローバルで活躍する作家がどこまでの上昇をみせるのか、推移を見守りたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、国内外主要オークションの2019年から2021年9月までのデータからグラフ化している。
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※次回のマレットオークション開催予定は10月7日