外国為替市場の関係者は、米国が2022年後半に利上げするとみていた。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した11月の月次調査<外為>で、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切る時期を予想してもらったところ「22年7~9月」と「10~12月」との回答が全体の65%だった。主要国で利上げが広がると新興国からの資金流出が懸念される。売られやすくなる通貨の予想では、トルコリラとブラジルレアルが「2弱」となった。
(注)四捨五入の関係で合計は100%にならない
FRBは2~3日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)の開始を決めた。現在1200億ドル購入している米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の毎月の買い入れ額を、11月から150億ドルずつ減らしていく。22年6月には購入額はゼロとなる見込みだ。
テーパリングの次は、金融政策の正常化を目指した利上げが焦点となる。FRBが利上げを始める時期は、22年7~9月との見方が28%、10~12月が37%だった。合計で65%となり、10月の調査より15ポイントほど増えた。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は「FOMCを受けて、利上げ時期はテーパリングが完了した7月以降になると予想する人が増えたのではないか」と話す。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「FRBのパウエル議長は来年には完全雇用を達成すると話しており、来年の利上げはコンセンサスになりつつある。今回のFOMCは市場予想を追認する内容だった」との見方だ。
米国以外の国・地域でも金融政策の正常化を進める動きがみられる。世界的な金融緩和に加え、原油などの資源高でインフレへの警戒感が高まっているためだ。10月に政策金利を引き上げたニュージーランドに続いて利上げに動く国を聞いたところ、英国や米国、カナダ、オーストラリアとの予想が多かった。
(注)四捨五入の関係で合計は100%にならない
豪州準備銀行(RBA)も3年債利回りの誘導目標(0.1%)を撤廃した。RBAが利上げする時期は「22年4~6月」「7~9月」「10~12月」との予想がそれぞれ約20%で、見方が分かれた。RBAは早期の利上げに消極的な姿勢をみせており、外為どっとコムの神田氏は「市場予想は前のめり気味」と指摘する。
主要国で利上げが広がれば、新興国からは資金が流出しやすくなる。売られやすくなる新興国通貨を3つまで選んでもらったところ、トルコリラとの予想が最も多かった。トルコ中央銀行はインフレが進む中でも政策金利を引き下げ、リラ安を招いている。足元では1ドル=10リラ前後の最安値圏で推移する。ブラジルレアルや南アフリカランドが売られるとの見方も多かった。政情不安から財政の持続性に懸念がくすぶっているようだ。
みずほ銀行の唐鎌氏は「アジアの経常黒字国は通貨が崩れにくい傾向がある」という。コロナ禍によるインバウンド需要の減少などでタイは経常赤字になりつつあるが、それでもバーツが売られるとの見方は少ない。
調査は11月8~10日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者80人が回答した。