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米国株取引入門 米投資の魅力やルールなど分かりやすく解説【点検・資産配分】

【QUICK Money World 荒木 朋】世界一の経済大国である米国。ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)といった株式市場も世界最大の市場規模を誇り、アップルマイクロソフトネットフリックステスラなど世界中の人々が知っている一流企業の多くが米国株式市場に上場しています。

そんな魅力的な米国株を日本の証券会社を経由して購入することができます。米国株の特徴や魅力、取引の仕方やルール、税金などについて詳しく見ていきたいと思います。

日本株に比べて驚異の上昇率を誇る米国株

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン型」が出現するまで米国株は強い上昇基調にありました。米国の3大株価指数であるダウ工業株30種平均、ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数は2021年にそろって過去最高値を更新しました。足元では同国の金融政策に対する警戒感も加わって値を下げましたが、米国株の魅力が薄れたとの指摘はいまのところ聞かれません。対照的に日経平均株価は3万円の大台を回復する場面はあるものの、1989年12月29日に付けた史上最高値(3万8915円)にはまだまだ及びません。

過去30年の日経平均と米国株(ダウ平均)を比較すると、同期間の上昇率が日経平均は約1.75倍にとどまっているのに対し、米国株(ダウ平均)は約11倍に跳ね上がり、株価上昇の勢いの差は一目瞭然です。

人口増加などを背景とした高い経済成長率や、革新的な技術や商品、サービスを生み出すイノベーション創出力の高さなどを源泉とした各企業の利益成長が、長期間にわたる米国株の上昇を後押ししているのです。

過去30年の日米株価の推移(1992=100として指数化)

ダウ平均と日経平均

証券会社の外国株式取引口座を開設し米国株に投資しよう

それでは、米国株に投資するにはどうすればいいか見ていきましょう。

米国株は主要なネット証券を始めとした日本の証券会社を経由して売買することができます。まずは証券会社の証券総合取引口座を開設し、その後、同口座にひもづく「外国株式取引口座」を開設することで第一ステップは完了です。

次に証券総合取引口座にある資金(日本円)を外国株式取引口座に移動します。その移動した資金(日本円)を米国株の取引通貨である米ドルに両替(外貨決済)することで、米国株の売買に向けた準備は完了です。なお、外貨決済のほか、外国株式取引口座にある日本円から直接、米国株を売買する「円貨決済」という方法もあります。

あとは日本の銘柄を取引するのと同様、ネット証券の場合は取引画面にて銘柄選択や購入株数などの必要項目を入力して売買発注するという流れになります。

外貨決済と円貨決済、メリット・デメリットは?

米国株取引の決済方法として、「外貨決済」と「円貨決済」の2つがあると述べましたが、どのような違いがあるか整理しておきます。

「外貨決済」は日本円を米ドルに両替してから米ドルで米国株を購入することで、「円貨決済」は日本円のまま米国株を購入することです。

日本から米国株を購入する場合、買付手数料と為替手数料がかかります。「外貨決済」は自分で日本円を米ドルに両替して取引する方法で、まとまった金額を両替しておけば、取引のたびに為替手数料が発生することはないため、コストを安く抑えられるメリットがあります。

また、株式売却の際は米ドルでそのまま受け取るという形になります。配当金についても米ドルで支払われるため、そのまま米ドルで受け取ることができます。その資金を再投資に回す時も為替手数料はかかりません。一方、両替の手間がかかる点や両替完了の時間がかかる可能性がある点がデメリットと言えます。

 

「円貨決済」は日本円のまま米国株を購入することで、自分で両替する手間が省けるとともに、すぐに米国株を購入できることがメリットです。ただ、注意したいのは、米国株はあくまでも米ドルで購入する必要があるという点です。表面上、日本円のまま米国株を購入するものの、両替自体は証券会社が代行する形で行っており、実際には取引のたびに為替手数料が発生するほか、手数料も代行する証券会社が指定するレートになるため外貨決済よりも取引レートが高い傾向にあると言われています。

また、円貨決済は株式売却時には米ドルを日本円に交換して受け取るため、この時にも両替の手数料がかかってしまいます。配当金についても同様です。売却して得た資金や配当金を再投資に回す場合も日本円から米ドルに再び両替する必要が出てくるため、円貨決済は為替手数料の面でデメリットがある点を理解しましょう。米株式取引に際して、各決済方法のメリット・デメリットをぜひ認識しておいて下さい。

米取引時間、昼休憩なしの「9時30分~16時」まで

次に米国株投資の特徴や取引時間などのルール、日本株の取引ルールの違いなどについて説明します。

米国株式市場の取引時間(立会時間)は9時30分~16時(日本時間23時30分~翌朝6時、サマータイム時は22時30分~翌朝5時)です。米国市場は日本と違って昼休みがありません。立会時間のほかに、立会時間前(現地時間8時~9時30分)の「プレ・マーケット」と立会時間後(同16時~20時)の「アフター・マーケット」の時間外取引もあります。この時間帯の取引については日本では一部証券会社が取り扱っています。

小額投資で世界の大企業の株主に、「ストップ高・ストップ安」の適用無し

単元株制度が設けられている日本株はほとんどの銘柄が100株単位で購入することになりますが、米国株は1株から購入できることが特徴の1つです。例えばトヨタ自動車を購入しようとすると、11月12日時点の株価は2078.5円で最低でも約21万円の資金が必要となります。一方、11月12日時点で時価総額世界首位のマイクロソフト(11月12日時点の終値336.72ドル)は日本円換算で3万4000円弱から購入が可能です。少額投資で世界の大企業の株主になることができます。

また、米国では年間4回の配当を実施する企業が多くあります。しかも、連続配当・連続増配など株主還元に積極的に取り組む企業が多いのも特徴です。例えば、日用品大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、1890年の創業以来131年間、毎年配当を実施しており、さらに65年連続(2021年時点)で増配しています。配当の実施時期が企業によって分散されている点も魅力の一つでしょう。配当時期が異なる企業に分散投資すれば、定期的な配当収入も見込めるかもしれません。

一方、日本株との大きな違いの一つとして、株価の急速な変動を防ぐため取引所が制限している1日の騰落幅値幅制限」が米国株には適用されていない点が挙げられます。値幅制限の上限まで上がる「ストップ高」や同下限まで下がる「ストップ安」のルールがないため、決算発表や突発的な材料・ニュースにより1日で株価が大きく変動する場合があります。米国株式市場は時差の関係で日本の深夜の時間帯に取引が行われるため、突然の株価変動に備え、逆指値注文を活用するなどの対応を考えることも重要になりそうです。

 

米株売却時や配当金にかかる税金は?

米国株投資にかかる税金についても押さえておきましょう。株式投資にかかる税金は「売却益」と「配当金」の2つです。

「売却益」に対する税金については、日本の個別銘柄を売却した場合と同じで一律20.315%の税金がかかります。

「配当金」に対する税金は、日本株の場合は株式の売却益と同様、一律20.315%の税金がかかります。一方、米国株の場合は米国における現地課税10%が差し引かれたうえで、その後、国内でさらに20.315%の税金がかかります。つまり二重課税となり、企業の配当金から計28.2835%引かれた金額が払い込まれることになります。ただ、米国の現地課税10%に関しては、外国税額控除を使って確定申告すれば全額もしくは一部取り戻すことが可能となっています。

※米国株取引の主なルール&ポイント

米雇用統計やFRB金融政策を注視、為替変動リスクも

株価を動かす最大の要因は企業業績で、これは米国企業も同じです。そのため四半期ごとに発表される決算内容や、企業によって公表される次の四半期の業績見通し、業績に関する経営幹部の発言などを把握することがまずは重要になります。また、米国は国内総生産(GDP)の約7割を個人消費が占めるため、個人消費に関連する経済指標も見逃せません。

とりわけ、原則、毎月第1金曜日に公表される米雇用統計は世界中の投資家が注目する経済指標です。雇用統計の結果は米国の中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)の金融政策にも大きな影響を及ぼします。FRBは雇用の最大化と物価の安定を目標としており、雇用の増加数や失業率、賃金上昇、インフレ率といった各種景気指標をもとに経済情勢を議論し、金融政策の方向性を決めるためです。

景気が良くなれば企業業績も好転するため、株価にはプラス要因に働きます。ただ、景気が過熱しすぎるようだとFRBが金融政策の引き締めに動く可能性があります。その場合、企業業績の先行きを慎重にみる投資家が多くなり、株価にはマイナス要因になることがあります。

日本から米国株に投資する際は、為替の変動リスクも考慮する必要があります。米経済指標の結果やFRBの金融政策の方向性を受けてドル円相場も大きく動く可能性があるからです。ドル円相場の価格変動により、自分が保有する米国の銘柄が上昇していても、為替次第で利益が変動することがあるのです。

まとめ

日本から米国株に投資する場合、決済方法や税金面の注意事項がいくつかあることを説明しました。また、保有銘柄の評価損益を左右する為替変動もリスク要因になり得ます。もっとも、過去30年の日米株価の推移をみても分かる通り米国株のパフォーマンスは非常に高く、米国株に投資する魅力は大きいと言えそうです。資産運用の手段の1つとして米国株投資を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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著者名

QUICK Money World 荒木 朋

1998年にQUICKに入社。2003年から11年間、日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)で記者職に就く。0609年にNQNニューヨーク支局に駐在。1820年はQUICKロンドン支店に赴任。08年のリーマンショック、20年のBrexitはいずれも現地で取材した。QUICK退社後、ボクシングトレーナーとして働く傍ら、21年から「QUICK Money World」に寄稿。


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