2021年度補正予算案が12月15日、衆議院を通過した。16日から参議院で実質審議に入った。成立すれば補正予算として過去最大となる。
岸田政権は過去最大規模となる55.7兆円の財政支出を決めた。12月のQUICK月次調査・株式で岸田政権の経済対策の株式市場への影響を聞いたところ、5割超が株式市場へは「ほぼ影響しない」とみていた。今回の経済対策は国内総生産(GDP)の押し上げ効果が5.6%程度と試算されているが「日本経済の問題点は需要の弱さにあり、政府が需要を代替しても非効率で生産性向上に寄与しない」(証券会社)との声が聞かれた。注目を集めた18歳以下の給付金も評価は高くなく「この施策では経済の底上げ効果はほとんど期待できない」(その他)という。
経済対策は「一時的に株価の上昇要因になるものの、長続きしない」との回答も4割弱あった。「新型コロナウイルスの変異株やオミクロン型の感染拡大状況によっては、景気は下振れしかねない」(証券会社)という。
経済対策のうち、有効な政策と考えるものを三つまで選んでもらったところ、「医療提供体制の確保等(ワクチン接種の促進、治療薬の確保など)」との回答が最も多かった。新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた支出規模は22.1兆円と全体の約4割を占めるが、支出額は7割が「妥当」とみている。次に「安全・安心を確保した社会経済活動の再開(GoToトラベル再開ほか)」「防災・減災、国土強靱化の推進」が続く。
株式市場参加者の敵対的買収の増加に対する評価も聞いた。21年は敵対的買収の件数が過去最多となるペースだが、この増加を81%は「総じて好ましい」と回答した。足元では、関西スーパーマーケットとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社(イズミヤ、阪急オアシス)との経営統合をめぐった裁判が決着した。最高裁は統合手続きの差し止めを求めるオーケーの主張を棄却している。オーケーは当初、関西スーパーの完全子会社化を目指していた。
敵対的買収の増加にともなって、新たに買収防衛策を導入する企業もある。買収防衛策の導入は「やむを得ないケースもある」と回答したのが全体の78%だった。3%は「(買収防衛策の導入は)積極的に認められるべき」と回答した。
調査は国内機関投資家の運用担当者など210人を対象に実施し、125人が回答した。調査期間は11月30~12月2日。