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企業開示情報とは? 「決算書」で有望銘柄を発掘!制度解説や通知・検索サービスの紹介も

(この記事は2022年1月14日に公開したものを再構成しました)

【QUICK Money World 荒木 朋】投資家は自らの投資判断に基づいて株式売買を行いますが、この投資判断に重要な役割を果たすのが各上場企業から公表される「企業開示情報」です。企業開示情報にはどんな種類があるのか?という基本的なことから、開示情報の中でも株価を決める最大の要因となる「決算書(企業業績)」の見方、企業業績が及ぼす株価への影響などについて詳しく見ていきたいと思います。

上場企業に義務付けられる「法定開示」と「適時開示」

上場企業には金融商品取引法などの法律に基づく「法定開示」と、証券取引所のルールに基づく「適時開示」の2つの情報開示が義務付けられています。

法定開示」は、企業の事業内容や財務状況を記載した「有価証券報告書(通称:有報)」や「四半期・半期報告書」、企業の経営者が内部統制について正しく機能しているかを評価し、その結果を記載した「内部統制報告書」といった書類を内閣総理大臣に提出するもので、金融庁が管理する電子開示システム「EDINET」などで閲覧することができます。

適時開示」は、株式の投資判断に重要な影響を与えうる企業の経営上の重要な情報・内部情報について、一般投資家に対して正確性に配慮しつつ速報性を重視して適時・適切に公表するものです。「タイムリー・ディスクロージャー」とも呼ばれ、この情報は会社のホームページのほか、東京証券取引所の適時開示情報伝達システム「TDnet」でも閲覧・入手が可能です。

法定開示、適時開示とは別に、「任意開示」というものもあります。任意開示とは、法令や取引所ルールに基づいた強制的な開示ではなく、企業が自らの判断で主体的に情報発信する開示をいいます。具体的には、決算の内容を詳しく説明した「決算説明資料」や、経営内容に関する総合的な情報を掲載した「アニュアルレポート(年次報告書)」などが挙げられます。

QUICK Money Worldでは、法定開示と適時開示に加えて、企業のプレスリリース情報などを網羅的に検索できるツールを用意していますので、ぜひご活用ください。

適時開示の種類

上場企業に義務付けられる開示情報のうち、「適時開示」で求められる情報には、大きく分けて「決定事実」、「発生事実」、「決算情報」があります。

「決定事実」は新株式の発行や自己株式の取得、株式分割、合併、業務提携・解消などがあります。「発生事実」は災害に起因する損害や訴訟の提起、大株主の異動などがあります。「決定事実」は企業自身が意思決定を行った情報で、「発生事実」は企業の意思決定によらず発生した情報です。そして、最後の「決算情報」は売上高や利益の額を集計した決算短信や業績予想の修正、配当予想の修正などがあります。

※上場会社に求められている主な適時開示情報

なお、適時開示制度の一環として、企業経営が株主をはじめとするステークホルダー(利害関係者)に対して適切に運営されているかをチェックする仕組み・体制であるコーポ―レートガバナンス(企業統治)の状況を記載した「コーポレートガバナンス報告書(CG報告書)」の提出も義務付けられています。

以上が適時開示の種類ですが、今回はとりわけ、「決算情報」について詳しく見ていきます。

「決算情報」は企業の通信簿、決算短信で経営成績を把握

「決算情報」のうち、最も基本となるもので重要なのが「決算短信」です。日本の上場企業は現在、3カ月ごとの四半期決算短信、1年間を通じた通期決算短信の公表が義務付けられています。なお、企業の負担軽減を目的として、法令の改正により2024年4月から四半期報告書が廃止され、決算短信(四半期決算短信)に一本化されることになりました。法定開示では今後、半期報告書に集約され、四半期(第1四半期、第3四半期)は決算短信のみの開示となります。

決算短信は、企業が稼いだ一定期間の売上高や利益といった経営成績をまとめた「企業の通信簿」といえるもので、投資家にとっては非常に重要な投資判断の材料になるのです。決算短信の発表時期は企業によって異なりますが、決算の締め日からおよそ1カ月後~1カ月半後に公表されます。

 

決算短信の中身を見ていきましょう。

決算短信は「サマリー」と「添付資料」の2部構成になっており、期間中の経営成績や財政状態、配当状況、業績予想、財務諸表などが記載されています。決算短信は全部で数十ページに及ぶことがありますが、大事な内容については決算短信冒頭の1~2ページ目に記載されるサマリーに詰まっており、まずはサマリーの内容を確認して、企業の業績の好不調、先行きの見通しなどについて大まかに理解しましょう。その後、経営成績の内容をさらに把握したい場合は3ページ目以降の添付資料に記載されている説明に目を通すといいでしょう。

決算短信の「サマリー」を見て企業の成長性を確認

決算短信のサマリー情報はおおむね以下の通りです。

①経営成績
 ②財政状態
 ③キャッシュフローの状況
 ④配当の状況
 ⑤業績予想

「経営成績」は四半期(累計)および通期の売上高や各段階の利益、1株当たり利益が記載されています。

【ある上場企業の経営成績】

※ある上場企業の経営成績

このうち、注目すべきは売上高や利益の横に記載されている前年同期比の増減です。この伸び率が大きいか小さいかで企業業績の成長力を確認することができます。ここで、例えば大幅な増収増益決算だった場合、どのような理由で好業績になったか気になるでしょう。その際は、添付資料に移り、同資料に記載されている「経営成績に関する説明」や、製造業などによっては記載がある受注高・受注残高などの「補足情報」を確認すれば、よりいっそう理解が深まります。

前年同期比の伸び率を確認する際、1年前の数字が特殊要因などで歪んでいなかったかなど注意するべき点もあります。今期の伸び率が急拡大していても突発的災害などの影響で前年の数字が急減した反動の可能性もありますし、反対に伸び率が小さかった場合や減少していても、何らかの特殊要因で前年の数字が大きかった可能性もあります。こうした点を考慮し、企業の成長力の持続性を把握する意味でも、過去3~5年程度の決算短信の内容を時系列で見て、成長トレンドを描いているかどうか確認することをお勧めします。

四半期決算短信については4~6月期の内容、次は4~9月期の内容というように、各四半期単独の数字ではなく、累計の数字が記載されます。ここでも前年同期の数字の特殊要因の有無を考慮する必要性が生じる場合もありますので、少々面倒ですが自分で計算するか、もしくは金融情報サイトなどのツールを活用して、四半期ごとの経営成績と前年同期比増減率を確認するといいでしょう。四半期ごとの成績を時系列で見ることで、前年同月比の増減率だけでなく、前の四半期比での増減率を確認することもできるため、短中期の成長性を把握することが可能になります。

 

「業績予想」で進捗率や成長力の勢いを確認

サマリーの後半部分に記載されるのが「業績予想」です。企業によっては業績予想の記載自体を見送ったり、次の四半期業績(累計)見通しを表記したりと、記載の仕方は様々な形がありますが、基本は通期の業績予想が表示されています。四半期決算が発表された際は、売上高や利益の結果と業績予想を比べ、現時点での進捗率(四半期業績結果÷通期業績予想×100)を見て、会社計画が順調に進んでいるかどうか確認できます。

業績予想の注記として、「直近に公表されている業績予想からの修正の有無」があります。事前の会社計画に対して変更がある場合、「有」と記載され、業績予想の数字は最新の数字が記載されています。詳しい内容については、添付資料の「業績予想などの将来予測情報に関する説明」のほか、決算短信とは別に「業績予想の修正に関するお知らせ」といった別の資料で開示しています。これで詳しい修正理由を把握することができますので、こちらも忘れず確認しましょう。

【ある上場企業の業績予想】

※ある上場企業の業績予想

ちなみに、業績予想の修正の開示基準は、当初公表していた予想数字を100%とした場合、

①売上高については110%以上、もしくは90%以下
 ②営業・経常・最終利益については130%以上、もしくは70%以下

になった場合、それが判明次第、直ちに開示するとのルールが定められています。

売上高については10%の振れ、利益は30%の振れが生じた場合にその開示が義務付けられるわけですが、四半期決算短信の発表と同時に公表したり、四半期決算発表の数日前に公表したりと、企業によって開示手法にバラツキがあります。自分が気になり、投資を考えている企業については、会社ホームページなどで過去の決算および業績予想の公表日時を調べるなどして、会社の発表の仕方やタイミングの「クセ」を把握しておくといいでしょう。

なお、QUICK Money Worldでは、適時開示情報サイトや企業のホームページを巡回せずとも、情報の発表後、自動でお手元にメールで公開情報をお届けする「企業情報お知らせサービス」を提供(有料会員限定サービス)しています。決算情報などの適時開示情報に加え、新製品やイベントなどのプレスリリースまで漏れなくタイムリーに受け取れる便利なサービスです。ぜひ、こちらのサービスもご利用ください。

※企業情報お知らせサービス

企業業績と株価の影響は?

株価の決定要因の一つは企業業績です。そのため、3カ月ごとに発表される決算短信およびその内容は、株価の変動要因となりうる大きなイベントです。企業業績の成長が続けば、その業績拡大に合わせて株価も上昇トレンドを形成する可能性が高くなります。

総合重機メーカー国内トップの三菱重工業の業績と株価の推移を例に見てみましょう。決算発表日とその後の株価の推移を表したチャートは以下の通りです。

2023年5月に発表した2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前期比9%増の4兆2027億円、本業のもうけを示す事業利益は21%増の1933億円でした。同時に公表した2024年3月期の業績見通しは、売上収益が前期比2%増の4兆3000億円、事業利益は55%増の3000億円と増収・大幅増益見通しを示しました。

その後の四半期ごとの業績は、2023年4~6月期の連結売上収益は前期比13%増の9839億円、事業利益は3.5倍の519億円と順調な結果となり、その後も、四半期ベースで増収増益が続きました。

2023年4~12月期時点の売上収益は前期比11%増の3兆2606億円、事業利益は82%増の1916億円となりました。原子力事業を含むエナジー部門や航空・防衛・宇宙部門など全部門の受注好調などを背景に、この時点で2024年3月期の売上収益見通しを従来の4兆3000億円から4兆4000億円への上方修正を発表しています。

株価は将来の業績拡大を先取りして動くもので、好業績への期待感から決算発表に近づく局面で上昇し、その後、利益確定売りなどから株価はやや調整する場面もありますが、先行きの業績拡大期待を支えに基本的に株価は上昇トレンドを形成していることが分かります。

2024年に入ってからは上昇トレンドが加速していますが、これは防衛予算の増額や原子力の積極活用など日本政府の方針転換を受け、同分野における日本を代表する主力企業の1つとして将来の収益拡大期待が一段と高まったことが主因とみられています。

まとめ

決算短信や業績予想の修正などの開示情報は誰もが同じタイミングで閲覧できる、一般投資家にとっても大変有用な情報です。株価の重要な決定要因である「決算情報」をしっかり読み込んで、ぜひ有望銘柄の発掘に役立ててみてはいかがでしょうか。

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著者名

QUICK Money World 荒木 朋

1998年にQUICKに入社。2003年から11年間、日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)で記者職に就く。0609年にNQNニューヨーク支局に駐在。1820年はQUICKロンドン支店に赴任。08年のリーマンショック、20年のBrexitはいずれも現地で取材した。QUICK退社後、ボクシングトレーナーとして働く傍ら、21年から「QUICK Money World」に寄稿。


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