【日経QUICKニュース(NQN)永松英一郎】ロシアの通貨ルーブルの急落が「ミセスワタナベ」と呼ばれる日本の個人投資家を直撃している。ロシアのウクライナ侵攻を受け、米欧日はロシアの銀行を国際決済網から排除し、中央銀行にも制裁を科す方向だ。中銀の介入が難しくなるとの見方からルーブルの先安観は強まっている。ただ、決済の難しさから外国為替証拠金(FX)取引では売買を停止する動きが広がっており、損切りできない投資家も相次いでいるようだ。
■売りたくても売れない
FX会社大手の外為どっとコムでは、顧客の円に対するルーブル買いの比率は9割を超えていた。「ルーブル・円」取引で総建玉に占めるルーブル買いの比率は25日時点で92.8%と、ロシアがウクライナに侵攻する前の18日時点(97.4%)から4.6ポイント下がった。2020年6月以来の低水準となったうえ、急落に見舞われた28日も買い持ちを減らす取引が相次ぎ、比率はさらに落ち込む公算が大きいというものの、FX投資家の間にはルーブルの買い持ちが浸透していた。
同社が提示する取引レートをみると、ロシアへの経済・金融制裁の威力は甚大だ。前週末のニューヨーク市場の取引終了時にあたる26日7時時点で1ルーブル=1.38円程度だったルーブルの対円相場は、週明け28日の取引が始まった直後の7時には1.1円を割り込んだ。その後は0.95円近辺まで下げ幅を拡大し、この間の下落率は31%を超えている。
異例の制裁にFX取引では投資家がルーブルを売りたくても売れない異例の事態も生じている。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに銀行間市場でルーブルの流動性が極端に低下し、安定的な取引レートを提供できなくなっているためだ。外為どっとコムは26日午前5時からルーブル・円の新規注文の受け付けを停止し、既存の決済取引についても「取引量が限られる不安定な状況が続いている」(担当者)。
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■強制的に損失確定
売買停止はFX各社に広がっている。「みんなのFX」などを提供するトレイダーズ証券は26日早朝から新規注文の受け付けを停止。28日にはSBI FXトレードがルーブル・円のレート配信と全注文の受注を停止していると発表した。「場合によっては現在保有している顧客のルーブル・円のポジションを当社で決済せざるを得ない可能性がある」(トレイダーズ証券)といい、投資家が強制的に損失を確定させられる事態も想定される。
米欧日などは28日までにロシアの銀行を国際決済網である「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から締め出すなどの制裁方針を示した。ロシア中銀への制裁では米連邦準備理事会(FRB)に保有するドル資産の事実上凍結が有力視され、通貨安定を保つための外貨準備にまで及びかねない。ルーブルの信認は既に低下しており「下落基調が続くのは間違いない」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏)との見方が多い。
FX取引でルーブルの買い持ちが主流となってきたのは、日本とロシアの間での短期金利の差から生まれる収益「スワップポイント」が稼げることが要因だ。資源価格の高騰を受け、資源国通貨であるルーブルが中長期で上昇するとの期待もあった。だが、そうした楽観的なシナリオはロシアのウクライナ侵攻によって瓦解している。ルーブルの今後の取引環境は極めて不透明で、昨年にトルコリラの急落でも煮え湯を飲まされた個人投資家の苦境は続きそうだ。
僕は普通にTRY(トルコリラ)をショートしています。FXは儲けてなんぼの世界なので臨機応変、状況判断が重要でスワップポイントはどうでもいいですね。