【QUICK Money World 辰巳 華世】資産運用をする上でまず考えなければならないのが「リスク」についてです。資産運用にリスクは必ずあります。今回は、資産運用におけるリスクとリターンの考え方、リスクの種類とは、ローリスクな資産運用方法とは、ローリスクでハイリターンな資産運用方法とは、リスク対策(リスクヘッジ)のポイントについて紹介します。
資産運用におけるリスクとリターンの考え方
資産運用においてリスクとリターンの考え方は大切です。一般的にリスクと聞くと、「危険なこと」や「怖いこと」をイメージしやすいですが、資産運用の世界でのリスクはそれとは異なります。資産運用におけるリスクとは、「収益の振れ幅」のことです。リターンとは「得られる収益」のことです。
投資の世界でリスクとリターンの関係は比例しています。リスクが大きいということは、それだけ収益の振れ幅が大きいことになります。運用がうまくいった場合、得られる収益は大きくなりますが、逆に動けば、損失も大きくなります。リスクが小さいということは、収益の振れ幅も小さいので、得られる収益は小さく、損失が出た場合も小さくなります。リスクとリターンの関係は比例しているので、リスクが小さく、リターンが大きいという都合の良い運用商品はありません。
選ぶ金融商品によってリスクとリターンは異なります。預金、国債など債券、投資信託、株式の4つを比べた場合、預金が最もリスクとリターンが低くローリスク・ローリターンです。国債など債券、投資信託、株式の順にリスクとリターンは大きくなっていきます。この中では株式が最もハイリスク・ハイリターンになります。投資信託は、選ぶ投資信託によってリスク・リターンはさまざまです。
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以下は、国内株式、国内債券、海外(先進国)株式、海外(先進国)債券という、4つの伝統的資産に投資する投資信託について、それぞれのリスクとリターンを、投資対象ごとに色分けして図にしたものです。リターンとリスクがおおむね比例しており、国内債券<先進国債券<国内株式≦先進国株式となっていることが分かります。リスクを許容できるタイミングでは国内外の株式に投資し、資産を守るタイミングでは国内外の債券に資金を移すというのが、王道的な資産運用と言えます。
(出所:2021年8月末時点のデータをもとにQUICK資産運用研究所作成)
資産運用をする上で、リスクとリターンについて、慎重に考えて商品を選ぶ必要があります。自分の年齢や家族構成、収入やこれまでの投資経験、資産状況、さらには性格などを踏まえて考えることが大切です。リスクの大小を上手に組み合わせて、安定的な資産運用を目指す必要があります。
リスクの種類とは
資産運用におけるリスクは一般的に6種類あります。価格変動リスク、金利変動リスク、カントリーリスク、信用リスク、為替変動リスク、流動性リスクです。一つずつ見てみましょう。
価格変動リスク
金融商品の価格は景気動向、企業業績、為替相場などさまざまな要因で日々変動します。購入した商品を売却する際、買った価格より高いこともありますが、逆に値下がりし損を出す可能性もあります。株式がイメージしやすいと思います。債券も途中で売却する場合には、価格は市場価格になり変動します。投資信託も組入銘柄の価格変動の影響があり価格変動リスクがあります。
金利変動リスク
金利の変動によって債券価格が変動するリスクです。一般的に金利が上がると債券価格は下落します。市場金利が上昇した場合、保有している債券よりも有利な条件で発行される債券が増えるので、保有債券を売却し、新しい有利な条件の債券を購入する動きが増えます。金利が下がれば逆の動きになります。債券を組み入れている投資信託の基準価額も金利変動の影響を受けます。価格変動リスクの一種とも言えます。
カントリーリスク
国の信用リスクです。投資先の国の経済や政治情勢、内部情勢などの変化で市場が混乱した場合に起こるリスクです。たとえば、一部の新興国では、金融商品に関連する制度が急に変更されるリスクがあります。海外の金融商品で運用する場合はカントリーリスクの影響を受けます。海外の株式や債券、それが組み込まれている投資信託等の金融商品の値動きに影響するほか、投融資している資金が回収できなくなったりします。カントリーリスク情報は、格付け会社や調査会社などが評価し公表しています。
信用リスク(元本や利子が予定通り支払われないリスク)
投資した株式や債券を発行している企業や地方公共団体などの経営状態や財務状態が悪化し、元本や利子が予定通り支払われないリスクです。信用リスクが悪化すると、資金繰りが悪化しているのではないかという不安が広がり、株式や債券、投資信託などの金融商品の価格は値下がります。株式であれば上場廃止になったり、破綻する可能性があります。債券では、元本や利子が予定通り支払われなかったり債務不履行(デフォルト)になります。
為替変動リスク
為替相場の変動により、金融商品の価値が変動するリスクです。外国の通貨で取引される金融商品は為替相場の変動の影響を受け、日本円に換金した際に、購入時より上がっていることもあれば下がっていることもあります。購入時より円高になると、円での手取りが少なくなり為替差損が出ます。金融商品の価格が一定でも、1ドル100円で買った商品を1ドル98円で売却すると1ドル当たり2円損することになります。逆に円安になれば円での手取りが増え、為替差益がでます。海外株式や海外通貨の投資信託は為替変動リスクと価格変動リスクがあります。
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流動性リスク
保有する金融商品を売却したい時に売却できない、あるいは購入したいときに購入できないリスクです。例えば、株式が上場廃止になる恐れや債券が債務不履行(デフォルト)になる恐れがある場合、取引参加者の多くが売りに回り、買い注文が出てこないため、売りたくても売買が成立しない可能性があります。こういった場合、これまで価格がつき、取引できていた金融商品にも関わらず、ある日突然、取引ができない状態、つまり換金できなくなります。
また、流通している株数・口数が少なかったり、取引参加者が少なかったりする商品だと、取引相手が見つからない場合もあります。売りたくても売れない、逆に人気化していると買いたくても売り注文が出てこず買えない、ということが起こります。
ローリスクな資産運用方法とは
選ぶ金融商品によってリスクとリターンは異なります。一般的に定期預金、個人向け国債など債券、保険などはローリスク・ローリターンと言われています。資産が大きく増えることは期待できません。間近で現金が必要だったり、老後が近い世代などあまりリスクを取りたくない場合はローリスク・ローリターンの運用商品を選ぶと良いでしょう。
投資信託や株式は一定の大きさのリスク・リターンが期待できます。投資信託や株式は資産運用の代表的な運用商品です。投資信託の場合は選択する商品によってリスクはさまざまです。債券を多く組み入れた投資信託より株式を多く組み入れた投資信託の方がリスク・リターンは大きくなります。
FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産(仮想通貨)はハイリスク・ハイリターンの傾向が強いです。思いがけない損失が発生する可能性もあるので、投資初心者や投資経験が少ない人はあまり手を出さない方が良いでしょう。
リスク・リターンを考えた運用については、こちらの記事で紹介していますのでご覧下さい。
⇒ 資産運用の種類と選び方を解説 初心者におススメの手法とは?自分に合った手法を選ぼう(資産形成イロハのイ)
ローリスクでハイリターンな資産運用方法はあるの?
資産運用において、リスクとリターンは比例の関係です。リスク(収益の振れ幅)が大きいから、リターン(得られる収益)も大きくなります。なので、「ローリスク・ハイリターン」という運用商品はありません。万が一、ローリスク・ハイリターンの投資話を勧誘された場合は、怪しいなと冷静に判断しましょう。
資産運用では、いろいろなリスク・リターンの金融商品があります。ある程度、資産を効率的に増やしていこうと考えると、ローリスク・ローリタンの運用だけでは難しいという面があります。例えば、定期預金。検索してみると10年定期預金で0.02%などの条件が多いです。1000万円を0.02%の金利で10年預金しても利子は税引きで1万6千円程度です。10年で資産が0.16%しか増えない状況です。なので、資産運用で資産を効率的に増やすには、一定のリスクを取り運用することも必要になります。
ある程度のリスク・リターンを期待する運用をする場合に大切になってくるのがリスク対策(リスクヘッジ)をしっかりとしながら運用していくことです。
リスク対策(リスクヘッジ)のポイント
リスク・リターンの関係を考えながら効率的に資産運用をしていく時に大事なポイントにリスク対策があります。資産運用をする時にとても大切な考え方に分散投資があります。
投資の世界では「一つのカゴに卵を盛るな」という格言があります。一つのカゴだけにたくさん卵を入れて運ぼうとし、そのカゴを落としてしまったら全部が割れてしまいます。たくさんの卵をいくつかのカゴに分けて入れて運べば、例え一つのカゴを落としてしまって割れても、残りのカゴの卵が生きているというものです。
この格言はまさに分散投資の重要性を語っています。投資をする際も一つの金融商品だけでなく複数の商品に分散する必要があります。この分散投資、資産、地域、時間この3つの観点から分散すると良いと言われています。
資産の分散という視点では、株式や債券、投資信託など選ぶ商品を複数にする、株式でも複数銘柄にするなど分散をします。地域も、国内だけでなく欧米やアジアなど分散させます。
もう一つ大事なのが時間です。購入するタイミングを分散させることも大切です。人は相場が好調な時ほど投資に対して熱が入りやすいものです。逆に景気が悪い時や相場が軟調な時にも時間を分散するという観点では投資をしていくことは大切です。時間を分散させる意味で、相場動向に関係なく毎月一定額を購入する積み立て投資などもオススメです。
国の非課税制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を活用すると良いでしょう。
リスク対策については下記の記事でも紹介していますので是非ご覧下さい。
⇒ 資産運用に失敗しないためのポイントとは?失敗した場合の解決方法はある?
まとめ
リスクとリターンは比例の関係性があります。資産運用ではローリスク・ローリタンからハイリスク・ハイリターンまで様々な種類の金融商品があります。資産運用では、リスク対策をしっかり行って長期間の安定的な運用を心がけることが大切です。
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