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韓国で人気の細川真希、日本アート市場での活躍にも期待【Art Market Review】

Art Market Review

マレットジャパンの近現代美術のオークションが5月19日(木)に開催された。国内作家48名、海外作家77名による版画、絵画、立体、陶芸など208点の作品が出品された。

今まで会場入札、書面・電話での入札のほか、海外サイト(Invaluable)を通じてのみ行っていたライブビッドが、今回のセールより、マレットジャパン独自のオンライン同時入札(ONLINE LIVE BID)システムが導入され、パソコンやスマートフォンを通じて外出先でも気軽にオークションに参加することが出来るようになった。セールの落札総額は2億446万9150円(落札手数料含む・以下同)、落札率は75.5%だった。KAWSのフィギュアや村上隆のマルチプル作品がやや不調だったものの、ピエール・スーラージュやウアンディ・ウォーホル、ディヴィッド・ホックニーなど海外作家の版画作品などが好調で活気のあるセールとなった。

今井麗、予想の約7~8倍で落札

本セールで、最高落札額を記録したのは、ロッカクアヤコの作品。背景は控えめに眼差しが印象的な少女を描いた大型作品LOT.073《Untitled》(120.0×75.5cm、段ボール・アクリル)は、落札予想価格600~800万円のところ、落札予想価格上限を上回る1572万7500円で落札された。ロッカクの堅調が続いている。次点となったのは、李禹煥のLOT.064《From Winds》(27.2×22.0cm、キャンバス・岩彩)で、落札予想価格300~400万円のところ、720万円で落札された。1980年代の代表作シリーズの1点でもある本作は、小さめの作品ながら、大きな競り上がりをみせた。3番目には、バンクシーがランクインしている。LOT.003《Pulp Fiction》(41.7×62.7cm、シルクスクリーン、ed.600)は、落札予想価格400~600万円のところ815万5000円で落札された。映画「パルプ・フィクション」の有名なワンシーンをオマージュした作品で、二人の俳優が拳銃を構えるべき手にはバナナが描かれている。バンクシーらしい風刺が込められた本作は、版画作品の中でも人気を博す1点である。既に高い評価を得ている作家が好成績を収め、評価を堅固する結果となった。

落札価格上限を大幅に上回る落札金額で注目を集めたのは、LOT.080~082まで、3点のオリジナル作品の出品があった今井麗。近年、活躍が目立つ作家の一人で、トーストや果物、ぬいぐるみなど、日常の身近なモチーフを油彩で描くことで知られている。トーストが置かれた食卓の席につくクマが描かれたLOT.080《お預けのクマ》(45.0×38.2cm、キャンバス・油彩)は、落札予想価格60~90万円のところ、733万9500円で落札された。3作品とも落札予想価格上限の約7~8倍の金額で落札される高騰をみせ、今後の価格上昇にも期待が寄せられる。

細川真希、落札価格が驚異的な伸び

今回は、細川真希に焦点を当てる。細川真希(ほそかわ・まき、1980年~)は、西洋美術の哲学や学術的技法などにこだわらず、自由に描かれたPOPな作風が人気で、近年のオークションでも熱を帯びた入札が展開されている若手現代作家の一人である。

本セールでは4点のオリジナル作品が出品された。いずれも落札予想価格上限を上回る金額で落札された。最も高額落札となったのは、フェルメールの《水差しを持つ女》をオマージュした作品LOT.083《窓辺で水差しを持つ女のように》(91.0×91.0cm、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格200~300万円のところ、512万6000円で落札された。細川は、他にも名画をオマージュした作品を多く制作しているが、オークションでは人気が高く、いずれも好結果を残している。

細川のオリジナル作品から、数回の出品歴があった1点をピックアップし、ACF指標より、その動向を読み解く。作品は、大きな目の少女を画面サイズ大に描いた《I Hear Sound of Water》(130.0×97cm、キャンバス・アクリル)。2018年、国内のNew art Est-Ouestオークションに初出品された作品で、落札予想価格15~25万円のところ、落札予想価格下限を下まわる約13万円の落札だった。しかし、3年後の2021年、SBIアートオークションに出品された際、落札価格は約310万円まで上昇。翌2022年には、約680万円と驚異の伸びをみせた。細川の作品は、国内オークションよりも韓国、香港オークションでの流通が目立つ。2022年のデータも韓国で開催されたオークションの結果である。国内よりも早く人気の高まりがあった分、落札予想価格、落札価格ともに高騰傾向が強く表れている。過熱気味の価格高騰の反面、既に沸点に達したかのような停滞気味の結果も散見され、韓国では上げ止まりの傾向にあることも考えられる。

ACF美術品パフォーマンス指標

ACF美術品時価指数

現在の主たる換金市場が韓国となっている作家が、自国のマーケットでどこまでの活躍を見せるか今後の動向に関心が向けられる。

(月1回配信します)


※アート・コンサルティング・ファーム提供  ⇒リポート全文はこちら
 ※次回のマレットオークション開催予定は9月8日

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