【QUICK Money World 辰巳 華世】FX(外国為替証拠金)取引をする個人投資家が増えています。新型コロナウイルス禍による在宅時間の増加や、2020年の米大統領選など政治イベントで円相場が大きく変動したこともあり20年度のFX取引額は初めて6000兆円を超え過去最高となりました。拡大を続けるFX取引ですが、FXは資産運用の範疇に入れるべきではない「投機」にあたるとの見方もあります。今回は資産運用の初心者向けに、FXでの資産運用の特性やリスク、FXに挑戦する前に確認・準備したいこと、FXで資産運用をする時に意識したいことについて紹介します。
FXで資産運用をするのは初心者向け?経験者向け?
FXとは外国為替証拠金取引のことです。「Foreign eXchange」の文字からFXと呼ばれています。FXは、外貨預金の様に外貨に投資をします。24時間動いている外国為替市場を相手に個人投資家が米ドルやユーロなどの外貨に投資をする金融商品です。
FXの魅力はいくつかあります。まず外貨預金に比べ手数料が少ないです。スワップポイントと呼ばれる利息を受け取ることができます。これは、異なる通貨間の金利差で決まる利息で、例えば低金利の円を売ってトルコリラなどの高金利の通貨を買えばその金利差の利息を日々手にできる仕組みです。また、株価の変動で収益が生まれる株式投資の様に、為替レートの変動による売買益を狙えるなどの魅力があります。
FXの一番の特徴は、レバレッジ(leverage、「てこ」)を効かせた取引ができる点です。外貨預金では手持ちの現金分しか預金することができませんが、FXでは証拠金として預けた額の何倍もの大きさで取引することができます。
FXは、少ない資金で大きな取引ができます。証拠金の最大25倍の大きさで取引が可能です。例えば4万円の証拠金でレバレッジを最高にすれば約100万円分の取引ができるということです。FXは預けたお金の何倍もの売買ができるので、レバレッジ取引と言われています。
レバレッジ取引は、少額で大きな利益が得られる可能性があります。一方で、大きな損失を被る可能性も高いです。FX取引はハイリスクな投資であり、FXに関する知識がなければ、資産を失うだけでなく、借金を抱える可能性もあります。
一般的にFXは長期投資には向かないと言われています。それは、レバレッジ取引がありハイリスク・ハイリターンであることや、取引の仕組みとして保有する通貨が自動的に売却される「ロスカット」があり長く保有したくても保有できないことがあるためです。ロスカットは為替レートが大きく動いた時に損失が拡大するのを防ぐため、ある一定の水準になると保有する通貨が自動的に売却される仕組みのことです。為替レートが一時的に大きく動くことは珍しい話ではなくロスカットも起こりがちです。
また、FXはゼロサムゲームの取引です。ゼロサムゲームとは、ゲーム理論と呼ばれる経済理論の一つで、参加者の得点と失点の総和(サム)がゼロになるゲームのことです。
為替取引は、二国間の為替の取引を行うもので、その二国間の通貨はシーソーの様な関係です。一方のレートが上がれば、もう一方のレートが下がり、ゼロサムゲームとなります。ちなみに株式は成長や需要によって株式相場全体が変動する仕組みなので非ゼロサムゲームと呼ばれています。
為替相場は、株式の様に企業の成長によって株価が上昇し続けるというよりは、ある程度の範囲内で上下します。ある通貨がもう一つの通貨に対して一方的にずっと上がり続けるということはないです。なので、FXは、短期的な売買を繰り返して利益を上げていく傾向が強い取引です。こういった理由から、FXは中長期の資産形成を見据えた運用にはあまり向いていない取引です。
FXの特性として中長期の資産運用には適さない部分がありますが、それでも運用方法の一つとして取り入れたい場合は、資産運用を初めて行う方やFX初心者の方よりも、経験者や上級者がリスクを十分に理解した上で行う方が良いでしょう。FXは、ハイリスク・ハイリターンで損失が出たら大きくなるケースが多いので初心者が手を出すには難しい取引の一つと言えます。
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FXのリスクとは
FXの一番のリスクは、レバレッジ取引による損失の拡大です。レバレッジの倍率は、取引する業者が提供するレバレッジ倍率、例えば2倍や5倍などから自分で選ぶことができます。最大で25倍です。レバレッジは大きくなればなるほど、儲かった時の利益は大きくなりますが、同じ様に損した場合の損失も大きくなります。そこが一番のリスクです。
FXでは為替レートの変動による売買益だけでなく、スワップポイントを受け取ることで利益を得ることができます。最初はスワップポイントが受け取れるポジションを作ったつもりでも、それがずっと続く保証はありません。時間の経過とともに、そのペアの両通貨の金利差が縮小したり、逆転することもあり得ます。そうなると、受取金額が少なくなったり、反対に支払いをする必要性がでてくることもあり得ます。
また、強制ロスカットにあうのもリスクです。ある一定の損失が確定するとそれ以上損失を拡大させないために、強制ロスカットとなり自動的に売却されてしまいます。長期にわたりそのポジションを保ちたいと考えていてもそれができるとは限りません。
FXに挑戦する前に確認・準備したいこと
FXは、ハイリスク・ハイリターンな取引です。そのため、FXに挑戦する前に確認や準備をするのが望ましいです。ここでいくつか確認すべきことを見てみましょう。
FX取引に向いているかチェックする
自分がFXに向いている特徴があるかチェックすることが大切です。FXは24時間取引ができます。株式以上に相場から目が離せない部分があります。なので、日々マーケットを監視できる体制にあることは大切です。またFXの特性上、短期の売買を繰り返す必要があるため相場を予想して売買できることが必要です。そして、常に冷静でいられること、大きく相場が動いても取り乱さないこと、損失が出た場合も受け入れて直ぐに取引をやめられることが大事です。
勉強する
FXだけに限りませんが、投資をするには勉強が必要です。為替の世界は、株式や債券などすべてのマーケットと繋がっています。世界経済や金融情報について常に把握しておくことは大切です。また、FX独自の基礎知識や専門用語、チャートの見方や分析方法、注文方法などを学んでいく必要があります。
デモトレードを繰り返し行う
実際に取引を始める前に、デモトレードを繰り返し行うと良いでしょう。自分が勉強した知識が身についているか、自分の相場の読みは当たるのかなどを確認するため、テストを兼ねたデモトレードをしてみるのがおすすめです。FX取引で全勝することはかなり難しいと言われています。取引の中である程度勝てるようになるまで何度もデモトレードを行いつつ、実践に近い形で勉強していくと良いです。
FXで資産運用をする時に意識したいこと
最初は少額から取引を始めましょう。レバレッジもできるだけ小さい倍率で経験を積みましょう。業者によっては、100円から数千円で取引できるFX口座もあるので探してみましょう。
FXは、中長期というよりは短期売買をする取引なので、常に相場の動きをチェックすることが大切です。24時間取引ができるので、投資をしている間は常にアンテナを張っておく必要があります。
ルールを決めておきましょう。FX投資に充てられる額を最初に決めておくことは大切です。そしてその金額以上は手を出さないことです。いくら損がでたら売却するなども決めておくと良いでしょう。損切りを念頭に入れながら取引をし、損失が出た時点でFXから手を引くと決めておくのも良いかもしれません。損失分を取り戻すために、追加資金の投入や借金はしないことが大切です。
FX取引でも分散投資を意識しましょう。一つの取引だけでなく、複数の通貨に分散投資し、リスクを最小限に抑えましょう。分散投資の重要性については、下のリンク先記事で紹介していますので参考にして下さい。
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まとめ
FXはハイリスク・ハイリターンな取引です。リターンが大きい分、リスクも大きいのが特徴です。FXを始める時はリスクを十分に理解し、勉強・デモトレードを繰り返し行うことをおすすめします。
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