【日経QUICKニュース(NQN) 岡田真知子】加速する円安・ドル高に対応して、政府・日銀が為替介入に動くのではないかとの警戒感が強まっている。14日午後、日銀が為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したと伝わり、円は対ドルで急速に下げ渋った。円買い・ドル売り介入に踏み切るタイミングも近いとの思惑も一部で浮上するものの、市場参加者には「まだ介入実施には距離がある」との声が多い。
■レベル5
ある市場関係者によると、日銀によるレートチェックは朝方、1ドル=144円90銭に近い水準のタイミングで実施されたという。日本時間14日の7時すぎには144円96銭近辺と7日の安値(144円99銭)に迫る場面があった。13日17時時点に比べて2円71銭の円安・ドル高と、一晩で3円近くも下落したのを受け、通貨当局の動きは朝から慌ただしかった。
8時半すぎには、財務省の神田真人財務官が足元の相場変動について「急激であり、憂慮している」としたうえで「あらゆるオプションを排除せず適切な対応をしたい」と言及したと伝わった。
さらに11時すぎには松野博一官房長官が記者会見で、急速な変動が続く場合は「あらゆる措置を排除せず、必要な対応を取りたい」と発言。12時半すぎには鈴木俊一財務相も、相場急変が続けば「あらゆることを排除せず対応しないといけない」と話したと伝わった。
モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一氏がまとめた通貨当局による為替介入の「本気度」レベルでは、「あらゆる措置を排除しない」との文言は介入が視野に入る「レベル5」に該当する。神田財務官、松野官房長官、鈴木財務相の口先介入は総合してみるとレベル4~5程度とみられる。
■「賞味期限は短い」
14日午前の東京市場では神田財務官らの発言も支えに円相場は一時144円08銭近辺まで下げ渋ったものの、円買いは長続きしなかった。昼すぎまでの段階では「足元の円安・ドル高は日米の金融政策の違いに基づいており、日銀が現状の政策を修正する姿勢をみせないなかでは、市場に『実現性は低い』と見透かされている」(SBIリクイディティ・マーケットの鈴木亮常務)との見方が多かったためだ。
円が再び弱含み、144円台半ばで推移していた13時半すぎにレートチェック実施の一報が市場に伝わった。市場では「不意を突かれ、慌てて円の買い戻しに動いた市場参加者がいたようだ」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)という。
ただ、レートチェック観測を受けた円安一服は「賞味期限が短いだろう」(伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミスト)との声が相次ぐ。レートチェックは為替介入の準備ともされるが、実際に介入に踏み切るまでにはまだ距離があるとの見方が多いためだ。ある国内銀行のディーラーは「金融政策の違いを基にした相場展開で、主要先進国から円買い・ドル売り介入への理解を得られるとは思えない」と指摘する。
口先介入において「本気度」が最高になったことを示唆するとみられる「断固たる措置」という文言が、いまだ通貨当局者から出ていないことも、介入実施へのハードルの高さをうかがわせる。加速する円安・ドル高に対して、政府・日銀はどう対応するのか。その発言にはかつてないほど関心が高まっている。