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円安が止まると、何が起きるのか? 今後は「円建て海外株価」に注目(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

記事公開日 2022/10/12 12:00 最終更新日 2022/12/14 19:03 米国・欧州 為替・金利 為替 為替介入 FX 米金利 フィデリティ 米株 海外株

今後の3つのリスク

今後の金融市場では、「金融引き締め」「トリプル安」「ロシアの暴発」の3つの要素を考える必要がありそうです。

まずは、①金融引き締めについては。特に、ドル建ての債券や借り入れの規模を考えると、米国の利上げに要注意です。1982年にも1994年にも、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに伴うドル金利の上昇によって、メキシコで債務危機が生じ、その後、他の中南米諸国やアジア諸国に波及しました。QT(量的引き締め)にも注意が必要です。

次に、②英国のトリプル安に代表されるように先進国による(物価対策のための)財政出動に注意が必要でしょう。ただし、英国や日本については、自国通貨建ての債務であり、中央銀行が国債を無制限に買い入れることができるため、(インフレが大きな心配としても)デフォルトの心配はありません。

問題は、英国のトリプル安が、ユーロ圏の一部の国に飛び火することです。ユーロ圏の加盟各国は金融政策が単一であるため、各国の中央銀行(NCBs)が自由にユーロを発行して国債を買い入れることができません。ギリシャが実例であったように、ユーロ採用国は実質的には外貨建ての債務を抱えている状態であり、1980-90年代当時のメキシコと似た状況です。債券市場の状況が、①各国の財政出動を思い留まらせるか(→景気が悪化し、内政に不満が出る)、②ユーロからの離脱を再度想起される事態に至るかもしれません。イタリアの新政権は英国と同様に、巨額の財政出動を行う可能性があります。

最後に、③ロシアです。現在、プーチン大統領は孤立無援の状態と言ってよいでしょう。ウクライナ東・南部4州の併合(とそれに続く停戦交渉の呼びかけ)を急ぐほどにロシア側の戦況は危うくなっているようです。合わせて、国内は予備役の招集を機に厭戦ムードが漂っているとされます。

中国の習近平・国家主席は、経済制裁には加わらず、国内指導部向けにも一時はプーチン大統領に「肩入れ」する姿勢を示したとされるものの、ロシア軍の劣勢で当てが外れ、内政固めのためにも「ロシアと距離を置く」と指摘されています。おそらくは、欧米諸国のみならず、中国ですらも「プーチン後のロシアをどうするか」を見据えている状況でしょう。

こうした中、プーチン大統領は、自らの地位を守るために、戦局を打開する一手を考える可能性があります。そうした「準備」は人工衛星によって事前にわかるようですが、問題は、その準備が始まった際に、その情報がどこまでの範囲に伝えられるのかでしょう。

エピソード・トーク:とある集まりにて・・

今年6月のこと、とある集まりで、オンライン証券の幹部が「今年はウクライナ危機で、金融市場が調整しているが、個人の積み立て投資は淡々と入ってくる。隔世の感がある」といった趣旨の話を述べられました。

それを聞いた筆者はこころの中で「それはまだわからん」とつぶやきました。なぜなら、今年は円安によって、日本国内の個人投資家がほとんど損失を感じていないためです。

ドル建てと円建てのS&P500

いざ、「円建ての海外株価」が下落し始めれば、国内の投資家がどう動くかはわかりません。リテラシーや精神力はまだ試されていないのです(→2020年のパンデミック時には、巨額の金融緩和と財政出動で「ろうばい売り」する前に金融市場はすぐに戻りました)。

「われわれが人間である」ことを思い出せば、「下落は恐怖感をもたらし、平常心ではいられなくなる」と考えておいたほうがよいはずです。筆者は「恐怖を感じない下落に留まっているうちは、まだ底は訪れていない」と考えています。

なぜ、書店には資産運用(と自己啓発)の本が多いのか

もしも、個人投資家が、もはや「投資家心理」に左右されなくなっているのならば、書店にあれほどの(古今東西の)資産運用関連の書籍が並べられていることはないでしょう(→似たことは、自己啓発関連の書籍にも言えるでしょう)。

われわれは人間であり、われわれには投資家心理を克服できていない長い歴史があります。これからも個人投資家は投資家心理に左右され続けるでしょうし、資産運用関連の書籍やビジネスは続くでしょう。

よくある投資家向けのアンケートで、資産運用について正しく回答する人の割合が増えていても、それは「平時」における画面上のクリックにすぎません。「いざ・有事」のときにパニックに陥らず、正しく実行できるかは全く別の話です。

そうした「いざ」というときこそが、資産運用のアドバイザーが役に立つ(べき)ときです。

下落するリスクがあるときには、「リスク」としてそう伝えるべきでしょう。同時に「戻り」についても話すべきでしょう。

飛行機の機長アナウンスのように、あらかじめ伝えておけば、実際に下落が起きたときには「あのとき言ってくれてたね」となります。逆に、下落が起きず、「話が違うじゃないか!」と言われる場合もありますから、分散が重要です。

円安が止まると、何が起きるのか?

先週は、日本の財務省による為替介入について「為替レートの方向性を変えるほどの効果はないだろう」と述べました。①為替市場の規模も大きく、②概してファンダメンタルズに左右されるためです。

しかし、仮に為替レートがドル安・円高に向かわずとも、円安基調が145-150円当たり止まれば、(次の節で挙げる)引き締めその他の要因の株価に対する悪影響を、日本の投資家は「もろに受ける」ようになります。

実際、過去は介入の効果は限定的ですが、過去は介入を止めれば、方向が変わる場合もあります。その背景には、テクニカルな面もあるようですが、ファンダメンタルズに沿って言えば「為替介入を続け、効果がないとあきらめる頃が、それまでに円高や円安を生じさせてきたテーマがクライマックスに達しつつある」場合があるためです。これは「損切りしたときが底」に似ているかもしれません。

ドル円レートおよび日本の財務省によるドル円市場介入金額(1993年~2001年)

ドル円レートおよび日本の財務省によるドル円市場介入金額(2003年~2013年)

パンデミックのときは「誰にも非はない」ということで、発生直後に巨額の財政出動や金融緩和が実行され、個人投資家は「ろうばい売り」する間もなく、株式市場はすばやく戻り始めました。

しかし、次はパンデミックのように、すぐに救済とはならず、インフレ圧力が減るまで、高めの政策金利(=利上げ後の据え置き局面)が続く可能性があるでしょう。そこは、株価が調整する局面ですが、ドル高・円安にはなりにくい局面です。なぜなら、為替は将来の金融政策を読み込むわけですし、すでに利上げは終わり、「次は利下げ」が見えているためです。そして最後は、利下げでドル安・円高となることで、「円建ての海外株価」はもう一段、下落するでしょう。

日本の個人投資家のみなさまや彼らをサポートされるアドバイザーのみなさまは、①今後の「円建ての海外株価」の動きをイメージしつつ、②投資余力を考えつつ、資産運用のプランを立てることが望まれます。

ドル円レートおよび日本の株式投資信託への資金純流入金額

S&P500および日本の株式投資信託への資金純流入金額


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著者名

フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト 重見 吉徳

20208月、フィデリティ投信入社。農林中央金庫や野村アセットマネジメントにて外国債券の運用に従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年に J.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社。個人投資家や金融機関、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。昭和の歌が好き(演歌・洋楽を含む)。


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