【日経QUICKニュース(NQN) 三好理穂】19日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=149円台前半での小動きにとどまっている。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めの長期化を見込んだ円売り・ドル買いが出る一方、政府・日銀の円買い介入への警戒感が一定の抑止力となっている。目前に迫る150円の節目を抜けても積極的な円買いに転じる理由は乏しい。節目を抜ければ160円までのフリーフォール(垂直落下)を予想する声も出てきた。
円は一時149円31銭近辺と前日17時時点と比べ36銭あまり円安・ドル高水準まで下落した。日米の金融政策の方向性の違いを重視する投機筋に加え、「輸入企業など実需筋も必要となるドルを淡々と買っている」(国内銀行の為替担当者)
市場参加者がドルを選好する状況に陰りがみえない。米バンク・オブ・アメリカが18日に公表した10月の機関投資家調査(7~13日実施)によると、最も人気のある持ち高は回答者の64%が答えた「ドルの買い」だ。前回9月調査からさらに比率が拡大した。2位の「欧州連合(EU)株の売り」や3位の「ESG(環境・社会・企業統治)資産の買い」を大きく引き離す。今年に入り、最もパフォーマンスが出ている投資戦略の1つであるドル買い・円売りの人気は高まる一方だ。
投機筋の円売り余力は残っている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータでは、通貨先物市場で非商業部門(投機筋)による円の売越幅は11日時点で7万7393枚。売越幅が11万枚を超えていた4~5月ほど膨らんでいない。
※投機筋のドルに対する円のポジション(CFTCより)
シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは「(テクニカル指標などからも)ドル買いのモメンタムが再燃し、ドル高圧力の根強さを示している」と指摘する。原油価格の下落など長期的に円安抑制となる材料が出てきているものの、短期的な相場動向をみる上では「ドル買いの勢いに分がある」との見方を示す。
政府・日銀による介入への警戒感は一定の円相場の支えになるが、持続力は限られるとの見方が大勢だ。市場では「150円台に乗せれば再度の介入がありそう」(国内銀行の為替担当者)との声もあるが、短期的に円高方向に振れた後は、ドル買い需要に押され、再び円安・ドル高の流れにつながる。再度の介入の効果が限定的と分かれば、投機筋の円売りに弾みがついてフリーフォールを招くとの見方もできそうだ。
仮に150円を下回った場合、50銭や1円刻みの心理的な節目を除いて、目立った節目は1990年の安値(160円35銭近辺)まで見当たらない。三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストはこの水準を当面の下値メドとみて、早ければ年内にも到達するとみる。
宇野氏はFRBの利上げ局面は来年前半には終わらないと予想。さらに、岸田政権が10月中に取りまとめる総合経済対策による財政不安で英トラス政権の二の舞いを演じたり、アジアの地政学リスクの高まりが円売りにつながる可能性も指摘する。150円が通過点との見方が増えるなか、通過後の円相場を待っているのはさらなるフリーフォールかもしれない。