【日経QUICKニュース(NQN) 岡田真知子】ハンバーガーに缶コーヒー、食用油に紙おむつ――。日常生活で「物価上昇」を目の当たりにする機会が増えている。総務省が18日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合指数(コア指数)の伸び率が40年ぶりの大きさとなった。ただ「経験則からピークアウトの兆しもある」と、傷む家計にとって朗報も聞かれる。
10月の全国CPI(2020年=100)でコア指数は103.4と、前年同月比で3.6%上昇した。上昇は14カ月連続で、伸び率は1982年2月(3.6%)以来40年8カ月ぶりの大きさとなった。QUICKがまとめた市場予想の中央値(3.5%)も上回った。
資源高や円安などが響き、エネルギーは前年同月比15.2%上昇。生鮮食品以外の食料は同5.9%上昇で、9月(同4.6%上昇)から伸びが加速した。
消費者物価の上昇は、原材料価格や輸入物価の上昇に苦しんできた企業でコストの上昇分を販売価格に転嫁する動きが広がっている証しだ。企業間で取引されるモノの価格を示す企業物価指数は昨年から先行して上昇していたが、それに追随する形でCPIの上昇が顕著になってきた。
例えば、企業物価指数が前年同月比8.0%と大きく上昇したのは21年10月。そこから半年ほど遅れてCPIのコア指数は22年4月に同2.1%と日銀が物価安定目標とする2%を超えた。過去もおよそ半年ほど遅れて、消費者物価が企業物価を追いかける動きが見てとれる。
市場では「23年4月以降は比較対象となる『前年同月』の発射台が高くなり、いずれ伸びが鈍化するのは明白だ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介氏)との指摘もある。
11日に日銀が発表した10月の企業物価指数は前年同月比9.1%と極めて高い伸びながらも、9月(10.2%)に比べると伸び率が鈍化した。過去の経験などを踏まえると、日銀の黒田東彦総裁が任期を終える4月ごろには消費者物価もピークアウトを迎える可能性がある。
ただ企業物価、消費者物価ともピークアウトした後も高止まりが続く可能性は残る。物価高に見合うだけの賃金上昇という家計にとっての「真の朗報」も届き、日銀が目指す「物価と賃金の好循環」が実現されるか。来春ごろに向け、日銀の金融政策の先行きと合わせて市場関係者の物価への関心が一段と高まりそうだ。