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【ESGブック】W杯カタール大会スポンサー企業のリスク

記事公開日 2022/12/1 11:00 最終更新日 2022/12/1 14:00 ESGスコア アラベスクS-Ray ESGブック

今まさに熱戦が繰り広げられているサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会であるが、スタジアム建設などに従事した外国人労働者の人権問題が指摘されるなど、今後の大規模な国際大会を開催するにあたって考えさせられることも多い。スポンサー企業のESGブックのスコアから国際的なイベントに関わる社会問題の影響を見てみよう。

開催地のカタールは、人口300万人にも満たない小国である。W杯開催期間中に同国を訪問する観光客は150万人を超えるとの予想もあり(注1)、サッカー会場となる複数のスタジアムの建設の他、周辺の交通網整備、宿泊施設等の建設など、コロナ禍の中、大規模な建設工事が国中で行われた。これらの建設工事を限られた期間で行うには多くの外国人労働者の労働力が必要となり、実際に雇用されていた事は既知の通りである。

建設工事には数十万人または数百万人の外国人労働者がアフリカや東南アジアからカタールに来て働いていたと考えられている。1つのスタジアムを建設するには3万人の外国人労働者を雇っていたという報告もある(注2)。これらの建設工事に携わった外国人労働者は人権や労働権が軽視された環境で働かされ、死者も多数出ていると報じているメディアも数多くある(注3)。

国際的なスポーツイベントのこのような人権問題は、最近に限ったことではないであろう。しかし、SDGsへの関心が高まるにつれ、大規模なイベントの開催に辿り着くまでの競技場等の建設工事に携わる労働者や原材料の調達などを、一般の人々も気にし始めている。このような社会的な問題は、イベントを資金面で支えるスポンサー企業にとっても重要なリスクになってきている。

ここではW杯カタール大会の主要スポンサー(FIFAパートナーズ及びFIFAワールドカップ・スポンサーズ)のうち、ESGブックのスコア対象となっている企業のスコアの推移をみていきたいと思う。今回の外国人労働者の問題は、開催が近づくに連れて、多くのメディアで取り上げられるようになった。この1年のスコアの変化からスポンサー企業にどのような影響を及ぼすのかを確認したい。

※(表)サッカーW杯カタール大会のスポンサー企業のGCスコアとESGスコア

スコア対象となっているスポンサー企業は、FIFAパートナーズ7社中の4社、FIFAワールドカップ・スポンサーズの7社中の4社あった。スコア対象となっていないスポンサー企業はカタールの国営企業2社、中国の大連万達グループとVIVO、インドのByju’s、シンガポールのクリプト・ドットコムとなっている。本来であれば、カタールの国営企業への影響が最も大きいと思われるが、国営のため非上場の企業となっており、ESGブックのスコア対象となっていない。このため、現時点ではスコア対象となっている表の8社の状況を確認してみたい。

表においては、ESGブックのスコアの中で、企業の評判(レピュテーション)を評価する際に使用されることの多いグローバルコンパクト(GC)スコアとその4つのサブスコアを使用した。また、参考スコアとして企業の株価のパフォーマンスとサステナビリティ要因の相関性を考慮したESGスコアも加えた。

スコアの動きを見ると、企業のレピュテーションを評価する際に用いられることの多いGCスコアは8社中4社が1年前に比べマイナスとなった。一方、企業の株価とサステナビリティ要因の相関性を考慮したESGスコアは8社中2社のマイナスに留まった。対象期間中は、世界的に株式市場はマクロ経済要因による影響が大きく及び、サステナビリティ要因は企業の株価にあまり影響しなかったのではないかとみられる。

対象企業の半数がマイナスとなったGCスコアではサブスコアの推移も見ておきたい。人権は8社中5社、労働は8社中3社、環境は8社中5社、腐敗防止は8社中6社がマイナスとなった。8社はいずれもサブスコアのいずれかでマイナスとなっており、4つのサブスコアがそろってプラスだった企業はなかった。W杯のスポンサー企業ということで、これら8社の企業行動をマスメディアや非政府組織(NGO)は注目し、ニュースに取り上げることも多かったのではないかと思われる。

W杯のような国際的な大規模イベントは、イベントそのものが注目されるため、資金面で協力しているスポンサー企業にとって、イベントにおけるマーケティング活動は重要である。しかし、昨今のサステナビリティの状況を踏まえると、イベント開催までの過程が注目されることも多い。スポンサー企業は、イベント開催前の準備段階で想定されるサステナビリティ課題を分析し、社会的に懸念される課題があるようであれば、その課題に適切に対応し、その企業行動を広報していくことも必要なのではないか。

2024年のパリ五輪では複数の日本企業がスポンサー企業に名を連ねている。パリとカタールでは準備段階の状況は大きく異なると思うが、サステナビリティに関する問題点は多々あると考えられるので、課題の分析、対応、そしてその対応状況の広報にぜひ活かして頂きたい。

(注1)FIFA World Cup 2022: Everything you need to know before travelling to Qatar | Euronews

(注2)World Cup 2022: How has Qatar treated foreign workers? – BBC News

(注3)Families of migrant World Cup workers who died in Qatar are waiting for answers – The Washington Post

雨宮 寛(あめみや・ひろし)
アラベスクS-Ray社日本支店代表。アラベスク・グループの日本事業の責任者。アラベスク以前は外資系金融機関で運用商品の開発に従事。CFA協会認定証券アナリスト。一般社団法人日本民間公益活動連携機構アドバイザー、明治大学公共政策大学院兼任講師。NPO法人ハンズオン東京副代表理事。ハーバード大学ケネディ行政大学院(MPA)、コロンビア大学経営大学院(MBA)。

著者名

アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮 寛


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