弊社アナリストのアイシュワリャ・シュクラが先日、米証券取引委員会(SEC)のESGファンド開示規制に関するレポート(https://www.esgbook.com/wp-content/uploads/2022/09/SEC-ESG-Fund-Labelling-Rules-Explained.pdf)を発表した。今回は同開示規制についてまとめたい。
SECの開示規制については、2022年6月3日付けRI特約記事「SEC、グリーンウォッシングに対処する新たなESG開示規則案を公表」(https://www.esg.quick.co.jp/research/1373)に詳しく報告されているので、併せてご覧頂きたい。
22年5月25日にESG投資に関する開示規則案が発表され、その後の意見公募期間を経て、現在は様々な団体や金融機関からの意見が出されている。SECは追加の意見や規則案の修正を検討しているようだ。
前述のRI特約記事にESGファンドの3つの分類が紹介されている。
- ESGインテグレーション投資ファンド(ESG要因の組み入れ度合は比較的小さい)
- ESG特化型ファンド(1つ以上のESG要因に依存)
- インパクト投資ファンド(特定のESG目標の達成を意図)
規則案では、これら3 つのファンド分類のそれぞれについて報告形式を指定している。ESGインテグレーション投資ファンドは、ファンドの目論見書の概要部分においてESG に沿った投資の選別についての要約を記し、環境要因を考慮する場合は、環境関連の規制文書により詳細な開示を提供する必要がある。
ESG特化型ファンドとインパクト投資ファンドについては、ファンドの ESG 戦略を記載する開示テンプレートを提供している。たとえば、ファンドが ESG関連のインデックスを追随する運用をしているか、銘柄選択の際にポジティブまたはネガティブ・スクリーニングを適用しているかなどだ。ファンドの戦略を明記することに加えて、この規則案では、開示テンプレートの各項目の裏付けとなるエビデンスを示す必要がある。
ESG特化型ファンドは、気候変動に関する情報開示を促進するために、ファンドの年次報告書で 2 つの 温室効果ガス(GHG) 排出量指標(GHG排出量とGHG排出原単位)も報告する必要がある。 SECは、これらの指標は標準化されており、ファンドへの投資を通じたネットゼロ社会の実現を期待する投資家の意思決定に役立つ情報であると考えている。
すべての ESG特化型ファンドとインパクト投資 ファンドは、ESG のエンゲージメント方針を投資家に直接伝える必要がある。インパクト投資ファンドは、特定されたインパクトの達成実現に影響を及ぼす重要な要因の開示と定量的な分析を含む進捗レポートを毎年作成することも求められる。
ESGファンドのラベル(名称等の表示)に対する監視が強化される中、各国の規制当局は、持続可能な投資環境をより適切な方向に導き、グリーンウォッシングの落とし穴を回避するための対策を投資家に提供することを目指している。 SECも例外ではない。SECが成立を目指す本規制は、ファンドが効果的なESG戦略を立証する法的義務を設定している。本規制はESGファンドの投資条件を規定し、開示に対して分類ごとのアプローチを採用している。 本規制がスタートすれば、環境や社会に配慮したファンドの運用に熱心な資産運用会社に大きな影響を与えるであろう。