【QUICK Money World 辰巳 華世】株式投資をしていると、「押し目買い・戻り売り」という言葉を聞くことがあると思います。日頃の生活ではあまり聞き慣れないちょっと変わった表現ですよね。今回はそんな株式売買の「押し目買い」「戻り売り」について説明します。
押し目買い・戻り売りとは
「押し目買い(おしめがい)」や「戻り売り(もどりうり)」とは、チャートの流れに沿ってする売買のことです。この言葉は、株式だけでなく、債券相場や外国為替証拠金取引(FX)や商品相場などでも使われます。今回は、株式相場での「押し目買い」や「戻り売り」に注目して説明します。
相場用語には日常生活ではあまり聞かない独特な表現があると思います。「押し目買い」もその一つです。相場用語で株価が下落することを「押す」と言います。「押し目買い」は株価が下落した「押し目」で「買い」を入れるのでそう呼ばれています。
ただ、「押し目買い」は、ただの株価下落を受けた買いではありません。押し目買いのポイントは、株価が上昇している局面で、一時的に株価が下落した時に買うことです。相場が上昇トレンドにあることが前提です。一般的に株価が一方的に上昇し続けることはありません。一時的に利益確定売りなどが出て相場が「押す」タイミングがあり、そこで買うことが「押し目買い」です。
次に「戻り売り」について説明します。「戻り売り」は、下げ相場の時に、一時的に高くなったのを見計らって売ることを指しています。
戻り売りは、下降トレンドであることが前提で、押し目買いとは逆になります。
相場が下げ続ける中、わずかな株価反転のタイミングで少しでも高く売ろうと売るのが「戻り売り」になります。相場の表現で「やれやれの売り」や「戻り待ちの売り」などがありますが、これも「戻り売り」と同じ意味になります。
押し目買い・戻り売りの方法
ここからは押し目買い・戻り売りの売買方法を見てみましょう。
押し目買いの売買方法
押し目買いは上昇トレンドの中、一時的に相場が下落したタイミングで買いを入れることです。
例えば、個別銘柄の業績が良かったり、良いニュースが発表されたりすると株価が上昇します。材料がとても良い内容であり、その株価が上昇トレンドに入った場合、株価は一定期間上昇し続ける傾向があります。
ただ、相場が上昇トレンドにあっても株価が一本調子でずっと右肩上がりで上がるわけではありません。相場は色々な思惑で動いており、利益確定売りなどで一時的に相場が下がるタイミングがあります。
相場が上昇トレンドにあると判断でき、そのタイミングで買いを入れると「押し目買い」になります。ただ、もし、再び相場が上昇するのか分からず、押し目買いのタイミングかどうか判断できない場合は、無理に買いを入れずに様子を見ることも大切になります。
押し目買いは、相場上昇の中、少しでも安い価格で買いを入れることで、その後も上昇する相場で利益を狙うことができます。
具体的な銘柄のチャートを見ながらイメージしてみましょう。下のチャートは2021年1月から12月のスノーピーク(7816)の日足チャートです。
スノーピークは2020年の新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに三密回避のアウトドア需要を背景に業績を大きく伸ばしました。2021年のスノーピーク株価は上昇トレンドでした。
業績拡大を後押しする背景があり大幅に増益が見込まれるなど株価をサポートする強い材料があっても、株価が一本調整で上昇し続けることはありません。このチャートを見ても分かる様にところどころで、株価が下がるポイントがあります。そこが「押し目買い」のポイントだったことが分かります。
戻り売りの売買方法
戻り売りは、株価が下降トレンドの中の一時的な相場の上昇で高値になったタイミングで売ることです。
株式相場には色々な手法で取引をしている人がいます。例えば、悪い材料が出て株価が下がり続けている時、信用取引で売りから入っている人はそろそろ利益を確定させようと買い戻しをすることがあります。その買いが他の買いを誘い、一時的に株価が上昇することがあります。
この先も相場下落が続くと思う投資家が、この一時的な株価上昇を利用して売ることが「戻り売り」です。下降トレンドの中で少しでも高く売ろうとする売買になります。
具体的な銘柄のチャートを見ながらイメージしてみましょう。下はニトリHD(9843)の2021年9月から2022年10月の日足チャートです。
ニトリHDは、新型コロナ禍の巣ごもり消費で家具や雑貨の販売を伸ばした2020年の反動で2021年は業績が苦戦しました。加えて、海外で家具を製造しドル建てで決済しているため急速に進む円安が業績に大きな影響を与えるとの見方から株価が下落傾向にあります。
円安の影響で業績が悪化する懸念があるなど悪材料から株価が下落傾向にありますが、チャートを見るとニトリHDの株価は一本調整でずっと下落しているわけではありません。ところどころ、株価が反転しているポイントがあり、そこが戻り売りのタイミングだったと言えます。
押し目買いと戻り売りの見極め方
ここでは、押し目買いと戻り売りの見極め方をいくつか紹介します。
トレンドを見極める
チャートにトレンドラインを引いて押し目買い・戻り売りを判断することができます。
トレンドラインとは相場の方向性を分析する際にチャートに引く線のことです。簡単に説明すると、下値支持線(サポートライン)と上値抵抗線(レジスタンスライン)の2本があります。それぞれ高値になっている点、安値になっている点同士を線で結ぶとトレンドラインが引けます。3点以上の点を結ぶと信頼度が増すと言われています。
押し目買いでは、現在の価格がサポートラインの延長線よりも上にあることが前提で、ラインまで落ちてきたら買いを入れます。トレンドラインを下に抜けたら上昇トレンド終了の可能性が高いので、損切りするという判断もできます。
一方、戻り売りはその反対の考え方になります。現在の価格がレジスタンスラインの延長線よりも下にある前提で、レジスタンスラインに近づいてきたら売りを出すのが、戻り売りの一つのポイントになります。もちろん相場が一時的に戻り高値を付けた直後の下げ始めたタイミングの戻り売りもありますが、この段階では、相場の下落トレンドが続くかどうかは不透明です。直近で戻り高値を付けており、相場トレンドが変わるタイミングである可能性はゼロではありません。場合によっては判断が早すぎたとなるケースもあり得ます。
移動平均線を見る
チャートにはサブチャートとして色々な情報があります。その一つが移動平均線です。上昇トレンドであれば移動平均線も同じ様に上昇し株価は移動平均線の上の位置にあります。一時的な利益確定などの売りで株価が下落してもこの移動平均線を割り込むことは少なく、再び上昇する可能性が高いです。なので、上昇トレンドで一時的に株価が下落していると判断した時は、移動平均線に近づいたら押し目買いをするのは一つの手です。
例えば、日足のチャートであれば25日移動平均線を参考に、週足のチャートであれば13週移動平均線を目安に押し目買いをすることが多いです。
押し目買いや戻り売りはチャートの流れに沿った売買ではありますが、そのタイミングはチャートだけでなく他の情報も加味して判断することが大切です。株価は様々な要因で動きます。世界情勢や経済環境、個別銘柄のニュース、為替や金利動向など総合的な情報を元に今のトレンドが続くのかどうか判断することもとても大切です。
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押し目買いと戻り売りの注意点
高値つかみによる含み損に注意
押し目買いでは、高値つかみにならない様に注意しなければなりません。相場を見誤ると、押し目買いのつもりが高値つかみになってしまいます。高値つかみとは、相場の高いタイミングで買ったあとに値下がりして損を出すことです。
押し目買いは相場が上昇トレンドであり、利益確定売りなどで一時的な株価下落のタイミングに買うことです。相場が上昇傾向にあることが前提です。株価が下落し、万が一相場がそのまま下落傾向に反転してしまうと、結果としてその買いは高値つかみになってしまいます。
押し目買いの定義は、相場上昇中の一時的な下げでの買いです。定義を良く理解しないと高値つかみによる含み損を抱えることになりますので注意しましょう。
トレンドが反転する可能性がある
相場はいろいろな思惑で動きます。トレンドラインや移動平均線など様々なチャートで分析をしても、突発的に大きなニュースなどで予測とは違う動きをすることもあり得ます。
ある程度こうなりそうだという自分の投資判断を持って売買をすることは大切ですが、予想外の展開になった場合には損失を拡大させないようにあらかじめ損切りをするラインなどを決めて取引をすることも必要です。
「だまし」が発生することもある
チャートの分析では時に「だまし」が発生することもあります。チャートの期間が短い足だと売買シグナル通りには動かない「だまし」が出ることもあります。株価は、様々な要因で動きます。チャートの分析だけでなく、経済環境や世界情勢、個別銘柄のニュースなど総合的に情報を見て投資判断をすることが重要です。
まとめ
押し目買いや戻り売りは、チャートの流れに沿ってする売買のことです。押し目買いは上昇トレンドであることが前提で、一時的な下げを利用した買いのことです。一方、戻り売りは、下落相場の中で、一時的な高値を利用した売りのことです。どちらも相場のトレンドを見極めて活用することが重要になります。
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