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日銀のイールドカーブ・コントロールとは? 経緯や影響を分かりやすく解説!

日銀

【QUICK Money World 片岡 奈美】ここもと改めて関心の高まっている「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)」。個人投資家の皆さんも、新聞やテレビでよく目にされていることと思います。日本銀行が推し進める大規模な金融緩和策の一環として2016年9月に導入されて以降、その効果についても弊害についても、機関投資家や市場関係者の間では多くが語られてきました。

とはいえ、多くの方にとっては少し遠い世界のお話だったのではないでしょうか。日銀が毎月、何兆円ものお金を投じて、日本国債のイールドカーブ(利回り曲線)をコントロール(操作)し、市中にお金をあふれさせる(金融緩和)策――といってもあまりピンとこないですよね。すでに知っているという方もそうではない方も、今一度、一緒に振り返ってみませんか?日銀のその金融政策が私たちの生活に与える(あるいは与えてきた)影響も含め、考えていきましょう。

そもそも「イールドカーブ」って何?

イールドカーブとは--。あまり耳なじみのない言葉ですが、債券の利回り(金利)と償還までの期間の関係を示すカーブのことです。満期を迎えるまでの期間の短い順に債券銘柄を左から並べ、その金利を線で結び、描きます。簡単に図にすると以下のようになります。

順イールドと逆イールド

お金を返す(償還)までの時間が長いほど、返せなくなるリスクなど不確実性も高まりますから、金利(利回り)が高くなるのが当たり前ですよね。ですので通常のイールドカーブは右肩あがりの「順イールド」という左図の状態になります。

なかなか返さない人に低い金利で貸して、早く返してくれる人により高い金利で貸すような人はいないでしょうから、「逆イールド」というのは通常はあり得ません。逆イールドが出現すると一般的には景気後退のサインなどと言われています。

もうひとつ、イールドカーブの「かたちの変化」を示す表現もご紹介しておきたいと思います。「スティープ化」「フラット化」です。長短金利の差が大きくなりカーブの傾きが急になることと、長短金利の差が小さくなり傾きが平たくなること、とイメージしていただくとよいかと思います。こちらも簡単に図にすると、以下のようになります。

スティープ化とフラット化

イールドカーブのかたちは、景気の先行きへの見方や金融政策への思惑などで変化することがあります。

ところで、皆さんは「日本国債はリスクフリー」などと聞かれたことはありませんか?国が発行する債券ですから、日本という国が破産でもしない限り、満期がくれば額面で償還されますし、利息もきちんと払ってくれます。貸したお金がきちんと返ってくるという安心感では、国債を上回るものは世の中にそう存在しないという意味が込められています。貸し倒れのリスクをほぼ心配する必要のないものが日本国債であり、その利回りは日本国内で資金が貸し借りされる際の金利の基準になっています。さまざまな日本国内の金利が「日本国債」の水準をベースに「どのくらいの信用力があるか(返してくれる確実性があるか)」などを加味して決まっています。

日銀が金融緩和策の一環として「コントロール=管理」してきたのは、「日本国債」の「イールドカーブ」です。イールドカーブ・コントロールを通じて国債の金利が幅広く引き下げられれば、私たち個人が借りるお金の金利も、企業活動のために企業が負う負債の金利も、貸出金利のベースになる部分が下がります。そうすればお金を借りて事業にも消費にも回しやすくなる、景気に好影響を与える――という循環が生まれるはず。さて、皆さんの生活実感としてはどうだったでしょうか?

 

日銀は、どうやってイールドカーブをコントロールしているの?

日銀はイールドカーブ・コントロール、いわゆる長短金利操作の方針として、23年1月現在、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とすると示しています。

イールドカーブ

短期の政策金利と、償還までの期間が10年程度と長い国債(長期国債)の「長期金利」の2点の誘導目標を定めることで、国債利回りが描く曲線(イールドカーブ)全体を操作しています。

具体的には、短期金利は金融機関が日銀に預けている預金(当座預金)の一部にマイナス0.1%の金利を付けることで調整しています。長期金利は市中に出回っている国債を買い入れることで調整します。

日本国債は国が発行する債券ですが、幅広い投資家が自由に売買できるものです。日銀が国債を買えば、対象となった銘柄の需給は引き締まってしまいます。需要が高まるほど債券価格は上昇し、利回りは低下する――つまり、国債を買い入れることで人為的に需給バランスをタイトにして誘導したい金利水準に押し下げられる、というわけです。

日銀が市中から国債を買い入れることを「国債買い入れオペ(公開市場操作)」といいます。オペを通じて日銀は2022年には111兆円強の国債を買い入れました。日銀はこのように金利の上限を抑えつつ、市中に大量の資金を供給し続けています。

そもそも、どうして「YCC」を始めたの?――政策の副作用への処方箋?

ここまで、イールドカーブ・コントロールの概要について説明をしてきましたが、「そもそも、なぜイールドカーブ・コントロールに日銀が取り組み始めたのか」ということを少し思い出しておきましょう。

日銀がイールドカーブ・コントロールを導入した16年9月の公表文をみると、こんな文言があります。「2%の『物価安定の目標』をできるだけ早期に実現するため」そして、マイナス金利政策や量的・質的金融緩和の枠組みを「強化する形で導入することを決定した」というものです。

イールドカーブ・コントロールが導入される少し前の16年1月には、日銀がマイナス金利政策の導入を決めました。銀行が日銀に預けているお金(日銀当座預金)の一部にマイナス0.1%の金利を適用するというものです。マイナス金利の世界では利子がつくどころか預け賃を支払わなければならなくなってしまいます。それなら日銀に預けず市場にお金を出そうと考える銀行が増えるかもしれない、そのお金が企業の設備投資や新規事業に回れば――と期待されたものの、金融市場の関係者はびっくり。効果以上に、まずは副作用が大きく出てしまいました。

マイナス金利政策の導入が発表されると、国債は急速に買われることになり、市中に出回る国債の金利は大幅に下がりました。短期金利のみならず、長期金利までもがマイナスになり、果ては償還までの期間が20年超の超長期国債の利回りですら0.1%を下回り、イールドカーブの形状は極端に「フラット化」してしまいました。これでは、日本国債を運用先にしていた生命保険会社や年金基金、銀行など多くの機関投資家は運用益をあげられず、困ってしまいます。

そこで、日銀はイールドカーブ・コントロールという策を導入することで、イールドカーブの形状を適正な「かたち」に調整していこうとしたのでした。この調整は、それまで進めてきた金融政策をより円滑に進めるための対処策。ですが、市場では副作用への処方箋の側面もあったと受け止めた市場参加者も多かったようです。日銀の金融政策は長らく「短期金利」を操作するもので、「長期金利」はマーケットの需給など様々な要件を背景に自然に決まるものでした。ですが、このイールドカーブ・コントロールを導入することで、より人為的に金利水準をコントロールしていくことになったのです。

 

YCCの“許容変動幅”変更は利上げなの?

2022年12月、日銀は金融政策決定会合でこのイールドカーブ・コントロールをめぐり、ゼロ%程度を誘導目標とする長期金利の“許容変動幅”を“プラスマイナス0.5%程度に拡大する”発表しました。従来はプラスマイナス0.25%程度としていましたから、一気に倍に広げることになります。日銀の黒田東彦総裁は記者会見で「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため」と説明しています。

長期金利の“許容変動幅”

変動許容幅の拡大をめぐっては「事実上の利上げではないか」「金融緩和がいよいよ出口に向かい始めた」などの観測が飛び交っています。ですが、日銀の黒田総裁は記者会見で「利上げではない」「イールドカーブ・コントロールをやめるとか、出口というようなものでは全くない」とも語っています。実際、日銀は買い入れる国債の量は増やすなど金融緩和の効果を強めるための策も同時に打ち出しています。

黒田総裁は修正にあたり、債券市場の機能不全もひとつの理由に挙げています。最近の債券市場では10年物国債の取引が成立しない日が増えてきていました。日銀が特定の年限の国債のみ利回りを抑え込むことで、イールドカーブが部分的に逆イールドになるなど、ゆがみも生じています。国債の金利は社債や貸し出しの際の金利の基準になるものですから、金融取引の基準になる長期金利の水準がわかりにくい状況が生まれてしまうのはまずい、というわけです。

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家計にどう響く?

長期金利の水準を気にしながら日々生活をする人は少ないでしょうから、自分たちからはかけ離れた遠い場所で、小難しい話を専門家たちがやっている――と感じがちです。しかし、様々な金融政策はじわりじわりと、私たちの暮らしそのものに響いてきます。今回のイールドカーブ・コントロールの見直しは、債券相場のみならず為替相場にも大きな影響を与えたことも、少し触れておきたいと思います。

今回、日銀がYCCの修正を発表した22年12月20日には外国為替市場で一気に対ドルでの円高が進みました。長期金利の許容変動幅が拡大し、日米金利差が縮小するとの観測が強まったことが背景です。同日の日中値幅は5円18銭にもなりました。これは英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた16年6月以来の大きさだったといいますから、為替市場の関係者に与えたインパクトの強さがよくわかります。

昨今は、日銀の金融政策が為替相場の円安傾向を助長しているのではないか、といった声も少なくありませんでした。海外中銀がインフレ抑制のために金融引き締めに動いても、日銀は緩和的な金融政策を続けてきたからです。金利が高い国ほどお金が集まりやすく、低い国からはお金が出ていきやすいため、世界的にみて低金利の日本の円を売って他の国の通貨を買うという動きが起きやすくなってしまうのです。そして、為替相場の変動は日々の生活にも少なからず影響を与えてしまいます。

総務省が発表している消費者物価指数(CPI)によれば、22年11月にはCPI(2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数が前年同月比で3.7%も上昇し、40年11カ月ぶりの伸びを記録しました。背景には原材料高もさることながら、円安による輸入コストの上昇も否めません。食料品やガス代、電気代といった生活に必要なものが軒並み値上がりしていますので、皆さんも痛感されている部分は多いのではないでしょうか。

もしも日銀が金融政策を変更し、金融緩和の手を緩めたら――。

毎月何兆円もの資金を投じ人為的に抑え込まれ続けてきた国内の金利は、反動で上昇しかねないとみられています。そして今回そうだったように、国内外の金利差が縮小すると捉えられれば、為替市場では一時的にしろ円高が進むかもしれません。中長期的には住宅ローンなど個人の借り入れへの影響のほか、物価も含めて生活にまつわる多くの場面で、良い影響も悪い影響も出てくる可能性もあります。日銀の金融政策は、遠い遠い世界の話ではなく、実はものすごく身近な話でもあるということも、この機会に見つめなおしてもよいのかもしれません。

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著者名

QUICK Money World 片岡 奈美


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