【日経QUICKニュース(NQN) 船田枝里、阿部美佳】楽天グループ(4755)は27日、個人投資家向けの2年物、2500億円の普通社債の発行条件を決めた。同社は2022年12月にS&Pグローバル・レーティングが長期発行体格付けを引き下げたばかりだが、申し込みは多かったようだ。世界的に金利の先引き不透明感は強いが、楽天グループのほかにも日産自動車(7201)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)などこのところリテール(個人向け)債の発行が相次いでいる。
楽天グループ債は、利率が仮条件として提示した2.0~4.0%の範囲の上限にやや近い3.3%で決まった。同社が昨年5月に発行条件を決めた総額1500億円の3年物リテール債は、利率が0.72%で、8カ月後の今回は利率が大きく上昇した。格付けは日本格付研究所(JCR)から「シングルA」を取得した。引受証券会社の店舗の担当者は「利率が高いので買いたいという投資家が多い」と話す。
今年に入り、個人向けの起債が増えつつある。アイ・エヌ情報センターによると2022年の個人向け社債の発行額は1兆9665億円と前の年の1兆2621億円から増えていた。年が明けるとさらに加速し、20日には日産が3年債1400億円、三菱UFJが総額2000億円の2本立て劣後債などの条件を決め、まだ1カ月たらずで発行総額はすでに6000億円(27日時点)に達した。
「金利環境の不透明感が続き、機関投資家向けの起債での資金調達が難しい状況だ」(ある証券会社の引き受け担当者)との声がある。発行する側である企業にとっては、高い利率での社債発行が迫られる。
一方、個人向けは状況が異なるようだ。マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔氏は「リテール債は償還まで持ちきる投資家が多い」と指摘。元本割れのリスクが低いため買いやすく「個人向けは発行体も出しやすい側面はあるだろう」という。
「楽天グループなど知名度の高いネームは買われやすい」(引き受け担当者)という。同社のモバイル事業では業績改善の遅れや設備投資の増加が注目されていた。今回調達する資金について、楽天グループの広報は「楽天モバイルの設備投資資金および運転資金などにあてる予定」と説明する。
日銀の政策修正などを背景に国内の金利環境は変化が大きくなってきた。こうしたなか「リテール債元年になるかもしれない」(ある市場関係者)との見方もあり、個人向けは増えていきそうだ。