【日経QUICKニュース(NQN)】日本経済新聞電子版は6日未明、4月8日に任期満了となる日銀の黒田東彦総裁(78)の後任人事について、政府が現副総裁の雨宮正佳氏(67)に就任を打診したことがわかったと報じた。日銀生え抜きの雨宮氏は金融政策を立案する企画部門を長く担当し、事務方トップである理事の異例の再任を経て2018年3月からは副総裁として黒田総裁を支えた。
雨宮氏は現行の日銀法が1998年に施行されて以降、課長、局長、理事、副総裁と様々なポストで金融政策の多くに関わってきた。古くから「日銀のエース」と呼ばれてきた。2001年には世界に先駆けた量的緩和の実施に携わり、白川方明・前総裁体制下の10年には長期国債などを大量購入する「包括的な金融緩和政策」の導入を主導。黒田氏の体制下では13年の異次元緩和や16年のマイナス金利、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の設計に尽力した。
<金融政策に関する雨宮氏の主な発言>
【22年7月28日=岩手県金融経済懇談会後の記者会見】
「(大規模緩和の)出口のあり方の具体的なものは尚早だけれども、そのやり方や方法について常に考えておくということが必要だろう」
【22年7月28日=岩手県金融経済懇談会でのあいさつ】
「金融緩和により経済活動をしっかりとサポートし、賃金上昇を伴う形で『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していく」
「先行きの賃金動向を巡って不確実性が高いことを踏まえると、手を緩めることなく、金融緩和を継続する必要がある」
【18年3月=衆院議院運営委員会、副総裁候補として所信表明、質疑応答】
「20年近くにわたり、デフレとの戦いの最前線に身を置いてきた」
「デフレを脱却できなかったことについては、これは学界でもいろいろな議論があり、まだこれだという結論が出ているわけではないとは思うが、日本銀行が法律上物価の安定に責務を持っているということを踏まえると、日本銀行にも責任はあった」
【17年1月=金融市場パネル40回記念コンファレンスでの講演】
「(YCCの)目的はあくまでデフレ脱却であり、物価安定目標の達成である。しかし、長期金利を直接の操作対象とする以上、財政運営と関係の深い領域が拡大することは事実。それだけに、財政ファイナンスあるいはマネタイゼーションではないかとか、財政運営との関係上、将来の出口が難しくなるのではないかといった懸念や批判が多く聞かれる。日本銀行としては、こうした声があることも念頭におき、金融政策運営の狙いや考え方を従来以上に丁寧に発信し、市場や国民の理解を得ていく必要がある」
「平時においては短期金利のみを操作して、長期金利の決定は価格発見機能を重視して金融市場に委ねるべき。しかし、何らかの危機時、あるいは日本のように長年続いたデフレからの脱却といった局面では、中央銀行が平時とは異なる政策を採用する」
<略歴>
雨宮 正佳氏(あまみや・まさよし)79年(昭54年)東大経卒、日銀へ。政策委員会室審議役、企画局長などを経て、10年に理事。大阪支店長、企画担当の理事の再任を経て18年3月から副総裁。東京都出身、67歳。