前回までの話を要約します。過去150年の米国株式市場のデータに基づけば、
- 「過去30年」の株価上昇率は異例に高く、その背景は「金利の異例な低下」によるものと推測される、
- 【示唆】金利は下限に達しており、「次の30年」において、株価は「それ以前の120年」の標準的な上昇率に回帰する、
となります。
重要な示唆は、
- 「次の30年」の株式市場が、「それ以前の120年」に回帰するならば、①資産運用は継続すべきだが、②インデックス投資はそう簡単ではない、
ということです。
また、「次の30年」において、「過去30年」が再現されない場合、資産運用全般も難しくなります。
「次の30年」が「過去30年」と異なるなら、株式と国債の分散も効果が落ちる
【次の図】は、過去150年の株式と国債の相関係数の推移を示したものです。そうすると、「株式と国債が逆相関だったのは(=相関係数がマイナス)、過去30年の話だった」ことがわかります。
「株式と国債を持っていれば、効率的な分散ポートフォリオが構築できる」という考えは、「過去30年」という自分が生きてきた時代の経験から「わかった気になっている」だけです。
ダリオの金言
レイ・ダリオは、人間の典型的な過ちは、サイクルを考えず、「最近の過去がずっと続くと勘違いすること」だと言います。
ダリオが重視するのは、「自分の人生では初めて起こるが、歴史を見ると何度も繰り返し起きていること」です。
たとえば、パンデミック(1918-1920年のスペイン風邪や2020年以降の新型コロナウイルス;20-21世紀の例、以下同じ)、債務拡大とゼロ金利政策(1933年と2008年)、金本位制からの離脱(1933年と1971年)、覇権国家と台頭国家の対立(1930-1945年の英米vs.日独、2018年以降の米中)、格差拡大と国内分断(大恐慌以降の1930年代、世界金融危機以降の2010年代以降)などが挙げられます。
「次の30年」は、「アクティブ・ファンド」と「アドバイス」が活きる時代
いずれにせよ、「次の30年」において、
- インデックス投資が長く低迷するかもしれない、
- 株式と国債の分散投資も効果に乏しいかもしれない、
という、過去のサイクルに基づいた仮説は、従来型の
- インデックス投資で十分、
- 資産運用は一人でできる
という、過去10年ほどの「定説」を覆す可能性があります。解決策は、
- アクティブ・ファンドへの分散投資を検討する、
- 資産運用のアドバイスを受ける、
といったことがその一部でしょう。
「ファイナンシャル・アドバイザーの仕事は消えてなくなる」といった言説を鵜呑みにする必要はありません。しかし、ファイナンシャル・アドバイザーは多くを知り、多くを語る必要があるでしょう。
2023年1月のレビュー
2023年1月は、米国を中心に「インフレの鈍化」や「利上げの早期打ち止め観測」が台頭して、実質金利は低下し、金融資産価格は全般に上昇しました。
筆者なりに拾った、おもな出来事は次のとおりです。
- フランス政府が、ウクライナに、仏製装輪装甲車の供与を決定。
- 米アマゾンと米セールスフォースがレイオフを発表。
- 中国人民銀行が、地方都市の住宅ローン金利について、政府設定の下限金利を下回る水準を適用できる措置の恒久化を決定。
- 中国の金融監督当局者が、巨大IT企業の金融業務について「基本的に是正が完了した」との見解を示した。
- 中国が、ゼロコロナ政策を終了。
- ブラジルで、ボルソナロ前大統領の支持者が議会と大統領府、最高裁判所を襲撃。
- 米ニューヨーク市で、7,000人超の看護師がストライキを決行。
- 中国政府は、中国に渡航する日本人と韓国人に対するビザの新規発給業務の取りやめを発表。
- 米ブラックロックが人員削減するとの報道。
- インドがオンライン会合「グローバルサウスの声サミット」を開催。
- バイデン大統領の自宅から、政府の機密文書が見つかり、特別検察官が調査に入る。
- 中国人民銀行が、大手不動産会社に対する財務指針「3つのレッドライン」を緩和。
- 米政府は、ウクライナに、歩兵戦闘車「ブラッドレー」50両の供与を発表。
- 英政府は、ウクライナに、主力戦車「チャレンジャー2」14両の供与を表明。
- ベトナムで、2人の副首相とグエン・スアン・フック国家主席が相次いで辞任し、共産党による粛清が広がっているとの報道。
- プーチン大統領が、ロシア軍の規模を150万人まで拡大することを決定。
- 米マイクロソフトと米グーグルが人員削減を発表。
- ブラジルとアルゼンチンが共通通貨の創設に向けて協議すると発表。米ドルへの依存を低減する狙い。
- ドイツ政府が、ウクライナに、主力戦車「レオパルト2」の供与を発表。ポーランドとカナダが追随。
- 米国政府が、ウクライナに、主力戦車「エイブラムス」の供与を発表。戦闘機「F16」の供与は否定。
- 2022年10-12月期のスマートフォンの世界出荷台数は前年同期比18.3%減。
- IMFが2023年の世界経済の成長率予測を0.2ポイント引き上げて2.9%に。
などが挙げられます。
フィデリティ投信ではマーケット情報の収集に役立つたくさんの情報を提供しています。くわしくは、こちらのリンクからご確認ください。
https://www.fidelity.co.jp/
- 当資料は、情報提供を目的としたものであり、ファンドの推奨(有価証券の勧誘)を目的としたものではありません。
- 当資料は、信頼できる情報をもとにフィデリティ投信が作成しておりますが、その正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。
- 当資料に記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。また、いずれも将来の傾向、数値、運用成果等を保証もしくは示唆するものではありません。
- 当資料にかかわる一切の権利は引用部分を除き作成者に属し、いかなる目的であれ当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。
QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済を情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは
今週のもーさての内容は私がここ1~2年思っていた事で大変興味をそそられました。1940~1980年は高金利、1980~2020年は低金利、次の2021年からは再び高金利の時代に突入したと思っています。先日のCPIコアの部分が0.3%に上がったのはまたインフレが再燃するのではないかと思います。重見さんの分析は今後の世界経済を考える上で大変貴重な内容はです。しかしメディアでなかなか言いにくいのではないかと御察ししております。またコメントを書かせて頂くかも判りませんが宜しくお願い致します。