【日経QUICKニュース(NQN) 小松めぐみ】国内の投資信託で、株価指数に連動したインデックス型の低コスト化に拍車がかかっている。2024年に始まる新しい少額投資非課税制度(新NISA)を呼び水に裾野拡大を狙って運用各社がしのぎを削っているためだ。わずかな差で争いは過熱しており、投資家はコスト比較に慎重さが求められる。
日興アセットマネジメントは26日、MSCIが算出する全世界株式指数(ACWI)に連動する投信「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の運用を始める。同社が10日付で関東財務局に提出した資料によると、投資家が負担する実質信託報酬は税込みで年0.05775%。他社が運用する同タイプの投信の実質信託報酬は0.1%以上がほとんどで破格の設定といえる。
信託報酬は資金の管理や運用のためにかかる費用で運用資産から差し引かれ、投資家にとっては低いにこしたことはない。インデックス型投信では、これまでも信託報酬の引き下げや新たな低コスト投信の設定があった。さらに24年の新NISAを見据えて「シェア獲得に向けた動きが活発になっている」(ニッセイ基礎研究所の前山裕亮主任研究員)。
実際、アセットマネジメントOneは7日からインデックス投信シリーズ「たわらノーロード」の一部で信託報酬を引き下げた。三菱UFJ国際投信も「eMAXIS Slim」シリーズの一部投信で、アセマネOneに追随して信託報酬を5月11日から引き下げる予定だ。
三菱UFJ国際ではACWIに連動する「eMAXIS Slim 全世界株式」の実質信託報酬は、5月11日から税込みで年0.11325%(3月29日時点の推定)となる見通しだ。日興アセットの新ファンドを大きく上回る水準だが、同社は新たに「信託報酬を引き下げる方針はない」と説明する。
業界最低水準の運用コストを目指すと公言する三菱UFJ国際が追随しないのにはわけがある。というのも日興アセットの「Tracers 全世界株式」は信託報酬のほか、年0.1%を上限に「その他の手数料等」がかかる。この手数料には目論見書の作成費用や連動を目指す株価指数の使用料などが含まれ、三菱UFJ国際はこれらの費用を信託報酬として反映しているものもあり総合的なコストで判断した。
信託報酬に加え、運用や管理にかかった費用の合計が純資産残高に占める比率を示す「総経費率」は実際の運用状況を記した運用報告書で確認できる。24年4月からは投信の購入前に投資家に交付する目論見書にも総経費率の参考データの記載が求められる。コストで投信を選ぶ際は、見た目費用に惑わされないよう注意が必要だ。