「米国は大きい」。面積は日本の約26倍で、ロシアとカナダに次いで世界3位。ステーキからコーヒーのサイズまで日本と比べ巨大だが、スナック菓子は日本並みに小さくなった。「ミニ」や「バイツ(一口サイズ)」商品が目立って増えた。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、食品メーカーが新しさを追求してミニサイズのスナック菓子を相次いで発売したと報じた。ペプシコ傘下フリトレーの「ドリトス」やゼネラル・ミルズのシリアルなど、小型化が新たな関心を呼び起こすと期待されているとしている。「パンくずを食べているよう」との声もあり一部は行き過ぎだと伝えた。
都市の居住スペースも小さくなった。米連邦住宅金融庁(FHFA)がまとめた1月の全米住宅価格指数の伸び率は2020年5月以来の低水準。22年3月から連続でのプラス幅が縮んだ。価格の伸びが鈍化したものの家賃は依然高いため、主要都市で「マイクロ・アパートメント」が相次いで建てられた。ニューヨーク・ポスト紙は、80平方フィート(約7.4平方メートル)のアパートに住むカップルの生活を詳しく報じた。マンハッタン中心部のアパートで、家賃は月1750ドル(約23万5000円)と決して安くない。ニューヨークやロサンゼルスなどで「大きい家に住む」というアメリカンドリームのハードルはかつてないほど高くなった。
米国経済全体も縮小する兆候がある。2カ月前はウォール街で「ノーランディング(無着陸)」がささやかれた。米連邦準備理事会(FRB)が高い金利を維持する一方で、国内総生産(GDP)成長を維持するかもしれないと有力アナリストが指摘。「ソフトランディング(軟着陸)」でも「ハードランディング(急激な景気悪化)」でもない第3のシナリオと呼ばれた。4月に入り弱い経済指標が相次いで発表され、「ノーランディング」を予想する市場関係者はいなくなった。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米経済の年内の緩やかなリセッション(景気後退)入りを想定。銀行セクターの混乱の経済活動に対する影響に不確実性があるとの表現が議事要旨の随所に記された。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、銀行危機をめぐるパニックは収束したものの、信用収縮による影響がクリアになるのは何カ月も先だと解説。銀行の混乱はまだ終わっていないと伝えた。
米投資助言会社ロングビューのウォルティング最高経営責任者(CEO)は、CNBCのインタビューで、「景気後退が近いと確信する」とコメントした。米コンファレンス・ボードの3月の景気先行指数が2020年11月以来の水準に低下したと指摘。米長短金利が逆転する逆イールドの発生は2022年3月、約1年後に景気後退する例が多く「時間の問題」と語った。米議会専門紙ザ・ヒルは、景気後退は米国の幅広い地域で既に感じられると報じた。モーニング・コンサルタントの3月調査で「景気後退」がほぼ半数を占めたとしている。
JPモルガン・チェースのダイモンCEOは今月6日、CNNのインタビューで、銀行危機により米国が景気後退入りする確率が高まったと述べた。ゴールマン・サックスのエコノミストは先月、米経済が1年以内に景気後退に陥る確率を当初の25%から35%に引き上げた。CNBCによると、バンク・オブ・アメリカのモイニハンCEOは、決算発表説明会で「全てが緩やかなリセッションに向かうことを示している」と述べた。バンク・オブ・アメリカは次の四半期の米GDPが年率換算でマイナス0.5~1%になると予想した。
ロサンゼルスのガソリン価格はここにきて小幅上昇。食品価格は高止まり。家賃が下がる兆しはまだない。クリーブランド地区連銀の「インフレーション・ナウキャスティング」は、4月の消費者物価指数(CPI)が3月から伸びが小幅加速する可能性を示唆。シーキング・アルファによると、ウェルズ・ファーゴは、市場予想に反してFRBは年内に利下げしないと予想、年後半に米経済はリセッション入りすると警告した。
スナック菓子の小型化は企業戦略によるものだが、高インフレが続けば容量減による事実上の値上げの可能性もありそう。景気後退入りしても家賃が新型コロナウイルス流行前の水準に戻る可能性は低いとみられ、居住スペースはさらに狭くなるかもしれない。米国はさらに縮みそうだ。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。