米国で連邦債務の上限問題が正念場を迎えている。与野党が上限引き上げの合意に至らなければ、米政府は6月にも資金繰りに窮する可能性がある。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した5月の月次調査<外為>で、上限引き上げで合意できなかった場合の金融市場への影響を聞いたところ、米ドル・米国株・米国債の「トリプル安」に陥るとの見方が多かった。
ドルは回答者のうち79%、米国株は88%が「下落」を予想した。米国債は「上昇(利回りは低下)」も30%あったが、下落予想が58%と過半数を占めた。
米債務問題が緊迫した2011年には、米国債は格下げにもかかわらず資金の逃避先として買われた。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は、当時との違いについて「欧州の債務リスクが高まっていない」と指摘。今回は米国の方が「相対的に安全」という考えが生じにくく「債務不履行(デフォルト)懸念などの高まりで、教科書通り債券安となる」(神田氏)とみる。
債務問題の行方については、「短期間の暫定引き上げなどで問題決着を先送りする」との予想が64%を占めた。市場参加者の多くが問題長期化を見込む。
米銀の破綻に伴う金融不安の高まりも気がかりだ。不安が収束しない場合の為替相場への影響を聞いたところ、主要3通貨の強弱の予想は「円>ユーロ>ドル」が37%と最も多く、「円>ドル>ユーロ」が28%で続いた。危機時の「リスク回避の円買い」の見方は根強い。金融不安の先行きは「米地銀の連鎖破綻が今後も続く」が55%、「新たな銀行破綻は起きず収束に向かう」が43%となった。
日銀総裁就任から約1カ月たった植田和男氏への評価も聞いた。100点満点で平均74点と、ひとまず高評価を得ている。評価の理由は「丁寧なコミュニケーションを取ろうとする姿勢が伝わる」など、市場との対話姿勢を挙げる声が目立った。3月の調査では、黒田東彦前総裁の約10年間の政策運営は平均59点と評価されていた。
調査は5月15~17日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者81人が回答した。
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