【日経QUICKニュース(NQN) 佐藤梨紗】24日の東京外国為替市場で、ニュージーランド(NZ)ドルが急落した。NZ準備銀行(中央銀行)は同日、市場の予想通り0.25%の利上げを発表したものの、市場ではインフレのピークアウトや労働需給の緩み、内需の弱さから利上げ局面は終わりを迎えたと受け止められた。中銀は、2024年に利下げに転じる可能性も示唆。対米ドルで堅調さを保っていたNZドルは今後、一転して売りが加速する可能性がある。
NZドルは24日午後に一段安となり、対米ドルで一時1NZドル=0.61米ドル台半ばと前日17時時点と比べて0.01米ドル程度のNZドル安・米ドル高水準をつけた。今回で利上げ打ち止めの可能性が意識され、NZ国債の利回りが低下。NZドル売りに拍車がかかった。
NZ中銀は24日、政策金利を0.25%引き上げ5.50%にすると発表した。12会合連続の利上げとなるが、利上げ幅は前回4月会合までの0.5%から縮小した。同日発表した金融政策報告書では、政策金利の最終到達点(ターミナルレート)を5.5%とし、2024年9月には利下げに転じるとの見通しを示した。この見通しを踏まえると、現時点で中銀は利上げが今回で終了と考えている様子が透ける。
背景には、インフレのピークアウトや労働需給の緩みなどがある。4月に発表された1~3月期の消費者物価指数(CPI)は、前年同期比6.7%上昇と22年10~12月期(7.2%)から鈍化した。24日の声明では、インフレ率は依然として高いとしつつも「2月に予想した水準より低かった」との見方を示した。労働力の不足感は薄れ「サプライチェーン(供給網)のボトルネック(目詰まり)が緩和されつつある」とも言及した。
「高金利と住宅価格の下落、生活コストの上昇が需要を鈍化させている」とも指摘した。金利上昇により家計では住宅ローンの負担が増している。持ち家の価格下落で支出も抑えられ、消費の鈍化につながったと説明した。企業活動を制約する主因は、いまや「労働力不足というより、需要の不足だ」との見解も示した。
NZ中銀は4月会合で市場参加者の予想に反して0.50%の利上げに踏み切っていただけに、市場では今回も0.50%の利上げを決めるとの警戒が残っていた。インフレを引き起こす財政拡張政策から追加利上げの必要性が増したとみられていたためだ。NZ政府が18日公表した23~24年度予算案では前回(22年12月)時点の見通しから赤字幅が拡大しており、大幅な追加利上げへの思惑につながっていた。
翌日物金利スワップ(OIS)市場では、24日の政策金利発表前は「23年秋にかけて0.66%程度の利上げが見込まれていた」(国内銀行の為替担当者)という。1回あたりの利上げ幅が0.25%と仮定すると、あと2回程度の利上げが予想されていた計算になる。
次回7月会合以降に再利上げに踏み切る可能性も、高くはなさそうだ。SMBC日興証券の前田佑太氏は「予算案などでインフレがよほど上振れしない限りは(再利上げは)考えにくい」とみる。
NZドルは23年初めから対米ドルで1NZドル=0.60米ドル台を中心に堅調に推移してきた。だが、金融引き締めの局面は終焉(しゅうえん)を迎えたとの見方から今後、NZドル買いの持ち高を巻き戻す動きが加速しそうだ。