メディア関係者から日経平均の最高値(終値ベース)は「さばくいこう38915」と覚えると教わった。なるほど33年(3分の1世紀)以上も砂漠でもがいたままということか。
日本株は今年に入って上げ足を速め世界で最も値上がりした市場となっている。日経平均は6月2日にバブル後の最高値3万1524円に達した。5日に発表された6月のQUICK月次調査<株式>で、株価上昇の理由を複数選択で問うたところ、「東証のPBR改善要請」(52%)と「日銀新体制での金融緩和継続」(50%)がトップ2で、「バフェット効果」(40%)が続いた。「企業成長やイノベーションに対する期待」が1%、「アクティビストや運用会社の対話活発化への期待」も1%しかなかったのは、今回の上昇は一種のミニバブルいう認識なのかもしれない。
日経平均が過去最高値を超える時期も問うてみた。同じ質問は1995年1月にも行われている。その時は「2005年まで(2001~2005年)」が最頻回答だったが、「2029年」と「更新しない」との回答者が一人ずついた。今となっては、この二人以外は外れが確定したわけだ。当時の筆者にはこの回答はあまりに悲観的過ぎると思われ、酒の肴として笑いのネタにしていたものだ。もちろん、今では恥じており、この二人の慧眼を称賛したい。
約2万9000円だった2年前に行った同じ質問への回答と比較してみると、「年内」から「4年以内」までの回答比率はかなり似ている。特徴的なのは、「超えることはない」が、前回の5%(122人中6人)から16%(117人中19人)に増えたことだ。日本株の報道に接していると、今度こそ「砂漠からの帰還か」という明るさを感じるのだが(またしても)筆者の思慮不足か。
日本株が持続的に上昇するために必要な条件を複数選択で問うたところ、「企業の新陳代謝と業界再編の活発化」(49%)と「資本コストを重視した経営の広がり」(45%)が他の2倍以上の票を集め、「事業分野の選択と集中」(22%)が続いた。まさに企業価値向上に必要な王道的条件である。これらが実施できるなら「帰還はすぐ」だが、今まで同様に空回りなら「帰還は遠い夢」である。
意外だったのは「取締役会の多様化と活性化」が1%しかなかったことだ。女性役員1人以上という政府方針への評価を問うた結果も懐疑的な答えの方が多かった。金融庁や東証が何を規則化しても企業は粛々と形式的準拠を達成するだけで実質的効果を伴わなかったという過去10年の経験を想起しているのかもしれない。現在、金融庁や東証、運用会社の間では「形式から実質へ」の機運が高まっている。それに期待したい。
【ペンネーム:浪小僧】
調査は5月30日~6月1日に実施し、株式市場関係者120人が回答した。
QUICK月次調査は、株式・債券・外国為替の各市場参加者を対象としたアンケート調査です。1994年の株式調査の開始以来、30年近くにわたって毎月調査を実施しています。ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。>>QUICKコーポレートサイトへ