【日経QUICKニュース(NQN)三好理穂】オーストラリア準備銀行(豪中央銀行)は4日の理事会で、政策金利を年4.10%で据え置くと決めた。10会合連続で利上げ後の4月は見送り、5、6月に再開した利上げを再び見送った。豪中銀は声明文では、インフレ抑制へ積極的なタカ派姿勢を維持した。今回も4月と同じく利上げは「一時停止」との見方が多く、外国為替市場では少なくとも対円の豪ドル相場を下支えしそうだ。
■豪中銀はタカ派姿勢を維持
豪中銀の今回の決定を巡り、金融情報会社リフィニティブによれば日本時間4日朝時点で金融市場では金利据え置きが6割程度織り込まれていた。6月28日に発表の5月の豪消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.6%上昇と4月の6.8%上昇から鈍化していた。
豪ドルは対円では6月19日に1豪ドル=97円62銭近辺と2022年9月以来の高値をつけていた。その後、利上げ見送り観測で調整しており、きょうの中銀の決定を受けても豪ドル売り・円買いが一時的に増えた。もっとも6月29日の直近安値(95円18銭近辺)は割り込まず、底堅さをみせた。
豪中銀は4日公表の声明文で、金利据え置きについて「これまでの利上げの影響と経済見通しを見極めるための時間を提供するもの」と説明したうえで「インフレ率は依然として高すぎ、まだしばらくはこの状態が続くだろう」との見通しを示した。さらに「優先事項は、合理的な時間枠の中でインフレ率を目標に戻すことだ」とタカ派の姿勢を保った。
■利上げは「できてあと1回」の見方
第一生命経済研究所の西浜徹氏は豪経済について「7月からの最低賃金の引き上げでインフレ懸念は続き、不動産価格の上昇もあって、利上げ局面が終わったと判断できる状況にはない」と話す。一方で、9月で任期を終える豪中銀のロウ総裁の後任人事など不確定要素はあるものの「交易条件の大幅な悪化で国民所得の減少が目に見えており、利上げはできてあと1回」とも予想する。
SMBC日興証券の前田佑太氏も、8月の次回会合での利上げ後に年内は据え置きと予想する。豪ドル相場については「人民元との連動性は薄れている。中国の景気回復より(豪中銀の)金融政策がメインテーマになっている」と指摘する。5、6月のサプライズ利上げが市場参加者に与えた衝撃は大きかったようだ。
前田氏は「市場では4.35%へ(あと0.25%)の利上げは完全に織り込まれている」として豪ドルは対米ドルでは下落を見込んでいる。米連邦準備理事会(FRB)の利上げについては市場の織り込みが現段階では不十分で、今後利上げを織り込んで米ドルが上昇する余地が残っているとみているためだ。
■豪ドルは対米ドルに下落、対円では高止まりか
豪中銀の追加利上げの織り込み余地は乏しい。豪経済は米経済に比べインフレと低成長が併存する「スタグフレーション」への懸念も強い。このため、対米ドルでは豪ドル安が続く公算は大きい。一方で、日銀による早期の政策修正観測は後退し、対円では豪ドルが高止まりしそうで、対米ドルと対円で対照的な動きになりそうだ。