【日経QUICKニュース(NQN) 寺川秋花】国内長期金利が動意づいてきた。日銀による政策修正観測が市場の一部で再燃しつつあるためだ。次の金融政策決定会合は今月27、28日で、あと15日に迫る。長期金利の振れは大きくなりそうだ。
債券相場の変動率が高まりつつある。長期債先物の予想ボラティリティー(変動率)を示す「S&P/JPX日本国債VIX指数」は10日時点で4.83と4月25日以来、2カ月半ぶりの水準に上昇した。
長期金利の指標となる新発10年物国債は、11日は利回りが前日を0.015%下回る0.450%で取引されている。10日の米長期金利の低下(債券価格は上昇)が国内債相場を支えたが、国内長期金利は前週からは大きく切り上がった。10日には0.465%と4月28日以来の水準に上昇した。
4月28日は、日銀が植田和男総裁のもとで初めて開いた決定会合の結果発表日で、長期金利はその直前の水準以来の高さになった。日銀が長短金利操作(YCC)の枠組みで長期金利の上限としている「0.5%程度」に近づいている。
きっかけの1つは日銀の内田真一副総裁の発言だ。7日の日本経済新聞によるインタビューでYCCについて「金融緩和を継続するという観点から続けていく」とする一方、「金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、(緩和を継続する観点で)バランスをとって判断していきたい」と見直しの可能性に含みを持たせた。
金融市場では「YCCを続けたとしても、修正自体は否定していない」(国内銀行の債券担当者)との受け止めが広がる。日銀は昨年12月の会合で長期金利の許容変動幅を現行のように変更した。YCCの撤廃まではないとしても、変更の可能性への思惑は強まっている。
厚生労働省が今月発表した5月の毎月勤労統計調査では名目賃金が前年同月比2.5%上昇だった。10年物の固定利付債と物価連動債の利回り差から算出するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は10日時点で1.121%と2カ月前を0.274%上回る。市場参加者による予想インフレ率を示す数値で、国内の物価高の持続性が意識されている。
日銀は今月の決定会合で「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する。みずほ証券の鈴木優理恵マーケットアナリストは「展望リポートの公表もあるので、債券相場は物価関連の材料に反応しやすい」と話す。
国内長期金利が上昇していけば、少なくとも現行ではYCCを続ける日銀が国債買い入れオペ(公開市場操作)の増額などを通じて抑え込むだろう。ただ、今月の日銀会合が近づくにつれ長期金利が上限を意識しながら上昇していくとの想定は増えている。